きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

沈むアベノミクス① マイナス成長 雇用破壊で消費低迷

2016-02-28 15:14:52 | 経済・産業・中小企業対策など
沈むアベノミクス① マイナス成長 雇用破壊で消費低迷

日本経済の失速が鮮明になっています。安倍晋三政権の始動から3年。アベノミクスが内需を押しつぶしています。(佐久間亮、杉本恒如)

内閣府が15日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率1・4%のマイナス成長でした。最大の要因は、前期比0・8%減となった個人消費の大幅な落ち込みでした。
「(今年の冬が)暖かいことが非常に大きく影響して個人消費が下がった」(麻生太郎財務相)
暖冬に原因を求める政府に対し、エコノミストからは「暖冬は外出機会の増加につながるため、消費にとっては追い風になり得る要因でもある」(第一生命経済研究所15日付リポート)など疑問の声が上がっています。

消費税の増税で
同リポートは、今回のGDP速報の個人消費は、消費税を5%から8%へ引き上げた直後の13年4~6月期と比べても少ないと指摘。「消費税増税によって実質賃金の水準が下がり、その後の戻りも鈍いことに加え、節約志向の強さがいまだに解消されないことが影響している」と分析します。
消費税増税と実質賃金低下に原因を求めているのは、第一生命経済研究所だけではありません。ニッセイ基礎研究所16日付リポートは、「企業収益の改善や政府からの賃上げ要請を受けて久しぶりにベースアップを実施する企業が相次いだが、雇用の非正規化によって賃金水準の低い労働者が増えた」とし、「消費低迷の主因は実質雇用者所得の低迷にある」と結論づけています。
また、安倍政権が始動した12年10~12月期のGDPと今回の数字を比べると、個人消費が1・3%(約4兆円)、住宅投資が2・7%(約4000億円)も減少していることを指摘。「家計部門はアベノミクス始動後の経済成長に全く貢献していない」と3年間を総括しました。



商店街で買い物をする人=東京都内

大企業は大増益
事実、大企業の業績は大幅に改善しています。法人企業統計の直近データである15年7~9月期(8・8兆円)の経常利益を安倍政権が誕生する直前の12年7~9月期(6兆円)と比べると、5割近い大増益になっています。
一方、厚生労働省が16日発表した労働力調査詳細集計は、自民党政権による労働法制改悪によって正規雇用から非正規雇用への置き換えが進んでいることを明らかにしました。安倍政権の3年間(12年10~12月期から15年10~12月期)に正規雇用が23万人減り、非正規雇用が172万人も増えています。その結果、実質賃金指数(10年日100)は12年の99・2から15年速報の94・6と、4・6ポイントも減少しました。
賃金が上がらないところへ増税や社会保障改悪、物価上昇が追い討ちをかけています。勤労者世帯(2人以上世帯)の月額の実質可処分所得は1997年の47万9302円をピークに年々減り続け、15年には40万8649円と85年の41万3835円を下回る異常事態となっています。
内需が総崩れとなった今回のGDP速報で、企業の設備投資は前期比1・4%増と唯一の好材料となりました。しかし、大手民間シンクタンクのエコノミストは「老朽化した施設の更新投資が主で新設投資は少ない。長期的にもこの傾向は変わらない」と冷めた評価です。先行指標である機械受注が低調に推移していることなどから、前出のニッセイ基礎研究所のリポートも「景気のけん引役となるには力不足」と評価しています。(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月25日付掲載


労働者の実質賃金が下がり、社会保障などの負担増で可処分所得が減っている。
消費が伸び悩んでいるのは当然の事。
大幅賃上げと、社会保障の連続改悪のストップを
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軍事依存経済 宇宙編⑪ 星空守る研究者・市民

2016-02-26 13:31:59 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑪ 星空守る研究者・市民

