きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

環境先進 ドイツの自治体(下) 各所に再生エネ設備

2024-05-14 07:12:24 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
環境先進 ドイツの自治体(下) 各所に再生エネ設備

ドイツで全原発が停止され1年が経過したのを機に、南西部の自治体フライブルクを訪ねました。1970年代に近郊の原発建設計画を住民運動の力で撤回させ、ドイツの反原発運動の先駆けとなりました。その後も環境に優しい街づくりを進めています。

自転車多く利用
人口23万人超のフライブルクは公共交通機関を中心とした都市設計、リサイクルなどの資源循環にいち早く取り組み、ドイツの「環境首都」に認定されています。2035年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロの実現を目指しています。
中世の街並みを残しながら、市街地の内外でさまざまな再生可能エネルギーの設備がみられます。新市庁舎は外壁が太陽光パネルの現代建築として注目され、風力・水力発電装置が各地で回っています。住宅にも太陽光パネルや断熱改修が施されていました。日本の稚内より高緯度ですが年間1800時間の日照時間に恵まれており、市が積極的に推進しています。
公共交通が発達し、市内の移動はおおむね路面電車やバスで完結することができます。また多くの人が自転車を利用していました。
フライブルク在住で環境分野の通訳・ライターの熊崎実佳さんに案内してもらいながら、電気自動車(EV)も環境にいいのではと尋ねると、こう答えてくれました。



フライブルクで学生とエコな暮らしを考えるシュバンダー理事


フライブルクを走る路面電車

環境教育に力を
「1人や2人の移動のために1トン以上の鉄の塊を動かさないといけない。アップデートされたと買い直したり、気候危機を新たなビジネスチャンスにしたりする動きは本当にいいものでしょうか」
環境教育に力を入れるNPO法人「イノベーション・アカデミー」のハンスヨルク・シュバンダー理事は、フライブルクでは「政治家に任せきりにせず、持続可能な社会のために住民たちが学び行動を重ねている」と指摘します。
アカデミーは国内外からの視察を市と連携して受け入れつつ、学生を対象にエコな暮らし方や環境政策について授業をしています。公共空間の緑化や自転車での移動をより快適にする道路整備など、学生のアイデアを積極的に社会実験しています。
シュバンダー氏は、子どもたちへの教育が未来の社会を左右するとして「フライブルクの取り組みはこれから。若い人の発想をいかしながら持続可能な社会を実現したい」と話しました。
(フライブルク〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月1日付掲載


人口23万人超のフライブルクは公共交通機関を中心とした都市設計、リサイクルなどの資源循環にいち早く取り組み、ドイツの「環境首都」に認定。2035年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロの実現を目指す。
住宅にも太陽光パネルや断熱改修が施されていました。日本の稚内より高緯度ですが年間1800時間の日照時間に恵まれており、市が積極的に推進。
環境教育に力を入れるNPO法人「イノベーション・アカデミー」のハンスヨルク・シュバンダー氏は、子どもたちへの教育が未来の社会を左右するとして「フライブルクの取り組みはこれから。若い人の発想をいかしながら持続可能な社会を実現したい」と。
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環境先進 ドイツの自治体(上) 利益追求しない共同体

2024-05-13 07:27:47 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
環境先進 ドイツの自治体(上) 利益追求しない共同体

ドイツで全原発停止から1年が経過したのを機に、原子力ではなく再生エネルギーの活用など環境分野で先進的なとりくみを進めて注目されている南西部の二つの自治体、ザンクトペーターとフライブルクを訪ねました。



ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州のザンクトペーターは、住民の消費電力と熱エネルギーの多くを自村の再生可能エネルギーでまかなう「バイオエネルギー村」と認定されています。標高500~1200メートルの里山の村で、環境保護と地域経済を両立させた自治体として知られています。
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置されています。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合です。住民たちの協同組合は、木質ペレットを燃料にして熱と電力を効率的に生産・供給するコージェネレーション設備を運営しています。熱エネルギーは温水として各家庭に運ばれ、給湯や室内暖房に使われます。



エネルギー協同組合のポーナート代表

地域住民の手に
協同組合のマルクス・ポーナート代表(55)は「石油や天然ガスなどの化石燃料に頼らず、環境に優しいエネルギーで暮らしたいと願う住民有志が立ち上がって今に至ります」と話します。
協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標としてきました。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。暮らしに不可欠なエネルギーを企業のようにもうけの手段にしてはいけないという思いがありました。
ザンクトペーターの主要産業は林業と農業。協同組合のエネルギー施設に隣接された倉庫には、燃料となる木材が地域の農家らから運びこまれています。ボーナートさんは「村の資源を使えばエネルギーをつくる費用も抑えられるし、提供する人の利益にもなっている」と話します。
エネルギー設備は協同組合および組合員の所有。協同組合からエネルギーを受けるための接続費用は1世帯あたり2500~5000ユーロ(42万7000~85万4000円)です。
協同組合は欧州連合や州政府からの助成金も受け、設備のローン返済と投資に充てています。自然エネルギーによる循環型社会を推進するには、公的支援の充実も不可欠だとポーナートさんは強調します。



