「骨太の方針」 社会保障削り国民は「骨細」に
安倍政権は経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」を6月30日に閣議決定しました。
骨太の方針は、「財政健全化」目標を達成するために、高齢化などで増える社会保障費の自然増分を毎年3千億~5千億円削減することを盛り込みました。医療・介護では患者・利用者の負担引き上げ、年金と生活保護では給付削減の方針を掲げています。
他方で大企業に減税、自衛隊の海外派兵のための軍事費増額、軍需産業の強化と武器輸出の積極化を打ち出しました。
骨太の方針は冒頭で、アベノミクスによって日本経済は「四半世紀ぶりの良好な状況を達成しつつあ」り、「景気回復が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の『好循環』が着実に回り始めている」とのべています。
これが経済の実態とも国民の実感ともかけ離れた評価だということは、政府自身の統計にもはっきりと表れています。
厚労省の国民生活基礎調査(7月2日発表)によると、生活が「苦しい」と答えた人が62・4%に上り、調査開始以来の最悪となりました。

消費者庁の6月の物価モニター調査(6月17日発表)では、今後3カ月に消費を「減らそうと思っている」人が約57%を占めます。
その最大の理由が「所得が減ると思うから」というものです。
賃金の状況を厚労省の毎月勤労統計で確認すると―。5月の賃金(速報値、6月30日発表)は前年同月比で微増、物価上昇分を差し引いた実質賃金は0・1%減と25カ月連続の減少です。
グラフでは、今年4月に実質賃金が、ぐっと上向いたように見えます。
これは「『好循環』が着実に回り始めている」からなのでしょうか?
そうではありません。前年同月と比べるという増減率の算出の仕方によって、上向いたかのように見えるだけなのです。
消費税率が8%に増税された14年4月以降の物価は、13年と比べて税率引き上げの影響による上昇がありました。しかし、今年4月以降は、比較対象の前年同月の物価に消費税増税分が組み込まれているので、増税の物価変動への影響がゼロになります。そのため、グラフのように今年4月以降の物価上昇幅は小さくなり、物価上昇分を差し引いた実質賃金が上向いたかのように表れているだけなのです。
物価統計上は消費税増税の影響が消滅しても、現実の生活では増税による負担増が消えたわけではありません。国民の可処分所得が減り続ける中での社会保障費の削減は生活不安を高め、さらに消費を抑制します。
前述の物価モニター調査で、消費を減らそうと思っている人の7割が食費を切り詰めると答えています。そんな国民をいっそう「骨細」に、大企業と「海外で戦争する国」を「骨太」にする「アベコベ」
政治を根本から切り替えなければなりません。
宮崎礼二(みやざき・れいじ 明海大学准教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2015年7月19日付掲載
社会保障は削られ、ベースアップも雀の涙。とても物価高と消費税増をカバーできるものではありません。
食費を切り詰めるなんで切実です。
安倍政権は経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」を6月30日に閣議決定しました。
骨太の方針は、「財政健全化」目標を達成するために、高齢化などで増える社会保障費の自然増分を毎年3千億~5千億円削減することを盛り込みました。医療・介護では患者・利用者の負担引き上げ、年金と生活保護では給付削減の方針を掲げています。
他方で大企業に減税、自衛隊の海外派兵のための軍事費増額、軍需産業の強化と武器輸出の積極化を打ち出しました。
骨太の方針は冒頭で、アベノミクスによって日本経済は「四半世紀ぶりの良好な状況を達成しつつあ」り、「景気回復が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の『好循環』が着実に回り始めている」とのべています。
これが経済の実態とも国民の実感ともかけ離れた評価だということは、政府自身の統計にもはっきりと表れています。
厚労省の国民生活基礎調査(7月2日発表)によると、生活が「苦しい」と答えた人が62・4%に上り、調査開始以来の最悪となりました。

消費者庁の6月の物価モニター調査(6月17日発表)では、今後3カ月に消費を「減らそうと思っている」人が約57%を占めます。
その最大の理由が「所得が減ると思うから」というものです。
賃金の状況を厚労省の毎月勤労統計で確認すると―。5月の賃金(速報値、6月30日発表)は前年同月比で微増、物価上昇分を差し引いた実質賃金は0・1%減と25カ月連続の減少です。
グラフでは、今年4月に実質賃金が、ぐっと上向いたように見えます。
これは「『好循環』が着実に回り始めている」からなのでしょうか?
そうではありません。前年同月と比べるという増減率の算出の仕方によって、上向いたかのように見えるだけなのです。
消費税率が8%に増税された14年4月以降の物価は、13年と比べて税率引き上げの影響による上昇がありました。しかし、今年4月以降は、比較対象の前年同月の物価に消費税増税分が組み込まれているので、増税の物価変動への影響がゼロになります。そのため、グラフのように今年4月以降の物価上昇幅は小さくなり、物価上昇分を差し引いた実質賃金が上向いたかのように表れているだけなのです。
物価統計上は消費税増税の影響が消滅しても、現実の生活では増税による負担増が消えたわけではありません。国民の可処分所得が減り続ける中での社会保障費の削減は生活不安を高め、さらに消費を抑制します。
前述の物価モニター調査で、消費を減らそうと思っている人の7割が食費を切り詰めると答えています。そんな国民をいっそう「骨細」に、大企業と「海外で戦争する国」を「骨太」にする「アベコベ」
政治を根本から切り替えなければなりません。
宮崎礼二(みやざき・れいじ 明海大学准教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2015年7月19日付掲載
社会保障は削られ、ベースアップも雀の涙。とても物価高と消費税増をカバーできるものではありません。
食費を切り詰めるなんで切実です。