く~にゃん雑記帳

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<後藤正治氏> 「『奇蹟の画家』をめぐって―神戸の画家、石井一男さんの世界」

2014年05月16日 | メモ

【大阪自由大学で講演、「女神像は自画像ではないだろうか」】

 イコン(聖画)のような女神像を黙々と描き続ける神戸市在住の画家・石井一男さん(1943年生まれ)。その彼の半生と絵に魅せられた人々を追って『奇蹟の画家』(2009年、講談社)を書いたノンフィクション作家、後藤正治氏の講演会が15日、大阪市内で開かれた。大阪自由大学の連続講座「挑戦する表現者たち」の一環で、講演タイトルは「『奇蹟の画家』をめぐって―神戸の画家、石井一男さんの世界」。

   

 石井さんは約20年前、神戸市の画廊オーナーに見出されて49歳のとき初の個展を開催。最近では個展初日に完売するほどの人気を集めている。独身。アトリエを兼ねた木造長屋の2間の自宅で日々制作に励む。その姿や清貧の暮らしぶりが2010年1月「情熱大陸」というテレビ番組でも取り上げられた。

 講演の中でもその番組の模様が放映された。石井さんは寡黙で柔和な表情。石井さんを取材していて後藤氏が「一番困ったのはシャイで無口なこと。取材ノートが全然埋まらなかった」という。「だけど石井さんと接した後の帰り道ではいつも心地よさを感じた」。後藤氏は石井さんを描く手法の1つとして、絵に魅せられ購入した人たちを訪ね歩いた。

 その中で特に印象に残った人が2人いた。1人はターミナルケア(終末期医療)の末2007年に亡くなった元N新聞社勤務のKさん。家族の写真とともに石井さんの絵をベッドから見える位置に架け、その女神像に見守られるように穏やかに亡くなったという。もう1人は神戸市の公務員Nさん。急性骨髄性白血病の治療のため無菌室に入るとき、やはり石井さんの絵を持っていった。

 後藤氏自身も石井さんの作品を2点所有する。「彼の絵を見ていると祈りや慈悲といった言葉が浮かぶ。だが、石井さんは『人を救おうとして絵を描いているわけではないし、ただ思うがままに手を動かしてきただけ』という言い方しかしない」。後藤氏は石井さんが描き続ける女神像について最近「自画像ではないかと思い始めている」そうだ。「文は人なりというが絵も人なり。彼自身の現在が表現されているのではないだろうか」。

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