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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「1.5度目標は不十分」 海面上昇抑制へ「1度程度に」 国際研究グループ

2025-05-24 16:02:52 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
「1.5度目標は不十分」 海面上昇抑制へ「1度程度に」 国際研究グループ
温暖化による海面上昇の加速を抑制するには、地球の平均気温の上昇を産業革命前の1・5度未満とするパリ協定の目標を達成するだけでは不十分であることがわかったと、英ダラム大学などの国際研究グループが環境学誌『コミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロメント』(20日付)に発表しました。1度程度に抑える必要があるとしています。


南極の氷床から流れ出す氷河を見る研究者たち(© Richard Jones)

研究グループは、過去の温暖期に起こった海面上昇や、大気中の二酸化炭素濃度が現在と同程度だったときの海面の高さ、温暖化のもとで現在進行しているグリーンランドと南極の氷床の融解に関して、これまで行われた研究結果を集めて解析しました。
その結果、過去の間氷期(12万5000年前ごろなど)には海面が現在より数メートル高かったこと、大気中の二酸化炭素濃度が現在と同じく400ppmを大きく超えていた約300万年前には海面が約10~20メートル高かつたことなどが示唆されました。
地球の平均気温が産業革命前より1・2度高い現在の温暖化の水準でも、グリーンランドと南極の氷床の融解が年間約3700億トンと1990年代以降の4倍に増え、海面上昇を加速していることもわかりました。
研究グループはこれらの結果をもとに、地球の平均気温が産業革命前より1・5度上昇すると、今後数世紀にわたって海面が数メートル上昇する可能性があると結論づけました。
現在、世界で約2億3000万人が標高1メートル以内のところに住んでいて、パリ協定の目標を達成するだけではこれらの人々が氷床融解による海面上昇の脅威にさらされると研究グループは指摘。地球の平均気温の上昇を、氷床が健全で産業革命前より1度高かった1990年代に戻す必要があるとしています。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年5月22日付掲載


研究グループはこれらの結果をもとに、地球の平均気温が産業革命前より1・5度上昇すると、今後数世紀にわたって海面が数メートル上昇する可能性があると結論づけました。
現在、世界で約2億3000万人が標高1メートル以内のところに住んでいて、パリ協定の目標を達成するだけではこれらの人々が氷床融解による海面上昇の脅威にさらされると研究グループは指摘。
パリ協定よりより野心的な目標が必要なんだね。
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気候危機打開 再エネ100%達成できる 南オーストラリアで見えた未来像

2025-05-18 20:24:55 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
気候危機打開 再エネ100%達成できる 南オーストラリアで見えた未来像
気候危機を肌身で感じることが増えました。打開の展望はあるのでしょうか?エネルギー問題に詳しい大島堅一さん(龍谷大学政策学部教授)に、オーストラリアを視察して実感したCO2削減の道筋について聞きました。(手島陽子)

龍谷大学政策学部教授 大島堅一さんに聞く



太陽光発電と風力発電をVRE(自然変動性電源)と呼びます。これらをどう増やすかが今の大きな焦点です。
かつては原発を主力電源と見なしていたIEA(国際エネルギー機関)でさえ、2024年版のロードマップでは、将来ほとんど再エネになる、VREだけで電力100%にしうるという見通しを持っています。
IEAはVREの各国の達成度を6段階で評価し、6段階目は太陽光と風力だけで電力100%です。南オーストラリア州とデンマークは5段階目に達しています。



家庭用畜電池などを備えることで、電力の需要と供給のバランスが調整しやすくなります(南オーストラリアで。大島さん提供)


南オーストラリアに設置された巨大蓄電施設(大島さん提供)

台風きっかけに
南オーストラリアの再エネの発展を実際に見てきて、これほどとは、と驚きました。
オーストラリアは化石燃料の資源が豊富で、かつて火力発電がほぼ100%でした。今は電力の再エネ100%は通過点であり、全エネルギーを再エネ100%にする未来像を描きます。「グリーンアイアン(再エネで作った鉄)を輸出したい」といっていました。
日本は今、3段階目。風力や太陽光が一定普及しており、既存の電力システムにも影響を与えつつある段階です。
3段階目に達した指標としては、電力需給量のグラフでダックカーブ(アヒルの形)が表れているかどうかです。家庭に太陽光パネルが普及すると、太陽光以外の電力で供給しなければならない電力の購入量が下がり、朝と夕方に増えるU字になります。南オーストラリアはVREだけで電力の74%に達しており、27年には100%を目指しています。
南オーストラリアが大きく変化したきっかけは、16年の台風で大規模停電に直面したことです。翌年に129メガワットのメガバッテリー(巨大蓄電施設)を設置。コンピューターが管理し、各家庭で作る電気を調整し、価格は秒単位で変動します。
VPP(バーチャルパワープラント=仮想発電所)といって、何万軒もの家庭や事業者が登録して、バーチャルな発電所として電気を供給する仕組みも普及しています。
日中は電気代がマイナスになり、夜使用した電気代と相殺して安くなります。多くの家庭が、太陽光発電と蓄電池の両方を持っており、災害の時は自家発電にできます。

