安倍政権の経済政策 検証① “想定外”との言い訳
「骨太の方針」「成長戦略」「規制緩和」など安倍晋三政権としては3年目となる経済政策が出そろいました。政策を検証します。
安倍政権にとって3回目となる「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」が6月30日に閣議決定されました。
2014年度の経済状況について「実質GDP(国内総生産)成長率は、個人消費等に弱さがみられ」たために「0・9%のマイナスとなった」と指摘しました。GDPの落ち込みは、マイナス0・5%程度としていた政府見通しを大幅に上回ったのです。なによりも、個人消費の落ち込みが最大の要因でした。実質個人消費は3・1%減。昨年4月の消費税率引き上げが押し下げました。その落ち込みは、消費税導入時(1989年度)や5%への増税時(97年度)よりも大きく、過去最大となりました。
政府の甘い判断
当初政府は、増税の影響をどう判断していたのでしょうか。消費税率引き上げ直後に閣議決定した昨年の「骨太の方針」では、「消費税率が本年4月に引き上げられたことによる反動減はこれまでのところ想定内という見方が多い」「駆け込みの反動減を乗り越えて景気回復が続くと期待される」と、国民の生活実態を無視した「甘い」見通しを示していました。
「反動減」はあるものの、その影響は一時的で、その後は景気が回復するというのが政府の前提でした。しかし、消費税は買い物をするたびに課税されます。一時的なものではありません。
そして1年。政府の「甘い」シナリオは、もろくも崩れさりました。
「骨太の方針」「成長戦略」を決定した経済財政諮問会議と産業競争力会議合同会議=6月30日、首相官邸
個人消費に弱さ
GDP成長率が政府の想定よりも大幅に落ち込んだことについて、甘利明経済財政担当相は「この背景には、年度前半におきまして、個人消費や住宅投資に消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減があった」(5月20日の記者会見)とする一方で、「消費税率引き上げなどの影響を含めた物価の上昇に家計の所得が追いついていないことなどにより、個人消費に弱さがみられた」と、一時的でない要因を認めました。さらに「消費税率引き上げの影響が予想より大きかったということです」と強調しました。
日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁も5月13日の国会で「消費税率引き上げという形で税負担が増えたわけですので、それによる実質所得の減少といったものがやや予想を超えた大きさであったということは認めざるを得ない」「経済に想定されていた以上の影響を与えたということは事実だと思います」と発言しました。
政府や日銀は「個人消費の弱さ」は認めたものの、「想定外」との言い訳には固執しています。
消費税率引き上げの影響は本当に「想定外」だったのでしょうか。
安倍政権が、消費税率引き上げを検討していた2013年8月26日、主婦連合会の山根香織会長(当時)は、「集中点検会合」で次のように発言していました。
「続々物価が上がって、さまざまな痛みを伴う改革がされて、でも給料は上がらず、雇用も不安定なままで増税のダブルパンチ、トリプルパンチでは消費が上向くはずはない」
「結局、思うような成果が出なかったら、政治への不信は徹底的なものとなって、うまくいきませんでしたでは取り返しがつかないと考える」
「どの世論調査を見ても、今、増税すべきではないという声のほうが確実に多い状況である。この声を無視していいはずはない」
山根氏の指摘は、まさに「想定外」ということも政府の言い訳にすぎないことを示しています。
(つづく)(6回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年7月3日付掲載
お坊ちゃんの安倍首相や、庶民感覚のない甘利さんなどは、消費税を上げてもそれほど影響はないという感覚なんでしょうかね。
主婦連合会の山根さんが「続々物価が上がって、さまざまな痛みを伴う改革がされて、でも給料は上がらず、雇用も不安定なままで増税のダブルパンチ、トリプルパンチでは消費が上向くはずはない」というのは、当然の事。
「骨太の方針」「成長戦略」「規制緩和」など安倍晋三政権としては3年目となる経済政策が出そろいました。政策を検証します。
安倍政権にとって3回目となる「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」が6月30日に閣議決定されました。
2014年度の経済状況について「実質GDP(国内総生産)成長率は、個人消費等に弱さがみられ」たために「0・9%のマイナスとなった」と指摘しました。GDPの落ち込みは、マイナス0・5%程度としていた政府見通しを大幅に上回ったのです。なによりも、個人消費の落ち込みが最大の要因でした。実質個人消費は3・1%減。昨年4月の消費税率引き上げが押し下げました。その落ち込みは、消費税導入時(1989年度)や5%への増税時(97年度)よりも大きく、過去最大となりました。
政府の甘い判断
当初政府は、増税の影響をどう判断していたのでしょうか。消費税率引き上げ直後に閣議決定した昨年の「骨太の方針」では、「消費税率が本年4月に引き上げられたことによる反動減はこれまでのところ想定内という見方が多い」「駆け込みの反動減を乗り越えて景気回復が続くと期待される」と、国民の生活実態を無視した「甘い」見通しを示していました。
「反動減」はあるものの、その影響は一時的で、その後は景気が回復するというのが政府の前提でした。しかし、消費税は買い物をするたびに課税されます。一時的なものではありません。
そして1年。政府の「甘い」シナリオは、もろくも崩れさりました。
「骨太の方針」「成長戦略」を決定した経済財政諮問会議と産業競争力会議合同会議=6月30日、首相官邸
個人消費に弱さ
GDP成長率が政府の想定よりも大幅に落ち込んだことについて、甘利明経済財政担当相は「この背景には、年度前半におきまして、個人消費や住宅投資に消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減があった」(5月20日の記者会見)とする一方で、「消費税率引き上げなどの影響を含めた物価の上昇に家計の所得が追いついていないことなどにより、個人消費に弱さがみられた」と、一時的でない要因を認めました。さらに「消費税率引き上げの影響が予想より大きかったということです」と強調しました。
日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁も5月13日の国会で「消費税率引き上げという形で税負担が増えたわけですので、それによる実質所得の減少といったものがやや予想を超えた大きさであったということは認めざるを得ない」「経済に想定されていた以上の影響を与えたということは事実だと思います」と発言しました。
政府や日銀は「個人消費の弱さ」は認めたものの、「想定外」との言い訳には固執しています。
消費税率引き上げの影響は本当に「想定外」だったのでしょうか。
安倍政権が、消費税率引き上げを検討していた2013年8月26日、主婦連合会の山根香織会長(当時)は、「集中点検会合」で次のように発言していました。
「続々物価が上がって、さまざまな痛みを伴う改革がされて、でも給料は上がらず、雇用も不安定なままで増税のダブルパンチ、トリプルパンチでは消費が上向くはずはない」
「結局、思うような成果が出なかったら、政治への不信は徹底的なものとなって、うまくいきませんでしたでは取り返しがつかないと考える」
「どの世論調査を見ても、今、増税すべきではないという声のほうが確実に多い状況である。この声を無視していいはずはない」
山根氏の指摘は、まさに「想定外」ということも政府の言い訳にすぎないことを示しています。
(つづく)(6回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年7月3日付掲載
お坊ちゃんの安倍首相や、庶民感覚のない甘利さんなどは、消費税を上げてもそれほど影響はないという感覚なんでしょうかね。
主婦連合会の山根さんが「続々物価が上がって、さまざまな痛みを伴う改革がされて、でも給料は上がらず、雇用も不安定なままで増税のダブルパンチ、トリプルパンチでは消費が上向くはずはない」というのは、当然の事。