日本の宇宙技術は30年前にも米国から狙われたことがあります。レーガン大統領が1983年に打ち出した「戦略防衛構想」(SDI構想)への動員です。
宇宙に迎撃兵器を配備し、敵国が発射した核ミサイルを撃ち落とす―。「スターウォーズ計画」と呼ばれた同構想は、核の戦場を宇宙空間まで広げるものでした。
長野県の東京大学東京天文台(現・国立天文台)野辺山宇宙電波観測所に86年、1通の研究会の案内が届きます。案内状には研究会のスポンサーとして米航空宇宙局(NASA)と並んで米国防総省SDI局の名前が書かれていました。
野辺山には82年にミリ波観測で世界最大となる45メートルの電波望遠鏡が完成。原始星をとりまく回転ガス円盤や新星間分子の発見など、画期的な成果を次々とあげていました。それが米軍の目にとまったのです。

SDl反対の会
研究会のテーマは波長が1ミリ以下の電波(サブミリ波)を観測する受信機の開発でした。サブミリ波による観測が実現すれば、観測精度を高めることができます。同時に、SDIが必要とする敵国のミサイル発射検出にも有効な技術でした。
対応をめぐり天文台で熱い討論が繰り返されました。そのなかから87年、「SDIに反対する天文学研究者の会」が発足します。事務局を務めた国立天文台の御子柴廣(みこしば・ひろし)研究技師は「サブミリ波は魅力的な研究テーマだったが、一度でも軍と関係を持てばどんどん深みにはまっていく。何度も議論し危険性を伝えていこうとなった」と振り返ります。
主に日本天文学会会員の研究者を対象としたSDI反対署名には4カ月で510人が署名しました。当時の同学会の特別会員(主に研究者)数は604人。日本の天文学者の約8割が賛同したのです。88年の東京天文台から国立天文台への改組の際には、有志によって「国立天文台職員の私たちは、一切の軍事研究に協力してはなりません」との声明が発表され、職員156人が賛同しました。



愛用の望遠鏡の前でSDI反対署名を手にする本田実さん=1989年10月17日(「星尋山荘」ホームページから)

「孤立させない」
研究者の運動に市民が応えます。同年、天文愛好家らが市民向けにSDI反対署名を開始。署名用紙の背景には銀河の写真を配し、すい星発見者として世界的に知られた本田実氏(1913~90年)はじめ著名アマチュア天文家の顔写真が並びました。天文ファンに共感が広がり、最終的に約1万2000人分が国連へ送られました。
「天文学者を孤立させてはいけないという思いだった。署名には国内の名だたる望遠鏡メーカーの社長の名前もずらりと並んだ」
当時、運動の中心となった「岡山☆星空を愛する会」の大野智久さん(67)は、反響の大きさを語ります。
93年、国立天文台野辺山宇宙電波観測所は「観測装置共同利用における軍事研究排除の方針」を決定します。研究者と市民の共同が、国立天文台を組織として軍事研究禁止をうたうところまで進めたのです。
米国は同年、SDI構想の放棄を表明します。しかし、構想の一部はミサイル防衛(MD)の形で引き継がれるなど、宇宙の軍事化は続いています。NPO日本スペースガード協会が岡山県で実施している小惑星の観測に米軍が注目し、データ提供を求めるなど、その波は民間にも及んでいます。
大野さんは、宇宙の軍事化に危機感を抱くとともに、SDI反対で示された研究者と市民の共同が改めて輝きを増していると強調します。新しい星の発見に生涯をかけた本田さんの言葉に、天文愛好家の願いが凝縮されていると訴えます。
「私たちは、何万年も何千年もかけてたったいま届いたばかりの星の光を見ている。そんな宇宙を汚しちゃいけない。私は、なにものにもじゃまされずに星を見続けていたいだけなんです」
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月24日付掲載


青年の願いを堀内さんへ_01
青年の願いを堀内さんへ_01 posted by (C)きんちゃん
「星に願いを」じゃありませんが…。
宇宙を軍事産業の場にしないために、地道な闘いがありました。闘いはこれからも続きます。
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軍事依存経済 宇宙編⑩ 軍産複合体の自己運動

2016-02-24 16:51:38 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑩ 軍産複合体の自己運動

「日米宇宙協力の新しい時代の到来」
安倍政権の宇宙基本計画(2015年1月)はこう強調しました。
日本の宇宙政策を米国の軍事戦略の下に組み込む大転換を、国民に向かって宣言したのです。