環境破壊防ぐ策
日本の場合は、太陽光と風力を「不安定電源」と呼んでいる人が多く、再エネへのネガティブな情報が流布されています。たしかに、環境破壊につながるケースもあり、対策が必要です。その主要な原因は、政府が環境破壊を防ぐための規制を適切に行っていないことです。ヨーロッパでは、土地の利用が規制されるなど、環境破壊を防ぐ仕組みがあります。
廃棄物の問題も、日本は自動車廃棄物が圧倒的に多いですが、メディアで自動車の利用を批判する声はない一方、太陽光パネルは取り沙汰されます。太陽光パネルの再利用の仕組みを整えるべきですし、環境破壊を行う悪徳業者を取り締まるなど、政策誘導が重要なのです。
日本は欧米から比べると20年以上遅れています。40年に再エネを4~5割、50年に5~6割にするというのが目標ですが、EU各国が現在おおむね到達している比率です。第7次エネルギー基本計画でも、火力発電を残し、原発は増設しようとしており、世界とは逆方向に向かっていると言わざるを得ません。莫大な補助金をつけて原発を増やそうとしている。再エネの普及を妨げているのは原発の存在です。
世界の太陽光発電設備の伸びは、24年1年間で約452ギガワットです。アメリカで1年間に増えた発電設備のうち、98%が再エネ関連でした。太陽光が38ギガワット、100万キロワットの原発38基分増えています。中国に至っては、1年間で太陽光が278ギガワット増えています。
世界規模で、産業革命に匹敵する変化が起きようとしています。石炭と製鉄の第1次産業革命、石油の第2次産業革命を上回るスピードで、世界は再エネ100%に向かっているのです。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年5月13日付掲載


南オーストラリアの再エネの発展を実際に見てきて、これほどとは、と驚きました。
オーストラリアは化石燃料の資源が豊富で、かつて火力発電がほぼ100%でした。今は電力の再エネ100%は通過点であり、全エネルギーを再エネ100%にする未来像を描きます。「グリーンアイアン(再エネで作った鉄)を輸出したい」と。
日本は今、3段階目。風力や太陽光が一定普及しており、既存の電力システムにも影響を与えつつある段階。
南オーストラリアが大きく変化したきっかけは、16年の台風で大規模停電に直面したことです。翌年に129ギガワットのメガバッテリー(巨大蓄電施設)を設置。コンピューターが管理し、各家庭で作る電気を調整し、価格は秒単位で変動。
要は、政府がいかに舵を切るかにかかっている。
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資本主義の現在と未来 気候変動⑧ 生産手段の社会化を推進 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

2024-09-16 06:53:08 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
資本主義の現在と未来 気候変動⑧ 生産手段の社会化を推進 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

―気候危機のティッピングポイント(転換点)回避の取り組みは、社会にどのような変化をもたらしますか。
ティッピングポイントの回避には、これまでの持続不可能な生産のあり方を、持続可能なあり方に転換することが不可欠です。具体的には、エネルギー生産を化石燃料から再生可能エネルギー中心に、物的生産は完全循環型へ切り替えることです。

廃棄から循環へ
そのことによって、エネルギーは、企業だけでなく、市民や自治体、協同組合など「あらゆる主体」が所有する多様な再エネ発電所で生産されるようになります。従来の資本主義的な生産手段の所有形態を大きく変えることになります。私はこれを「生産手段の民主的社会化」と呼んでいます。気候危機防止の中核となる再エネ100%社会をつくる取り組みが、エネルギー生産手段の民主的社会化を必然的に推進することになるのです。
完全循環型社会の実現も物的生産のあり方を大きく変えます。従来は生産過程と消費過程が分断され、生産物は最終的に廃棄されました。完全循環型の社会では、生産物は使用後に再資源化して繰り返し使われ、それができない有機物原料はエネルギーや肥料に有効活用されます。廃棄が前提の消費過程は再資源化に向かう生産の「静脈過程」に変わり、市民を中心にあらゆる主体が生産の一翼を担うようになり、生産手段の民主的社会化が生じます。
その結果、生産のあり方は、利潤優先の資本主義的生産から、人間や社会の発展のための生産へと変わっていくことになります。




