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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

再エネの力 長崎・五島市⑥ 自律発展の全国モデルに

2025-06-11 15:51:05 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市⑥ 自律発展の全国モデルに

浮体式洋上風力発電と電気の地産地消を進め、再生可能エネルギーで地域経済の発展をめざしている長崎県五島市の取り組みについて、日本環境学会元会長の和田武さんに聞きました。

日本環境学会元会長 和田武さんに聞く




五島市で、地域新電力を立ち上げて再生可能エネルギーの地産地消を進めていることは素晴らしい取り組みです。
地産地消を基本に、地域間で融通して全体として再エネ100%を実現するのが社会の理想的なあり方だと思います。
再エネは地域の資源なので、地域が主体となって推進するのが望ましいのです。私はいろいろな国の再エネ普及の取り組みを調査してきましたが、デンマークやドイツといった再エネ先進国では小規模分散型で市民が主体となって進めているのが共通の特徴です。
日本では、地域外の企業などが大規模なメガソーラーを建設して森林を破壊し、各地で反対運動が起きています。
再エネ事業は大企業のほうがコストを抑えられてもうかりますので、利益優先の業者が環境を破壊してまで行うのです。企業に丸投げして無条件でやらせるべきではありません。

地域の参加大切
五島市のように、協議会に自治体や地域団体等が参加して計画や建設に関わることが大切です。特に、地域新電力を立ち上げたのはよかったですね。自治体などが電力事業を行えば、地産地消が可能になります。「地産」だけでは不十分です。
自分の地域で電力を供給できるようになると、それまでは大手電力会社から電気を買うことで外部へ流れ出ていた莫大(ばくだい)なお金が、地域の内部で回るようになります。新たな事業や雇用も生まれ、地域全体が自律的に発展していくことにつながります。
洋上風力発電が魚礁の役割を果たし、漁業の発展にもつながっていますね。農林漁業と再エネは共存共栄できるのです。地域が主体となって豊かになっていく、こうした取り組みは全国津々浦々でできますし、五島市はそのモデルになっていくことを期待します。
同市の協議会が行っている「出前講座」もいいですね。未来を担う世代が再エネへの理解を深めることで、地域への誇りと希望を持ち、よりよい地域づくりにつながります。

どこでもできる
日本は豊富で多様な再エネ資源を持っています。政府は地方創生を言いますが、その手段として最も有効なのがどこにでもある再エネです。諸外国には地域住民たちが再エネ発電を導入して豊かになったところが数多くあります。日本でも、過疎化している地域も含め、どこでもできるはずです。
五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。
電気自動車、燃料電池バスなどによる輸送のエネルギー転換も重要です。このように、余剰電力の有効活用の可能性はあります。ドイツではこういうことを国が支援しています。
日本では、発電量が電力消費を上回りそうな場合、原発の電力を優先供給し、火力発電も停止せず、太陽光や風力発電を止める出力抑制をしています。これは二酸化炭素(CO2)削減に逆行し、社会全体の経済的な利益にもなりません。他国では再エネ電力を優先供給しています。日本も原発優先から再エネ優先の政府に変えなければなりません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月11日付掲載


五島市が持つ大きな再エネのポテンシャルを生かすためには、送電線の増強など、政府のエネルギー政策を再エネ優先に変えなくてはいけません。同時に、地域でできることもあります。
電気は貯蔵が可能ですので、電気が余る時間帯で蓄電池や電気自動車などのバッテリーへの充電、さらには水を電気分解して水素を製造して、燃料電池で利用できます。

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再エネの力 長崎・五島市⑤ 太陽光 電気を無駄なく地産地消

2025-06-10 15:13:03 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市⑤ 太陽光 電気を無駄なく地産地消

洋上風力発電を地域の基幹産業と位置付ける長崎県五島市では、同時に太陽光発電の導入も進んでいます。現在、市内の太陽光発電所は600カ所弱、発電容量は53メガワット以上。市は、さらにその約50倍の2639メガワットの潜在能力があると見込んでいます。ところが近年、原子力発電を優先する九州電力による一方的な出力抑制(出力制御)が、太陽光発電事業者に深刻な打撃を与え、太陽光発電の普及にブレーキをかけています。


