再エネの力 長崎・五島市⑥ 自律発展の全国モデルに

浮体式洋上風力発電と電気の地産地消を進め、再生可能エネルギーで地域経済の発展をめざしている長崎県五島市の取り組みについて、日本環境学会元会長の和田武さんに聞きました。
日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

五島市で、地域新電力を立ち上げて再生可能エネルギーの地産地消を進めていることは素晴らしい取り組みです。
地産地消を基本に、地域間で融通して全体として再エネ100%を実現するのが社会の理想的なあり方だと思います。
再エネは地域の資源なので、地域が主体となって推進するのが望ましいのです。私はいろいろな国の再エネ普及の取り組みを調査してきましたが、デンマークやドイツといった再エネ先進国では小規模分散型で市民が主体となって進めているのが共通の特徴です。
日本では、地域外の企業などが大規模なメガソーラーを建設して森林を破壊し、各地で反対運動が起きています。
再エネ事業は大企業のほうがコストを抑えられてもうかりますので、利益優先の業者が環境を破壊してまで行うのです。企業に丸投げして無条件でやらせるべきではありません。
地域の参加大切
五島市のように、協議会に自治体や地域団体等が参加して計画や建設に関わることが大切です。特に、地域新電力を立ち上げたのはよかったですね。自治体などが電力事業を行えば、地産地消が可能になります。「地産」だけでは不十分です。
自分の地域で電力を供給できるようになると、それまでは大手電力会社から電気を買うことで外部へ流れ出ていた莫大(ばくだい)なお金が、地域の内部で回るようになります。新たな事業や雇用も生まれ、地域全体が自律的に発展していくことにつながります。
洋上風力発電が魚礁の役割を果たし、漁業の発展にもつながっていますね。農林漁業と再エネは共存共栄できるのです。地域が主体となって豊かになっていく、こうした取り組みは全国津々浦々でできますし、五島市はそのモデルになっていくことを期待します。
同市の協議会が行っている「出前講座」もいいですね。未来を担う世代が再エネへの理解を深めることで、地域への誇りと希望を持ち、よりよい地域づくりにつながります。
どこでもできる
日本は豊富で多様な再エネ資源を持っています。政府は地方創生を言いますが、その手段として最も有効なのがどこにでもある再エネです。諸外国には地域住民たちが再エネ発電を導入して豊かになったところが数多くあります。日本でも、過疎化している地域も含め、どこでもできるはずです。
五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。
電気自動車、燃料電池バスなどによる輸送のエネルギー転換も重要です。このように、余剰電力の有効活用の可能性はあります。ドイツではこういうことを国が支援しています。
日本では、発電量が電力消費を上回りそうな場合、原発の電力を優先供給し、火力発電も停止せず、太陽光や風力発電を止める出力抑制をしています。これは二酸化炭素(CO2)削減に逆行し、社会全体の経済的な利益にもなりません。他国では再エネ電力を優先供給しています。日本も原発優先から再エネ優先の政府に変えなければなりません。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月11日付掲載
五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。

浮体式洋上風力発電と電気の地産地消を進め、再生可能エネルギーで地域経済の発展をめざしている長崎県五島市の取り組みについて、日本環境学会元会長の和田武さんに聞きました。
日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

五島市で、地域新電力を立ち上げて再生可能エネルギーの地産地消を進めていることは素晴らしい取り組みです。
地産地消を基本に、地域間で融通して全体として再エネ100%を実現するのが社会の理想的なあり方だと思います。
再エネは地域の資源なので、地域が主体となって推進するのが望ましいのです。私はいろいろな国の再エネ普及の取り組みを調査してきましたが、デンマークやドイツといった再エネ先進国では小規模分散型で市民が主体となって進めているのが共通の特徴です。
日本では、地域外の企業などが大規模なメガソーラーを建設して森林を破壊し、各地で反対運動が起きています。
再エネ事業は大企業のほうがコストを抑えられてもうかりますので、利益優先の業者が環境を破壊してまで行うのです。企業に丸投げして無条件でやらせるべきではありません。
地域の参加大切
五島市のように、協議会に自治体や地域団体等が参加して計画や建設に関わることが大切です。特に、地域新電力を立ち上げたのはよかったですね。自治体などが電力事業を行えば、地産地消が可能になります。「地産」だけでは不十分です。
自分の地域で電力を供給できるようになると、それまでは大手電力会社から電気を買うことで外部へ流れ出ていた莫大(ばくだい)なお金が、地域の内部で回るようになります。新たな事業や雇用も生まれ、地域全体が自律的に発展していくことにつながります。
洋上風力発電が魚礁の役割を果たし、漁業の発展にもつながっていますね。農林漁業と再エネは共存共栄できるのです。地域が主体となって豊かになっていく、こうした取り組みは全国津々浦々でできますし、五島市はそのモデルになっていくことを期待します。
同市の協議会が行っている「出前講座」もいいですね。未来を担う世代が再エネへの理解を深めることで、地域への誇りと希望を持ち、よりよい地域づくりにつながります。
どこでもできる
日本は豊富で多様な再エネ資源を持っています。政府は地方創生を言いますが、その手段として最も有効なのがどこにでもある再エネです。諸外国には地域住民たちが再エネ発電を導入して豊かになったところが数多くあります。日本でも、過疎化している地域も含め、どこでもできるはずです。
五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。
電気自動車、燃料電池バスなどによる輸送のエネルギー転換も重要です。このように、余剰電力の有効活用の可能性はあります。ドイツではこういうことを国が支援しています。
日本では、発電量が電力消費を上回りそうな場合、原発の電力を優先供給し、火力発電も停止せず、太陽光や風力発電を止める出力抑制をしています。これは二酸化炭素(CO2)削減に逆行し、社会全体の経済的な利益にもなりません。他国では再エネ電力を優先供給しています。日本も原発優先から再エネ優先の政府に変えなければなりません。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月11日付掲載
五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。