ザンクトペーターの市民協同組合のエネルギー施設

村に新たな価値
ロシア産化石燃料輸入への依存が高まっていたドイツでは22年のロシアのウクライナ侵略を機に始まった対ロシア制裁によって、一般家庭の光熱費が高騰しました。
しかしザンクトペーターでは、組合に加入する世帯の光熱費を比較的低く抑えることができ、エネルギーを自給自足できていることへの満足度も高いといいます。協同組合が作られて以来、住民同士の連携も強くなり、村自体に新たな価値がついたとボーナートさんは語ります。
「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」
(ザンクトペーター〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載


ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合。協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。
協同組合のマルクス・ポーナート代表は、「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」と。
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原発は強い地震来ない

2023-12-13 07:17:24 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
原発は強い地震来ない
『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』
樋口英明 著
ひぐち・ひであき=1952年生まれ。元裁判官。『私が原発を止めた理由』

著者は元裁判官であり、2014年5月、福井地裁の裁判長として、関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡した。15年4月にも、関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差し止めの仮処分決定を出している。原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた人である。
本書のメッセージはタイトルに凝縮されている。少し言葉を補うと「南海トラフ巨大地震がきても原発は大丈夫と言う人たちがいるけれど、それって一般の市民感覚からするとおかしくないですか?」ということだ。



旬報社・1430円

一般に、原発差し止め裁判の争点は「強い地震がきても原発は耐えられるか否か」だと思われているだろう。しかし著者は、そうではないと言う。これはよくある誤解で、実際には電力会社も強い地震に耐えられないことは認めているが、「原発の敷地に限っては強い地震はきませんから安心してください」と主張しているのだ。
現在の科学的知見で「この場所には一定水準以上の強い地震が絶対にこない」と断言できるのか、おそらく多くの人が疑問に思うはずだ。司法には細かな知識ではなく、こうした一般の市民感覚に沿ったリアリティーのある判断が求められるのだと著者は言う。そうすれば「原発を止めるべきだ」という結論にごく自然に到達するであろう。
著者は元裁判官として、東電福島第1原発事故被害者の集団訴訟で最高裁が22年6月に国の責任を否定したことを、「不公平で無責任」だと厳しく諫めている。また、岸田政権による原発回帰と安保政策の転換に対しても、強く批判する。
時宜にかなった警告の著である。現状を憂う多くの人に読んでほしい。

除本理史・大阪公立大学教授

「しんぶん赤旗」日曜版 2023年12月10日付掲載


本書のメッセージはタイトルに凝縮されている。少し言葉を補うと「南海トラフ巨大地震がきても原発は大丈夫と言う人たちがいるけれど、それって一般の市民感覚からするとおかしくないですか?」ということ。
実際には電力会社も強い地震に耐えられないことは認めているが、「原発の敷地に限っては強い地震はきませんから安心してください」と主張。
これって、科学的じゃないですね。
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福島県 飯館村 今とこれから② 汚染土の上に水田整備も

2023-11-24 07:08:38 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
福島県 飯館村 今とこれから② 汚染土の上に水田整備も


避難解除で福島県飯舘村に戻った伊藤延由(のぶよし)さんは東京電力福島第1原発事故当時、農業研修所「いいたてふぁーむ」の管理人として水田、畑を作っていました。
事故後、土壌や作物の放射性物質を測定し続けています。飯舘村で今月3日開かれたシンポジウムで、今年村でとれた天然のキノコ類にまだ高い値のセシウムが出ていることを報告。「放射線は測定しないとわからない」と話しました。
魚類の免疫学研究をしてきた東京大学名誉教授の鈴木譲さんが登壇。水生生物への放射線影響はこれまで十分な調査がなされていないといいます。池のコイや海洋での魚の調査では個体数が少なく放射線との関係は不明だとしつつも、汚染水(アルプス処理水)の海洋放出について、「海の生物への影響について、まともに議論すらされていない」と指摘します。



環境省が除染とともにおこなっている農地再生事業。除染で出た排出土でかさあげしているため、水田が見えない=福島県飯館村長泥

不安の声
シンポジウムを主催した飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA)共同世話人でNPO法人エコロジー・アーキスケープ理事長の糸長浩司さんは村の75%以上が森林に覆われ、宅地と農地は除染したものの、森林には放射性セシウムが残ったままで、住宅地の山に近い家屋裏の空間線量率は高いままだと指摘します。
さらに帰還困難区域の長泥地区では再生利用実証事業の名で村内の汚染土壌が水田の1メートル以上の深さに埋められ、その上に50センチの土が盛られ、野菜や花が試験栽培されていることを報告。将来、水田利用を想定して大型圃(ほ)場整備がされています。「法的根拠がないまま汚染土壌が利用されている」と糸長さんはいいます。
県内の木材を燃料として利活用するバイオマス発電事業についても説明しました。「飯舘みらい発電所」は東京電力も出資する「飯舘バイオマスパートナー」が事業を担うとされています。福島森林再生事業では、樹皮1キログラム当たり6400ベクレル以下は伐採し製材加工され市場化されています。「樹皮の入手が困難になり、より汚染された樹木や樹皮に頼る可能性もある」と糸長さん。「フィルターは100%除去できないという研究もあり、煙突から放射性セシウムを含む粉じんが飛散しかねない」と指摘しました。
質疑ではバイオマス発電について不安の声が相次ぎました。



