きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

守れ日本の鉄道網 赤字路線切り捨ての危機② 「鉄道は財産、文化の源」

2022-09-08 07:11:36 | 公共交通・安全について
守れ日本の鉄道網 赤字路線切り捨ての危機② 「鉄道は財産、文化の源」
1987年の国鉄分割民営化時に、採算のとれない 83路線が廃止・第三セクター移管となりました(45が廃止、38が第三セクターへ)。一方で、存続した路線について政府与党は、民営化された後も「事業の廃止は採算性そのものを判断基準にしない」(橋本龍太郎運輸相、86年10月13日、国鉄改革特別委員会の答弁)など、これ以上ローカル線は廃止しないと国民に約束したのです。
また、新幹線と都市路線の収益が見込まれるJR東、西、東海と違い、JR北海道、四国、九州については、「経営安定化基金」が設けられ、その運用益で赤字を補てんする想定でした。しかし、超低金利政策によって運用収益は激減しました。



一部を残し、橋桁が流失したJR肥薩線の球磨川第1橋りょう。2020年の豪雨で被災した同線は現在も八代-吉松間で不通のまま=熊本県八代市

路線5区間すべてバス
この間、全国では不採算路線の廃止が相次ぎました。2000年以降、JR私鉄を合わせると45線、1157・9キロが廃線となりました(国交省、今年2月3日現在)。
JR北海道・留萌線(深川-留萌間50・1キロ)の沿線4自治体は8月30日、JR側が提案した廃止・バス置き換えを受け入れることを決定しました。JR側が16年に打ち出した廃止路線5区間がすべてバスになります。
決定を受けて地元沼田町の横山茂町長は「この財産を残したかったというのが正直な気持ち。無念だ」と心情を吐露しました。
この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決まりました。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断されます。
11年の豪雨災害の被害を受けた只見線(JR東)は、この秋11年ぶりに運行再開となりますが、上下分離方式(復旧区間)の下部にあたるインフラ部分が地元自治体の負担となります。

リニアには巨額費やす
政府はこの間、大都市開発、リニア建設、新幹線建設などに巨額な予算を費やす一方、地方路線は切り捨て、震災・津波、台風・豪雨で被災した路線の廃止、BRT・バス転換を進めるなど、都市圏と地方の格差拡大を推進する政策を取り続けてきました。
切り捨て対象路線を抱える地方の自治体は、こうした国の姿勢に懸念を持ち続けています。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出しました。
赤字ローカル線の廃止・代替路線転換にむけ議論を進めるよう提言をまとめた「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」のヒアリングでは、地方代表から「鉄道事業者だけ、事業者と沿線自治体の間の問題でもない。国の交通政策の根幹として考えるべきだ」「鉄道をはじめとする公共交通は、文化の源であり自治の根幹」などの意見が出されました。
JR留萌線の廃止決定を受けて北海道新聞は1日付の社説でこう断じました。
「国や道は、5線区に対し存続にむけた協力を一切しなかった。JRへの財政支援の対象からも外れ、事実上、見放していたといえよう」
赤字ローカル線の問題は、人口減少やモータリゼーション等の理由にとどまらず、国鉄分割民営化と、都市・地方の格差拡大を進めたその後の政府の施策も原因の一端を担っています。開業150年を迎えた世界有数の鉄道サービスを維持するため、国はJRをはじめとする事業者や地方自治体に負担を丸投げする姿勢を改め、支援を含め深く関与することが不可欠です。(おわり。遠藤誠二が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月5日付掲載


この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決定。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断。
広大な北海道の大地で、鉄道線路が廃止されることは陸の孤島になるに等しい。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出。
住民の足を国が責任をもって守る。当然のことです。
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守れ日本の鉄道網 赤字路線切り捨ての危機① 「市場原理主義に陥るな」