出力抑制で損害を受けていると訴える堀本榮一さん=長崎県五島市

収入が引かれる
「見てください。1カ所の発電所だけで売電収入が昨年1年間で37万2453円も引かれています。計画が狂っています」
太陽光発電による収入と支出の表を示しながらそう憤るのは、福江島の市街地で写真館を営む堀本榮一さんです。市内に出力50キロワットの太陽光発電所を3カ所所有しています。銀行に勧められて2014年に設置。6000万円の借入金を15年で完済し、その後撤云までの5年間で利益を得る予定ですが、出力抑制のせいで利益が3割ほど減ってしまう見込みです。
九州では以前から、電力の供給過多を理由に再エネ発電事業者からの電気の買い取りを九電が一方的に止める出力抑制が問題になってきました。10キロワット以上100キロワット未満の発電所は対象外でしたが、国がルールを変更したため22年12月から対象となりました。その結果、堀本さんの場合、3カ所の発電所の合計で年間100万円以上の売電収入が引かれることになったのです。
「年間でトントンか、赤字になってしまうほど。うちより大規模なところは損害がもっと大きく、発電所の売却を考えている人もいます。国にだまされたと言っていますよ」
堀本さんは民主商工会の会員です。長崎県商連は九電本店への要請も行いました。しかし、九電は国の「優先給電ルール」を盾に、出力抑制を改めようとしません。
「九電は原発の稼働を優先して莫大(ばくだい)な利益をあげながら再エネを出力抑制している。私が発電事業を始める時には出力抑制の対象になるなんて一言も言ってなかったのに勝手にルールを変えるなんてふざけている。政治を変えて再エネ優先のルールに変えなくては」(堀本さん)

地域で需給調整型
一方、同市では、電力の需給を調整して、再エネで生み出された電気を無駄なく地産地消する取り組みも始まっています。
同市のゼロカーボンシティ計画では、既存建物に自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池を導入し、発電した電力をできるだけ自家消費することを目指しています。30年までに太陽光と蓄電池を合わせて累計1460件を巨標としています。
現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。
こうした調整によって地産地消も実現し、五島で生み出された電気ができるだけ無駄なく使われることになり、ゼロカーボンの実現につながります。同市は、このような取り組みが評価され、昨年9月、環境省の第5回脱炭素先行地域に選定されました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月10日付掲載


現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。
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再エネの力 長崎・五島市④ 洋上風力 離島に住む価値ふやす

2025-06-08 17:52:28 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市④ 洋上風力 離島に住む価値ふやす

長崎県五島市は、2050年までにCO2排出をゼロにするゼロカーボンシティ計画を持っています。市の総務企画部未来創造課ゼロカーボンシティ推進班の川口祐樹主査は、五島を豊かな島にすることを夢見て、再生可能エネルギーの普及に努めています。
市は20年にゼロカーボンシティ宣言を行い、50年までのCO2排出実質ゼロの目標を掲げました。23年に、その実現のためのゼロカーボンシティ計画を策定しました。計画の期間は23~30年、CO2排出量を13年比で30年までに半減、50年までに実質ゼロにするというものです。



長崎県五島市の総務企画部未来創造課ゼロカーボンシティ推進班の川口祐樹主査

「オール五島」
川口主査は「五島には美しい海と風があります。浮体式洋上風力発電の適地として、漁業者と協力してこの海と風を有効利用して、再エネを進めていきたい」と話します。
30年の中間目標を達成するためには、年間7万6300トンのCO2排出削減が必要だと推計しています。洋上風力だけでなく、太陽光発電の産業、家庭などの各部門への導入の拡大などエネルギーの脱炭素化や、電気自動車の普及など運輸部門の燃料転換、省エネを進めます。
ゼロカーボンシティ計画を進める「オール五島」の体制が構築されています。23年、それまであった地球温暖化対策と再生可能エネルギー推進の二つの協議会を統合し、五島市ゼロカーボンシティ実現協議会が設立されました。同協議会は市、福江商工会議所、市内の三つの漁協、農協、商工会、町内会などの地域団体などが参加しています。
同計画では、30年までに市内の電力の90%を再エネでまかなう(現在は60%)ことを目指しています。川口主査は、ゼロカーボンシティを実現する上で、再エネへの転換は「一丁目一番地ですが、理解を得るのはハードルが高い」とも感じています。
「子や孫の時代のために温室効果ガスを出さない電気を使いましょう」と訴えると住民からは「安くなるとか?」といった声が返ってくることもあります。それでも地道に町内会の会合などに足を運び、訴え続けています。

理解広げる講座
若い世代に理解を広げる取り組みも行われています。同協議会は中学校、高校で授業の一環として、また保育園・認定こども園でも紙芝居などの形で、「出前講座」を行っています。地球温暖化や五島の再エネの取り組みについて学ぶ内容です。
講座を聞いた中学生からは「五島の再エネ率が高いことは全国にアピールできることだと思う」「家に帰ったら、電気代の請求書を見てどのくらいCO2を排出しているか確かめたい」といった感想が聞かれました。
市のゼロカーボンシティ計画は、五島が持つ巨大なポテンシャル(潜在力)をも明らかにしています。洋上風力発電は、現在建造中のものより大規模なものをもっとたくさん設置できれば、市の需要をはるかに超える1000メガワットの発電能力を持つことが可能だとしています。ただし、実現には本土との送電線の増強が必要です。
川口主査は、高校進学の時に五島を離れて長崎市の高校、熊本県の大学へ進み、東京で働き、再び故郷へ戻ってきた自らの人生に重ねて語ります。
「今まで私たちは都会に出てモノを買って、都会にあこがれてきました。でも時代は変わりました。五島から電気を売って潤う。都会にあこがれるのでなく、離島に住む価値が増える。私が小さなころには考えられなかったことが可能になります。それこそが地方創生ではないでしょうか」(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月7日付掲載


