く~にゃん雑記帳

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<北九州市立美術館> 「特集:浜田知明 戦争とその表象」展

2014年05月28日 | 美術

【「初年兵哀歌シリーズ」の版画や彫刻など53点】

 北九州市立美術館本館(戸畑区)でコレクション展「浜田知明 戦争とその表象」が開かれている。浜田知明(96歳)は戦後日本を代表する彫刻家・版画家。従軍体験を基に戦争の残酷さや不条理をえぐり出した版画『少年兵哀歌シリーズ』などで知られる。今展は浜田自身から昨年、彫刻20点の寄贈があったことを記念したもので、少年兵シリーズ15点をはじめ版画や彫刻合わせて53点が出品されている。7月6日まで。  

 浜田は1917年熊本県生まれ。東京美術学校(現東京芸大)油画科卒業後召集され、1939年から通算5年近く軍隊生活を余儀なくされた。その間「幾重に張廻らされた眼に見えぬ鉄格子の中で、来る日も来る日も太陽の昇らない毎日であった。僕は自殺のことのみ考えて生きていた」「戦争の体験によって人生観に於いても、作画する態度に於いても、僕はそれを切り離してものを考えることが能(で)きなくなってしまった」。

     

 初年兵シリーズの中の『歩哨』(写真㊧)は銃口を喉元に当て、今にも左足で引き金を引こうとするような構図。目からは1筋の涙。『便所の伝説』でも目から涙がこぼれる。自身の当時の暗澹(あんたん)たる思いを描いたものだろう。浜田は少年兵をしばしば芋虫としても表現した。『銃架のかげ』(㊥)もその1つ。数匹のうち1番手前の芋虫には何本ものピンが突き立つ。

       

 浜田は戦後1950年代を中心に戦争を主なテーマに多くの作品を生み出したが、その後、人間や社会を鋭く洞察して皮肉やユーモアを込めた作品にも取り組んだ。両手を頭に載せた作品『アレレ…』(上の写真㊧)や『いらいら(A)』(㊨)、『噂』『群盲』……。しかし、80年代以降に挑戦を始めた彫刻では再び戦争をテーマにした作品を制作している。

  

 彫刻『風景』(写真㊧、部分)は1995年の作品で縦88cm、横49.5cm。棺のような台に兵士の骸骨が横たわる。頭の上には墓標のように長い銃が立てられ、右目からは草木が生える。『檻』は救いを求めるように右手を鉄格子の間から突き出す。この作品は初年兵シリーズの版画『檻』の構図とほとんど同じ。彫刻でも兵士を芋虫に擬人化しており、『芋虫の兵隊(A)』(㊨)や『芋虫の兵隊(B)』などが出品されている。

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