2022-09-07 07:07:45 | 公共交通・安全について
守れ日本の鉄道網 赤字路線切り捨ての危機① 「市場原理主義に陥るな」
人口減少やモータリゼーションの進行、加えて新型コロナウイルスの感染拡大等を理由に、世界に誇る日本の鉄道の将来が危ぶまれています。JR各社(東海を除く)は今年に入り、輸送密度(1キロメートルあたりの1日の平均乗客数)2000人以下の赤字路線を相次いで公表。時を合わせるがごとく、国土交通省の有識者検討会は7月25日、輸送密度1000人未満の路線の廃止・代替輸送置き換えに向け、JRと地元自治体に協議を促す提言を発表しました。

廃止や転換促す内容に
学者・マスコミなど有識者からなる「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」(以下、検討会)の提言は、「国鉄改革時、JRは都市部路線や新幹線等の収益で不採算路線を含む鉄道ネットワークは維持できると考えられた」が、▽人口減やマイカー利用で利用客が大幅減▽減便・投資抑制等で利便が大きく低下し、さらなる利用者減▽新型コロナ禍後も利用者回復は見通せない―などとして「事業構造の変化が必要」と指摘しました。
その上で、「危機的な状況にある線区について事業者と沿線自治体は相互に協同し…必要な対策に取り組むことが急務」として、「沿線自治体(都道府県)が中心となって協議会を立ち上げる」ことが望ましいが、「それがうまく機能しない場合、国が特定線区再構築会議を設置」し、「輸送密度1000人未満、かつピーク時の1時間当たり輸送人員500人未満」の線区について協議し計画を策定、実施するとしています。
提言は、「守るものは鉄道そのものではなく、地域の足」「廃止ありき、存続ありきという前提を置かずに協議」と明記し、鉄道廃止やBRTやバスへの転換を促すような内容です。鉄道存続の場合でも、自治体が負担する経営の上下分離をうたっています。
提言を受け斉藤鉄夫国交相は「今の実情で何もしないと持続可能な公共交通が破綻するのは目に見えている」と語りました。

BRT バス・ラピツド・トランジット(バス高速輸送システム)。専用道・レーンに連節バスなどを走らせ、多くの乗客を高速で運ぶシステム。東日本大震災・津波で被害を受けたJR気仙沼線や同大船渡線の一部区間がBRTになっています。
上下分離方式 「鉄道の運行」と「線路など各インフラの管理」を分け、それぞれの事業体が運営する方式。



兵庫県の姫路-和田山間を結ぶ播但線のディーゼルカー。同車両が走る寺前-和田山間は輸送密度1000人以下の路線(遠藤誠二撮影)

東、西、北海道、四国、九州のJR各社は7月までに、輸送密度2000人未満の赤字路線を相次いで公表。「(これらの路線は)鉄道としての特性が発揮できない」「鉄道が最適な輸送モードでないと考えられる区間もある」(JR東日本執行役員、7月28日会見)など、議論を進める必要性を説きました。新幹線や都市部路線などの収益で全体の黒字を確保できるとしてきた東、西両社とも、コロナ禍による利用者減と赤字転落で、もう不採算路線はカバーできないとの姿勢が見て取れます。
検討会の提言=輸送密度1000人未満の路線を、JR各社の発表に照らし合わせると、全国で70線14区間、5500・3キロに及びます(ピーク時1時間当たり500人未満線は除く)。北海道は全体の60%、東、西はそれぞれ同26%、九州は30%、四国は24%にあたります。

地方からは懸念の声が
こうした動きに対し、地方からは懸念の声が出されています。
検討会第2回ヒアリング(3月3日)で、広島県の湯崎英彦知事は「(私は)何人も市場に勝つことはできないという原則を信じている」と前置きした上で注文をつけました。
「採算、収支、株主の視点を重視した“市場原理主義”のような発想に陥ることはあってはならない」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月4日付掲載