同計画では、30年までに市内の電力の90%を再エネでまかなう(現在は60%)ことを目指しています。川口主査は、ゼロカーボンシティを実現する上で、再エネへの転換は「一丁目一番地ですが、理解を得るのはハードルが高い」とも感じています。
「子や孫の時代のために温室効果ガスを出さない電気を使いましょう」と訴えると住民からは「安くなるとか?」といった声が返ってくることもあります。それでも地道に町内会の会合などに足を運び、訴え続けています。
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再エネの力 長崎・五島市③ 洋上風力 漁業との共存共栄を

2025-06-07 16:22:40 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市③ 洋上風力 漁業との共存共栄を

キビナゴ、ブリ、クロマグロなど、海の幸は長崎県五島市の大きな魅力です。水産業が重要な産業である同市で、国内初の本格的な商用運転を行う浮体式洋上風力発電事業の推進には、漁を行う漁業者の理解、合意が欠かせませんでした。五島ふくえ漁業協同組合の熊川長吉元組合長は、再生可能エネルギーと漁業との共存共栄が島の未来につながると考え、漁師たちの声を束ねていきました。
「風は島の宝なんだ。この宝を生かさない手はない。千載一遇のチャンス。この風を生かして島の活性化をしようと思った」
2013年から環境省による浮体式洋上風力発電の実証実験が行われることになった時に、熊川さんはこう決心しました。



五島ふくえ漁業協同組合の熊川長吉元組合長=長崎県五島市

浮体の下に魚が
当初は、風車による振動や騒音などにより、漁業に悪影響が出るのではないかという懸念が漁業者たちの中にありました。しかし、熊川さんは長年の漁師としての経験から、むしろ風車の土台部分である浮体の下に魚が集まってくる、「天然の漁礁となる」という確信がありました。
800人を超える市内三つの漁協の組合員に「この事業を活用して水産業をよくしたい。共存共栄を実現したい」と訴えて、漁業者たちの協力体制を築きました。
熊川さんの予見は現実のものとなりました。実証実験で、振動や騒音などが漁に与える影響はほとんどないことがわかりました。そして、設置された浮体の下には、びっしりと海藻やサンゴがつき、そこに小魚が集まり、それを食べる大きな魚が集まりました。浮体が漁礁のような効果を発揮していることが確認されたのです。
研究者の意見を踏まえて、長期的な傾向を見るために23年から年2回の漁業影響調査として、はえ縄と一本釣りによる試験操業、漁業者からの聞き取りを行い、データを分析しています。
熊川さんは、「風車の下にはタイ、ヒラマサ、ブリが集まってきた。風車の下を、魚が育つ海洋牧場にしたい。あそこにいけばいつでも魚がいるという場所に」と期待を込めます。

水温上昇の影響
近年、地球温暖化による水温上昇の影響で、五島の海でも磯焼け(沿岸海域での海藻群落の衰退・消失)が広がっています。熊川さんは「15年ほど前までは豊富に生えていたヒジキやワカメがほぼ全滅している」と話します。藻場がなくなると、稚魚の生育場所が失われます。五島の漁業を支える養殖業にとっても死活問題です。
再生可能エネルギーを普及してCO2排出を削減し、地球温暖化を止めることは、五島の漁業者たちにとって、磯焼けを防ぎ、豊かな海を守ることにもつながっています。
熊川さんは、五島が洋上風力発電のトップランナーとして走ってこられたのは①環境省の実証実験を小さな規模で行って漁民、市民の理解を得られたこと②市が再エネの島にすると真剣に取り組んでいること③事業者と漁業者の信頼関係を築けたこと―があるからだと考えています。
コ人でも新しい漁業者が育つことが夢。五島は、水産業がなくなったら終わりだと思っている。風力発電を、水産業を守るきっかけにしたい」。熊川さんの夢は、一歩ずつ現実になろうとしています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月6日付掲載


当初は、風車による振動や騒音などにより、漁業に悪影響が出るのではないかという懸念が漁業者たちの中にありました。しかし、熊川さんは長年の漁師としての経験から、むしろ風車の土台部分である浮体の下に魚が集まってくる、「天然の漁礁となる」という確信がありました。
800人を超える市内三つの漁協の組合員に「この事業を活用して水産業をよくしたい。共存共栄を実現したい」と訴えて、漁業者たちの協力体制を築きました。
熊川さんの予見は現実のものとなりました。実証実験で、振動や騒音などが漁に与える影響はほとんどないことがわかりました。そして、設置された浮体の下には、びっしりと海藻やサンゴがつき、そこに小魚が集まり、それを食べる大きな魚が集まりました。浮体が漁礁のような効果を発揮していることが確認されたのです。
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再エネの力 長崎・五島市② 洋上風力 五島産の電気、広げたい