自衛隊の活動に
同計画によれば、日米間で「新時代の到来」を確認したのは14年5月に開催された「日米両国政府の事務レベル協議において」でした。その直後、14年8月に防衛省が発表した「宇宙開発利用に関する基本方針」には、宇宙の軍事化政策が勢ぞろいしました。
自衛隊の任務の遂行のために、「地球上のあらゆる地域へのアクセスが可能な人工衛星の特性を活(い)かした宇宙空間の利用」を進めるというのです。利用方法は四つです。
一つ目は「人工衛星を用いた情報収集」です。「航空機や艦船などではアクセス困難な他国領域における軍事動向などの偵察」が可能だと説明し、他国の領域を盗み見る狙いをあけすけに示しました。
二つ目は衛星通信や衛星測位を利用した「地球上における活動の指揮統制・情報通信」です。日本が準天頂衛星を整備すれば、「日米協力の強化」など「安全保障に資する」と強調。国民生活の利便性向上を宣伝して開発してきた準天頂衛星を軍事利用し、米軍にも使わせる意図を明確化しました。すでに、新たな衛星3機の製造は三菱電機が502億円で受注しています。
また、整備を進めている初の防衛省保有の通信衛星について、16~17年に運用を始める計画も示しました。通信衛星2機を製造するのはNEC。地上施設の管理はNTTコミュニケーションズ、事業全般の管理はスカバーJSATが担います。契約金額は13年から31年までで1220億円にのぼります。
三つ目は「宇宙空間での弾道ミサイル攻撃への対応」です。ミサイルを探知する赤外線センサーを「先進光学衛星」に載せ、「宇宙空間での実証研究」を行います。弾道ミサイルの報復を受ける心配なく先制攻撃を行うために、米国が開発してきたミサイル防衛システムの一環です。
同センサーの研究開発は防衛省が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して進めており、15年度に48億円の予算を計上しました。
四つ目は「宇宙空間の安定確保」です。軍事衛星が「対衛星兵器」で攻撃される“宇宙戦争”を想定し、対応策を並べました。
こうした軍拡の必要性を導き出すために防衛省が使う枕ことばはいつも同じです。「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中」というものです。



米軍のイージス艦からミサイル防衛用の迎撃ミサイルを発射する日米共同試験(防衛省のホームページから)

持ちつ持たれつ
「軍事のための宇宙開発」を批判する名古屋大学の池内了名誉教授は、「戦争の危機をあおる勢力」への注意を呼びかけます。
「軍産複合体が自由と民主主義に危険をもたらしていると警告したのは米国のアイゼンハワー大統領でした。国の予算を軍事に回すため、軍産複合体は安全への恐怖をあおって世論や議会を誘導してきました」
軍需産業の発展によって軍事力を増す軍隊。軍需によって利益を得る軍需産業。両者を優遇する政府機関。3者が持ちつ持たれつの関係で結びついたのが軍産複合体です。
「平和になれば軍事費が削減され、軍産複合体は立ち行かなくなります。常に戦争を求めて自己運動を続ける存在なのです」
池内名誉教授は、宇宙の軍事利用や武器の輸出が解禁されたことにより、日本でも軍産複合体が成長し始めていると警告します。
「これらの政策自体、産軍官の結託によって進められました。軍事費の増額や武器輸出で軍需産業は大きな利益を得ます。官僚は天下りで軍需産業に雇用されます。政治家は軍需産業から献金を受けます。そして官僚と政治家が軍拡を進める、という循環が成立する危険があります」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月23日付掲載


「常に戦争を求めて自己運動を続ける存在」
まさに死の商人。軍産複合体は解体するしかないですね。
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軍事依存経済 宇宙編⑨ 次の“真珠湾”恐れる米

2016-02-22 19:50:15 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑨ 次の“真珠湾”恐れる米