JR各社(東海を除く)は今年に入り、輸送密度(1キロメートルあたりの1日の平均乗客数)2000人以下の赤字路線を相次いで公表。時を合わせるがごとく、国土交通省の有識者検討会は7月25日、輸送密度1000人未満の路線の廃止・代替輸送置き換えに向け、JRと地元自治体に協議を促す提言を発表。
提言は、「守るものは鉄道そのものではなく、地域の足」「廃止ありき、存続ありきという前提を置かずに協議」と明記し、鉄道廃止やBRTやバスへの転換を促すような内容。鉄道存続の場合でも、自治体が負担する経営の上下分離をと。
広島県の湯崎英彦知事は「採算、収支、株主の視点を重視した“市場原理主義”のような発想に陥ることはあってはならない」と苦言。
まさに、市場原理では地方の鉄道路線は守れません。
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くま鉄の夏⑥ 力もらって

2022-08-22 07:10:26 | 公共交通・安全について
くま鉄の夏⑥ 力もらって

「プァーン」。夕闇迫る午後7時半、上りの最終列車が通り過ぎて行きました。(写真)
くま鉄の運行を担うのは約30人の社員たち。一人ひとりが多くの役割を果たします。



隈部恭平さん(33)は、熊本県あさぎり町の駅で列車の運用表作成や社員の勤務管理などをしていますが、運転士や駅員の業務もできます。水害では自宅が床上浸水しました。
昨年11月、部分復旧の試運転を担当した時、沿線から手を振る人々に力をもらいました。
「くま鉄が地域に必要とされていると感じてうれしかった。私もいろいろな業務を覚え、くま鉄をよりよい会社にしたい」(おわり)(写真・記事細川豊史)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月18日付掲載



くま鉄の運行を担うのは約30人の社員たち。一人ひとりが多くの役割を果たします。
列車の運区管理だけでなく、運転手も駅員も、一人が何役もこなす。
それでも、夜は午後7時半が最終列車。
錦川清流鉄道は午後10時まで走っています。

南桑駅にて_02
南桑駅にて_02 posted by (C)きんちゃん
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くま鉄の夏⑤ くまチャリ

2022-08-21 07:11:26 | 公共交通・安全について
くま鉄の夏⑤ くまチャリ

森のトンネルの中、レールの上を自転車が走ります(写真)。運休区間の鉄路を活用した「くまチャリ」。相良(さがら)村内から人吉市内まで、往復4キロほどのレールサイクリングです。今しかできません。
夫婦で訪れた熊本市の大塚泉さん(57)は、「いいですね!線路の上を列車のような感覚で走れるなんて」。



くま鉄の永江友二社長が、他社の廃線となった線路での先例を参考に、取り入れました。「100年続く歴史、田園の原風景を走る魅力を知ってほしい」と話します。
「くま鉄は、速達性、利便性、定時性、運行費用のすべてにおいて、地域にとってベストの公共交通。一日も早く全面復旧し、その役割を果たしたい」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月17日付掲載


森のトンネルの中、レールの上を自転車が走ります(写真)。運休区間の鉄路を活用した「くまチャリ」。相良(さがら)村内から人吉市内まで、往復4キロほどのレールサイクリングです。今しかできません。
自分で漕いで運転。自然の中を走る。なかなかできないことです。
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くま鉄の夏④ 息づく歴史

2022-08-20 07:42:40 | 公共交通・安全について
くま鉄の夏④ 息づく歴史

コンクリートブロックを積み上げた土台にかかる、年季の入った鉄橋を列車が渡ります。(写真)
多良木町の農業用水路にかかる百太郎橋梁。開業した当初に造られ、約100年にわたって鉄路を支えてきました。



同橋梁や、豪雨水害で流失した球磨(くま)川第4橋梁など、くま鉄には19の国指定有形文化財があります。湯前(ゆのまえ)駅舎のほか、三つの駅の待合所やプラットホームも含まれます。
これらの鉄道文化遺産には、100年の歴史が刻まれ、開業当初の姿をそのまま保っています。そのすべてが、今も現役で使われ、日々の運行を支えています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月16日付掲載


多良木町の農業用水路にかかる百太郎橋梁。開業した当初に造られ、約100年にわたって鉄路を支えてきました。
同橋梁や、豪雨水害で流失した球磨(くま)川第4橋梁など、くま鉄には19の国指定有形文化財。
100年も現役で使われるって、すごいですね。
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