来年の運転開始を目指しているとされる木質バイオマス発電所「飯舘みらい発電所」=福島県飯舘村蕨平(わらびだいら)

復興とは
主催団体IISORAの共同世話人で京都大学複合原子力科学研究所の今中哲二さんは原発事故直後と、現在の汚染状況を測定し、「山林などはほったらかしになっている」と強調。環境汚染を規制するもとになっている環境基本法にふれ「法にもとついた放射性物質の基準を設定すべき」だと訴えました。
写真家の豊田直巳さんは、事故直後から現地に入って写真を撮り続けています。「事故から12年。朽ちていく姿を見せまいと家も納屋も次々と消えている」といいます。「福島における復興とは何か。なかったことにされようとしている」と危機感をあらわにしました。(都光子)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年11月21日付掲載


飯館村の75%以上が森林に覆われ、宅地と農地は除染したものの、森林には放射性セシウムが残ったままで、住宅地の山に近い家屋裏の空間線量率は高いまま。
「飯舘みらい発電所」は東京電力も出資する「飯舘バイオマスパートナー」が事業を担うと。福島森林再生事業では、樹皮1キログラム当たり6400ベクレル以下は伐採し製材加工され市場化。「樹皮の入手が困難になり、より汚染された樹木や樹皮に頼る可能性もある」。
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福島県 飯館村 今とこれから① 80%未除染 8割の人戻らず

2023-11-23 11:19:46 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
福島県 飯館村 今とこれから① 80%未除染 8割の人戻らず

飯舘村(いいたてむら)
東京電力福島第1原発の北西にあり、2011年3月の原発事故後1カ月以上たってから全村避難し、現在も一部地域が帰還困難区域です。




2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、福島県飯舘村に、住民と研究者が放射能の影響を調査し、どう向き合えばいいのか議論を重ねている「飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA)」があります。
11月3日、4年半ぶりに開かれたシンポジウムで、現状が報告されました。



研究者と市民が同じデープルで話し合うIISORAのシンポジウム=13日、福島県飯舘村

二重生活
「村の80%は除染ができていない。そんななか、8割の人が戻っていない」と現状を話すのは、村で生まれ育った菅野哲(ひろし)さん(75)。「村が原発事故によってどうなったのか、きちんと総括することが大事」だと訴えました。「避難せざるを得なくなり、いま、村人たちの基本的人権が回復されているのだろうか」と問いかけます。
国と東電を相手に損害賠償請求訴訟の原告としてたたかっているなかで「今の生活のほうがいいのではないのか」などという言葉が東電側から出てくることに怒りをあらわにします。
村の森林を守り、60歳の区切りとして農業を再開したばかりでした。避難解除後、菅野さんは避難先と村の二重生活に。「美しい自然が壊され、あちこちに輝く田んぼが除染土とソーラーパネルにかわってしまった。家族が、村のコミュニティーが、ばらばらになってしまった」と訴えました。
伊丹沢地区の行政区長の山田登さんは帰還者の多くが高齢者で10年、20年後どうなっていくのかと先行き不透明な状況を話しました。サルが地域を席巻している問題、消防団の維持、空き家問題、除染後の住宅取り壊し…。それでも猿防除モデル地区に手をあげたり、パークゴルフで懇親会などに取り組んできたことを報告しました。



福島県飯舘村は75%が森林です

医療は…
村唯一の診療所「いいたてクリニック」の医師、本田徹さんは2年ほど前、村に移住。週2日の診療以外に、訪問診療に力を入れています。震災前は社会福祉協議会が独自にヘルパーステーションを運営していたそうですが「村でとくに不足しているのは在宅介護の人材」といいます。
国は避難指示地域などに住んでいた人を対象に減免している医療費等の支援を段階的に縮小し、一部地域を除いて2027年度までに終了するとしています。
福島県内の医療について兵庫医科大学の非常勤講師、振津かつみさんは「高齢者はますます介護や医療が必要になってくるのに、支援を切るのは影響が大きすぎる」と訴えます。「2021年の『黒い雨』被爆者訴訟の判決にあったとおり、被ばくを強いられた人すべてに国の責任で無料の健康診断や医療支援など、権利をともなう『健康手帳』を交付するなど、被爆者援護法に準じた法整備が必要」と訴えました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年11月20日付掲載


「村の80%は除染ができていない。そんななか、8割の人が戻っていない」と現状を話すのは、村で生まれ育った菅野哲(ひろし)さん(75)。「村が原発事故によってどうなったのか、きちんと総括することが大事」だと訴え。
避難解除後、菅野さんは避難先と村の二重生活に。「美しい自然が壊され、あちこちに輝く田んぼが除染土とソーラーパネルにかわってしまった。家族が、村のコミュニティーが、ばらばらになってしまった」と訴え。
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