米国の人工衛星編隊は「天空の基地」として「戦争の神経系統」の役割を果たしていると、立命館大学の藤岡惇教授は話します。
軍事スパイ衛星や通信衛星、GPS(全地球測位システム)衛星を利用すれば、地球上のあらゆる場所への接触が可能です。航空機では不可能な他国領域の偵察、遠隔地からの情報通信、兵器の誘導も行えます。宇宙の支配が陸・海・空の軍事作戦での優位を支えるという構造です。
「米国の戦争はドローン(無人機)戦争の段階に至り、人工衛星が殺人システムになる『半宇宙戦争』という性格をいよいよ強めました。宇宙の軍事利用に歯止めをかけなければ、宇宙そのものが戦場になる本格的な宇宙戦争の危険性が高まりかねません」
2001年に発足した米国のブッシュ政権は、国家宇宙政策(06年8月)で「宇宙能力は国益にとって死活的」だと宣言しました。「米国の国家安全保障は宇宙での活動能力に決定的に依存しており、この依存は今後増大する」との認識を示したのです。米国の優位を保つため、「敵対勢力に宇宙での行動の自由を与えない能力、計画、選択肢をつくりあげる」任務を掲げました。



ミサイル防衛用の迎撃ミサイルを発射する日米共同訓練=2015年6月、米国カリフォルニア州(防衛省のホームページから)

ぜい弱性を強調
宇宙システムは、攻撃に対しては極めてぜい弱です。ブッシュ政権下で06年まで国防長官を務めたラムズフェルド氏が中心になって策定した報告書は、こう強調しました。
「米国は“宇宙の真珠湾”の魅力的な候補になっている」(01年1月「米国の安全保障のために宇宙の管理と組織のあり方を評価する委員会報告書」)
敵襲にもろい「宇宙資産」は、真珠湾攻撃のような奇襲に見舞われる恐れがあるというのです。
そこで、報告書は「宇宙資産」を防衛する体制の構築を喫緊の課題にあげました。宇宙空間に防衛・攻撃用の兵器を配備することにまで言及しました。
オバマ政権の国家宇宙政策(10年6月)も「宇宙における米国のリーダーシップの強化」を方針としてきました。宇宙システムへの攻撃を「抑止し、防御し、必要に応じて無効化する技術の開発」を推進しています。
「近未来の宇宙戦争を想定し、衛星が攻撃されても活動がストップしない能力を確保するのが米国の戦略なのです」と、藤岡教授は指摘します。
「重大なのは、安倍政権が米国に従って『宇宙戦争仕様』を備えることを政策目標に据えたことです」
防衛省が14年8月に策定した「宇宙開発利用に関する基本方針」は、「人工衛星システムが、価値の高い攻撃目標として認識される可能性がある」と主張しました。「対衛星兵器などの宇宙物体の精確な動きを把握する宇宙監視機能を新たに保持する」方針を打ち出し、「必要なセンサーや解析システム」を整備する目標を掲げました。
対衛星兵器が使われる事態。まさに宇宙戦争を想定しているのです。衛星への攻撃で「宇宙利用が阻害されるような状況」を見越して、「代替衛星としても利用し得る即応型小型衛星」の研究を進めることまで決めました。

時代遅れの思想
藤岡教授は、「あくまでも力で相手を抑え込む、という19世紀の軍事思想にとらわれている」と批判します。
宇宙の「防御」に頭を抱えるのは、軍事的な優位性を保つために宇宙の利用を進めるほど、アキレス腱(けん)である衛星が狙われやすくなるからです。米国では、衛星軌道の近くで核爆発を起こされれば、大多数の衛星に障害が生じるとの研究も行われてきました。
「GPS衛星は生活に不可欠のインフラともなっており、機能が停止すければ文明が破壊されます。自分でつくりだした技術が自分に跳ね返ってくるのが戦争です。技術が高度化した現代において、戦争で紛争を解決するというのは完全に時代遅れで危険な考え方になっているのです」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月20日付掲載


確かに、人工衛星はミサイル発射システムや防御シールドを搭載しているわけではありません。撃ち落とそうと思えば、できないことはないでしょう。
でも、それを言い出せばまさにイタチごっこ。時代遅れの思想です。
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軍事依存経済 宇宙編⑧ 米が阻んだ平和的発展

2016-02-21 15:06:37 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑧ 米が阻んだ平和的発展

