【福島の天然記念木の子孫、約30年で高さ9m超にも】
各地から桜の開花情報が届く中、奈良市学園南にある美術館「大和文華館」でも25日、「三春滝桜(みはるのたきざくら)」という大きな枝垂れ桜がチラホラ咲き始めた。国の天然記念物に指定されている福島県三春町の「三春滝桜」を親木とする子株。昨年は25日に満開になっていたといい、今年は開花が少し遅れていた。
「三春滝桜」はエドヒガン系の紅枝垂れ桜。三春町の桜は樹齢が推定1000年以上で、樹高13.5m、幹周り8.1mという巨木。岐阜の淡墨桜、山梨の神代桜とともに日本3大桜の1つといわれ、1922年には天然記念物に指定された。薄紅色の花が滝のように流れ落ちる様から滝桜の名前が付いたようだ。その種子から育てられた苗木が約31年前の1983年、三春町から遠く奈良の同文華館までやって来た。
縁を取り持ったのは室町時代の画僧雪村(せっそん)。三春町郊外には雪村が晩年を過ごした「雪村庵」がある。一方、文華館は「自画像」「花鳥図屏風」「呂洞賓図」(いずれも重要文化財)など雪村の名品を多く所蔵する。雪村没後400年に当たる1983年、三春町が記念行事「雪村 三春への道」展を開いた折には、文華館が「自画像」を出品し学芸員が法要にも参列した。
「三春滝桜」はそのお礼として寄贈された。苗木はその後、すくすくと成長し毎年十数本が花をつけて来館者の目を楽しませてくれる。とりわけ本館前の桜は樹高9m、幹周り1mを超え、四方に広がる樹冠も12m×9mに達する巨木に育った。25日訪ねると、遠目には枝々が赤く染まり開花直前を思わせたが、近づくと既にうすいピンク色の花が開き始めていた。文華館の方は「今朝初めて開花に気づきました。今度の日曜(30日)あたりが見頃でしょう」と話していた。