―デンマークでは生産手段の民主的社会化が進んでいるという話でした。(連載⑥)
デンマークは資本主義社会ですが、再エネを中心に生産手段の民主的社会化が進んだことで、かなり社会主義的な意味合いを持った社会になっています。
ギャラップ社の調査をもとにした24年の世界幸福度調査でデンマークは世界2位です。高い1人当たり国内総生産や充実した社会保障、少ない格差、高い個人の自由度や肯定的感情、少ない政治やビジネスの汚職などが要因です。

発展の扉を開く
デンマークは労働時間が短く、午後4時にはほとんどの人が帰宅の途につきます。労働時間は短いのに、国際経営開発研究所が発表している国際競争力ランキングでは23年1位、24年3位です(日本は24年38位)。
デンマークは教育費も医療費も全部無料です。18歳になって収入がなければ生活費が支給されますし、転職するときは研修の機会が与えられます。再エネ普及と同時に物的生産でも循環型化を早くから追求してきました。国民1人ひとりの力量を高める機会を保障し、循環型化で社会全体の無駄をなくしたことが国際競争力の高さにつながっています。
1980年代に原発を持たないと決め、96年には世界に先駆けて2030年までに二酸化炭素排出量を半減すると決め、11年には35年までに電力と熱、50年までに全エネルギーを再エネ100%にすると決定しています。こうした国家の重要方針は、常に国民的議論を経て民主的に決めているのも特徴です。
気候危機という人類が直面している最大の矛盾に市民が積極的に関わり、生産手段の民主的社会化を実現することは、社会発展の扉を開く大きな力になります。そのことは一部の人間に巨大な富が集中する構造を転換し、貧富の格差是正や労働時間の短縮、自由な時間の獲得にもつながるのです。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月12日付掲載


完全循環型の社会では、生産物は使用後に再資源化して繰り返し使われ、それができない有機物原料はエネルギーや肥料に有効活用。廃棄が前提の消費過程は再資源化に向かう生産の「静脈過程」に変わり、市民を中心にあらゆる主体が生産の一翼を担うようになり、生産手段の民主的社会化が生じます。
その結果、生産のあり方は、利潤優先の資本主義的生産から、人間や社会の発展のための生産へと変わっていく。
デンマークは労働時間が短く、午後4時にはほとんどの人が帰宅の途につきます。労働時間は短いのに、国際経営開発研究所が発表している国際競争力ランキングでは23年1位、24年3位。
気候危機という人類が直面している最大の矛盾に市民が積極的に関わり、生産手段の民主的社会化を実現することは、社会発展の扉を開く大きな力に。そのことは一部の人間に巨大な富が集中する構造を転換し、貧富の格差是正や労働時間の短縮、自由な時間の獲得にも。
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資本主義の現在と未来 気候変動⑦ 日本で再エネ100%は可能 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

2024-09-15 07:17:01 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
資本主義の現在と未来 気候変動⑦ 日本で再エネ100%は可能 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

―日本と同じものづくり国家、ドイツの再生可能エネルギーの所有形態はどうなっていますか。
世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有です。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有しています。
全国各地にエネルギー協同組合やエネルギー市民会社といった市民組織が900ほどあり、自治体の再エネ専門の部署と連携して再エネ普及に取り組んでいます。
デンマーク国境沿いの北海の干拓地につくられた、人口わずか170人ほどの小さな農村があります。1990年代初頭に有志が市民会社を設立して風力発電に取り組み、いまでは全村民参加で10万世帯分の電力を供給しています。以前は貧しい村でしたが、農業収入と同程度の売電収入で豊かになり、後継者難も解消しています。このように再エネで自立発展する地域が全国に数多くあります。




市民が取り組み
―ドイツやデンマークに比べ、日本では再工ネ普及が大きく遅れています。

日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富です。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展します。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2016年、再エネを倍増した場合の各国の国内総生産の伸びを試算し、日本は世界でトップクラスの伸び率だとしています。
実は日本は04年まで太陽光発電の導入量が世界トップで、その7~8割は住宅用でした。採算が取れないころでも市民が中心となって再エネ普及に取り組んできたのです。
1997年に私たち17人が20万円ずつ出し、4キロワットの小さな市民共同太陽光発電所を滋賀県石部町(現・湖南市)につくりました。同年末に京都市で第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が開かれ、地球温暖化に注目が集まったこともあり、取り組みがメディアで紹介されると、各地で市民が資金や労力を負担しながら共同発電所をつくり始めました。
2002年には第1回市民共同発電所全国フォーラムを滋賀県で開催。その後も各地で開催して、互いの実践から学び合い、共同発電所の普及とともに、固定価格買い取り制度(FIT)の創設などを求めました。民主党政権下の12年にFITが実現し、16年に市民共同発電所は全国で1000基以上になりました。その後、市民地域共同発電所全国フォーラムと改称して、昨年、通算11回目を京都で開催しました。