2025-06-06 17:14:57 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市② 洋上風力 五島産の電気、広げたい

長崎県五島市の経済人たちが立ち上げた地域新電力、五島市民電力の社長を務める橋本武敏さんは、風力発電の風車のメンテナンスを行う会社の経営者です。
福江島の市街地からバスに揺られること35分、かつてサンゴ漁で栄えた街、富江に着きます。戦後は長年人口流出が続き、街の様子は静かです。富江にある、橋本さんの会社では、若い従業員たちが部屋に並ぶモニターの前で仕事をしていました。同社の社員40人の平均年齢は41・9歳です。



五島市民電力の橋本武敏社長=長崎県五島市

研究会立ち上げ
橋本さんはもともと、父親がつくった建設会社の2代目でした。風力発電の風車の建造に関わったことをきっかけに、これからは再エネの時代だと感じ取り、2006年に風車のメンテナンス事業に参入。08年からは専業となりました。
同市では13年から2年間、環境省の浮体式洋上風力発電の実証実験が行われました。その官民連携での受け入れに、橋本さんは中心的に関わりました。福江商工会議所の清瀧誠司会頭らとともに、洋上風力発電を五島の経済発展につなげるための研究会を立ち上げ、浮体の建造や風車のメンテナンスなどへの地元企業の採用を実現しました。
そこで橋本さんたちが感じたのは、洋上風力発電を五島の経済に生かすには、設備の建造や維持管理だけでなく、電気の販売も行う必要があるということでした。
こうして18年、橋本さんが社長、清瀧さんが会長となって地域新電力会社、五島市民電力を立ち上げました。地元の53の企業、団体、個人が出資。「地元の顔が見える」電力会社です。
実証実験を終えて商用運転中の洋上風力発電と、市内各地の個人や施設などが所有する太陽光発電が生み出す「五島産電気」を販売しています。
同社は、地域新電力としては珍しく、自社ではなく取次店による販売方式を取っています。ガソリンスタンドやプロパンガスなどの地元商店・企業がそれぞれの料金プランを販売。店には「ごとうの電気」ののぼりが立っています。
橋本さんは、取次店方式を取る理由として、①長年培われた地元の信用力を販売につなげる②市民電力としては少しでも固定費用を抑えるために販売部門を持たない③取次店の利益向上、雇用の維持・拡大につなげるーの三つをあげます。
同社は、市民には九州電力よりも5%安くなる料金プランを提供しています。発電であげた収益を使って、市内の小中高生のスポーツ・文化活動の練習試合や強化合宿などの遠征費用を一部負担する取り組みも。橋本さんは、市民に再エネのメリットを感じてほしいと考えています。
市内の電力需要に占める同社のシェア率は現在約20%まできました。かつては電気代で五島から市外に年間約40億円が流出していましたが、その一部が島にとどまり、循環を始めています。

国の応援もっと
それでも、これはまだ通過点に過ぎません。商工会議所の会員数は約850。まだあと800事業所が再エネに切り替えていません。清瀧さんは、再エネへの切り替えに理解を得るのは簡単なことではないと感じています。
「電力の独占が長かったから、電気を買うといえば九電(九州電力)というのがみんなの頭の中にある」(清瀧さん)
清瀧さんは、国が気候危機対策、再エネ推進をもっと頑張るべきだと強調します。
「国は30年までのCO2排出削減の目標を持っていますが、事業者がそのために努力してもメリットが少ない。こんなに地球のためになることをやっているのに。もっと国の応援が必要です。せっかく再エネを進めているのに九電による太陽光発電の出力抑制もひどい話です」
26年1月に新たに8基の洋上風力発電が完成し、運転を始めると、市内の電力需要の80%を再エネでまかなうことが可能になりますが、そのためにはより多くの市民に市民電力の電気を選んでもらわなければなりません。
橋本さんは「島の風や太陽光が電気を生んでくれる。この五島産の電気をもっと広げて、再エネで島の未来をつくりたい」と意気込みます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月5日付掲載


これはまだ通過点に過ぎません。商工会議所の会員数は約850。まだあと800事業所が再エネに切り替えていません。清瀧さんは、再エネへの切り替えに理解を得るのは簡単なことではないと感じています。
「電力の独占が長かったから、電気を買うといえば九電(九州電力)というのがみんなの頭の中にある」(清瀧さん)
清瀧さんは、国が気候危機対策、再エネ推進をもっと頑張るべきだと強調します。
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