く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ムサシアブミ(武蔵鐙)> 仏炎苞を武蔵の国で作られたアブミになぞらえ

2014年05月19日 | 花の四季

【雌雄異株、方言では「くちなわびしゃく」「おしゃかのて」とも】

 サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、関西以西の海に近い湿った林床や谷筋などに生える。日本以外では朝鮮半島、中国、台湾にも分布する。花期は3~5月ごろ。同じサトイモ科のミズバショウやザゼンソウ、ユキモチソウなどと同様、白い肉穂花序を包み込む〝仏炎苞〟を持つ。

 ただ、その仏炎苞が実に奇妙な形。白く垂直に立ち上がるミズバショウなどと違って、先端が手前に強く反り返る。外側は緑色で多くの白い筋が入り、内側は暗紫色で耳形に開く。その形が昔、武蔵の国で作られた馬具の鐙(あぶみ)に似ているとして「武蔵鐙」の名が付いた。鐙は馬の騎乗時に足を乗せるもので、武蔵の国のものが最高級とされた。『伊勢物語』第13段に「武蔵鐙」として登場することから、平安初期には広く知れ渡っていたとみられる。

 ムサシアブミはその特異な形から地方の方言では「くちなわびしゃく」「へびのしゃくし」「おしゃかのて」などとも呼ばれてきた。名前に「武蔵」と入るが、今の関東地方にはほとんど自生しないという。『原色日本野外植物図譜』には「関東地方(群馬)に産するとして報告されたものはその後、観賞のため移植されたものが繁殖し野性化したもの」などと記されている。

 雌雄異株。栄養状態が良くて地中の球根が大きくなると雄株から雌株に転換する。この性転換という変わった性質は同じ仲間のミツバテンナンショウなどテンナンショウ属の植物に共通するもの。球根が大型になり雌花を付けるようになっても、球根を切って小型にするとまた雄花を付けるようになるそうだ。ある植物の事典には球根の重さで「20g前後」が雌雄の境界とあった。

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