自治体にも動き
全国1112自治体が50年までの二酸化炭素排出実質ゼロを表明するなど、自治体にも注目すべき動きが出ています。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそうです。長野県飯田市は13年、地域資源を再エネとして利用することを市民の権利とする条例を策定。市が再エネ普及を積極的に支援し、400以上の市民共同発電所が誕生しています。
使用電力の再エネ100%化を目指す企業や団体も増えています。太陽光発電コストが大幅に下がったことで、自ら発電設備を持ち、電力自給した方が経済的になり、企業も、教育、医療、福祉などのあらゆる団体も再エネ100%を目指せる時代になっているのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月11日付掲載


世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有。
日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそう。
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資本主義の現在と未来 気候変動⑥ 市民・地域の主導でこそ 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

2024-09-14 08:20:45 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
資本主義の現在と未来 気候変動⑥ 市民・地域の主導でこそ 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

―日本では自然や地域に悪影響を与える一部の大規模太陽光発電所などが、再生可能エネルギーの印象を悪くしています。
問題を起こしているのは大企業や地域外の企業による利益優先の再エネ事業です。一方、市民や地域主導で再エネを普及してきたデンマークやドイツでは、再エネに世論の高い支持があります。
デンマークは世界で最も早く風力発電を導入した国ですが、けん引したのは市民と農民でした。1970年代の石油危機を受け政府が北海油田の開発に乗り出すなか、市民や農民は風車の伝統に着目し、風力発電に取り組みだします。
風力発電機の開発を農業機械メーカーのベスタス社に依頼し、小規模な風力発電から出発。ベスタス社は、いまでは世界トップの風力発電機メーカーです。さらに風力発電機所有者協会を78年に立ち上げ、風力発電の設置補助金や電力買い取り制度の創設を政府に働きかけ、実現していきます。



ミドルグルン風力発電所(同発電所ホームページから)

ドイツにも波及
こうした取り組みが隣国ドイツにも広がり、2000年には電力買い取り制度を発展させた、再エネを一定価格で一定期間買い取る固定価格買い取り制度が誕生します。
再エネ普及における市民と地域主導の重要性は、再エネの特性自体にあります。石炭や石油などの地下資源は有限かつ特定の場所に集中して存在します。日本など資源のない国は輸入に依存せざるを得ません。
一方、再エネはほぼ無限にあり、世界中どこにでも存在します。ただしエネルギー密度は低く少量ずつ分散して存在します。地域資源を活用する小規模分散型の生産手段だからこそ、市民や自治体などの地域主導の普及に適しているのです。
実は、デンマークでも風力発電で収益性が見込めるようになると企業が参入してきます。ところが地域住民の意見が反映されない企業主導の事業には、やはり住民から反対運動が起こるのです。所有者協会も企業主導の風力発電所建設は不適切だと主張し、その結果、風力発電所の設備容量の20%以上は地域住民所有を義務づける法律が08年に制定されます。
デンマークは電力の半分以上を風力発電で賄っていますが、現在でも陸上風力発電所の約4分の3は市民所有です。
洋上風力発電でも、首都コペンハーゲンの沖合に並ぶミドルグルン風力発電所の20基のうち10基は電力会社が、後の10基は沿岸住民8650人が出資し、所有しています。風力発電への出資は銀行の定期預金より有利なので、市民は出資を自分たちの権利だと考えています。

住民に利益還元
21年には、出資の有無に関係なく再エネ発電所から一定の距離内の全居住者に売電収入の一部を支給する仕組みができました。出資できない住民にも利益を還元する仕組みです。支給額は平均すると風力発電で年間13万円程度、太陽光発電で5万円程度になるとされています。

―再エネが低所得者のくらしを底上げする福祉的機能まで担っているのですね。
このように市民と地域主導の再エネ普及では、再エネを通じて地域に利益が還元され、社会や経済にも好影響が生まれてきます。エネルギーの自給率向上や化石燃料の輸入減少による社会負担の軽減にもつながります。国内総生産(GDP)でみても日本は1990年比で約1・3倍と横ばいですが、デンマークは約2・9倍に伸び、1人当たりGDPは日本の2倍以上です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月10日付掲載


問題を起こしているのは大企業や地域外の企業による利益優先の再エネ事業。一方、市民や地域主導で再エネを普及してきたデンマークやドイツでは、再エネに世論の高い支持が。
デンマークは世界で最も早く風力発電を導入した国ですが、けん引したのは市民と農民。
一方、再エネはほぼ無限にあり、世界中どこにでも存在します。ただしエネルギー密度は低く少量ずつ分散して存在します。地域資源を活用する小規模分散型の生産手段だからこそ、市民や自治体などの地域主導の普及に適している。
市民と地域主導の再エネ普及では、再エネを通じて地域に利益が還元され、社会や経済にも好影響が生まれます。
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