日本の人工衛星の平和的な発展は米国の圧力のもとで抑えつけられてきました。
威力を発揮したのは、米国が1988年に定めた包括通商法スーパー301条でした。他国に“不公正貿易国”のレッテルをはり、関税の大幅引き上げなどの制裁措置をとれるようにしたもの。自国の経済的要求を押し通すための条項です。
このスーパー301条の対象に日本政府の実用衛星を含めるよう米国が主張し、90年に合意したのです。「日米衛星調達合意」と呼ばれます。政府関連の実用衛星は国際競争入札で調達することが義務付けられました。
実用衛星は通信、放送、気象観測などを目的とした衛星です。未成熟な日本の宇宙産業は米国企業に勝つのが困難だったため、実用衛星の受注から長期にわたって締め出される結果となりました。経団連は07年の提言で振り返っています。
「(日米衛星調達合意の)締結以降、放送、通信、気象などの非研究開発衛星はほとんど米国企業が受注する結果となり、成長途上にあったわが国の宇宙産業は大打撃を受けた」(07年7月17日「宇宙新時代の幕開けと宇宙産業の国際競争力強化を目指して」)



準天頂衛星「みちびき」が赤道上空付近を通過中に撮影した画像(JAXAのホームページから)

軍事衛星に活路
日本の宇宙産業界にとって活路となったのが、軍事の分野でした。「安全保障」目的の衛星であれば、国際競争入札の適用除外とされるからです。実際に03年から累計12機打ち上げられた軍事スパイ衛星(情報収集衛星)はすべて、米国企業ではなく日本の三菱電機が受注しました。情報収集衛星への政府支出は、開発費や地上施設整備費を含め、14年度までで合計1兆円を超えています。
議員立法での宇宙基本法制定を主導した自民党の河村建夫衆院議員は12年、JAXA(宇宙航空研究開発機構)法改定の審議の際、軍事衛星なら日本企業が受注できることを政府に念押ししました。
「安全保障および公共の安全のために必要となる衛星はWTO(世界貿易機関)ルールに従って国際調達の適用除外とする。このような認識でよいか」
政府答弁は「委員の認識の通り」というものでした(12年6月14日、衆院内閣委員会)。
そこで河村氏が「急ぐ必要がある」と強調したのは、軍事に使える準天頂衛星の整備でした。
「アメリカが世界に展開しているGPS(全地球測位システム)の、アジア、オセァニア地域を日本が補完する重要な役割も持つ」と迫ったのです。
加えて、JAXA法改定で「防衛省関連の業務をJAXAが行うことができる」ようになるので、「安全保障分野における宇宙政策を内閣府と密接に連携して積極的に進めていくべきだ」とも主張。「宇宙産業の振興」に「軸を移して(JAXAの)事業を進める方針が必要」だと述べました。
実用衛星の受注に困難がつきまとう中、米国が望む軍事衛星の製造にまい進し、JAXAの事業を軍需産業育成の目的に従属させる思惑が現れています。

JAXA道連れ
15年1月9日に安倍政権が決定した宇宙基本計画も、同じ路線に沿うものでした。
このとき、三菱電機の下村節宏相談役は「政府の推進体制の強化」を求めました。安倍首相を本部長とする宇宙開発戦略本部の「司令塔機能の発揮」により、「JAXAは、防衛省との連携強化による安全保障分野の宇宙利用の推進や、産業振興に向けた技術的支援を行うべきである」(月刊『経団連』15年1月号)というのです。
具体的に要求したのも軍事分野の大幅な増強でした。▽情報収集衛星を4機体制から10機体制に強化する▽弾道ミサイルの発射を探知する早期警戒システムを整備する▽光学センサーやレーダーを利用する宇宙状況監視システムや海洋状況把握システムを構築する▽準天頂衛星の7機体制を20年代初頭に実現する―ことです。
軍事依存にどっぷりはまり込み、JAXAをも軍事偏重の道連れにして、宇宙産業界は事業「強化」を成し遂げようとしています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月19日付掲載


悪名高きアメリカのスーパー301条項。日本の実用衛星(商業衛星)の市場を解放せよと…。
日本企業は軍事衛星に活路を見出す。日本政府との思惑が一致した結果です。
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