く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<五輪代表に田中3兄弟>父も体操一筋、戸畑高→日大→和歌山県庁体操部、今は和歌山で体操教室代表

2012年05月07日 | スポーツ

【長年の指導歴、日本体操協会の第1回優秀指導者賞を受賞】

 体操をする兄を見て小さな妹も始め、弟も触発されて体操に挑戦――。スポーツの世界ではよくあるケースだが、その3人がそろって一流選手に成長し、夢舞台オリンピックへの切符まで獲得となると世界でも極めて珍しい。和仁(26、徳洲会)、理恵(24、日本体育大学研究員)、佑典(22、コナミ)の田中3兄弟はその夢を実現、ロンドン五輪に一緒に出場することになった。3兄弟の同時出場は1996年アトランタ五輪での柔道・中村3兄弟(佳央・行成・兼三)以来。体操界では世界でも初の快挙だろう。

 田中兄弟が広く注目を集め始めたのは2年前の2010年に兄と妹が同時に世界選手権(オランダ・ロッテルダム)代表に選ばれたころから。特に理恵は10代の小柄な選手が多い日本女子体操界にあって、年齢的にも体格的(身長156cm)にも最近にないタイプ。ダイナミックで表現力に富む演技といつも絶やさない笑顔が印象的だ。10年世界選手権では気品のある美しい演技が観客を魅了、日本女子選手では初めて「ロンジン・エレガンス賞」を受賞している(日本選手では富田洋之以来2人目)。3人は2011年の世界選手権(東京)にもそろって出場した。

【高校に入って体操部に。平行棒で全国2位にも】

 体操一家といわれてきたが、一気に3人の五輪選手を育て上げた両親はどんな方だろう? 思いを巡らせている時、6日、郷里の福岡県から1本のメールが入った。「父は鹿児島生まれで、戸畑高校に入って体操を始めたらしい」。戸畑は私の出身地。戸畑高校といえば、かつて体操の名門校として知られていた。3兄弟の父、田中章二さん(62)が入学した年にも、同級生の中に福岡県の中学大会で1~3位だった上位3人がいたという。

 田中さんは高校3年のときインターハイに出場、平行棒で全国2位の好成績を上げている。日大時代には大学選手権で個人7位、団体2位に。大学卒業後、和歌山県教委に入り、1年後、県立和歌山北高校教員となり体操部の監督に就任する。和歌山県はそのころ国体を連覇するなど体操全盛期だった。田中さんは子どもたちを指導する傍ら、県庁体操部に所属して32歳まで現役を続行、この間、国体や全日本選手権などにも出場している。

【体操好きな子を育てたい―34年前に体操クラブ設立】

 現在は「和歌山オレンジ体操クラブ」(和歌山市)の代表で、和歌山北高の体操部顧問。和歌山県体操協会常務理事、強化・ジュニア部長も務める。クラブは「体操が好きな子を育てたい」という思いから1978年に設立した。3人の息子と娘もそこで父やコーチ陣の指導を受けて育った。2009年には長年のジュニア指導の功績が認められ、日本体操協会が新しく設けた表彰制度の「優秀指導者賞」を、塚原千恵子さん(朝日生命体操クラブ)ら2人と共に受賞した。

 日経新聞が昨年の元旦号特集「跳べニッポン人」で田中さんを取り上げ、その中で独特な指導方法を紹介している。それによると、新しい技を教えるとき最初の2週間は練習を1日3回までと決めているという。「成功と失敗を繰り返すと悪い方のイメージがインプットされてしまうから」というのがその理由。大会には表彰台が狙えるレベルになって初めて出場させる。時には表彰台でメダルをもらう予行演習までして、選手にやる気を起こさせる。長年の指導経験から編み出したノウハウだろう。

【半年前「3人の五輪出場は夢みたいなことだが…」】

 3人兄弟はこれまでけんかをしたことがないというほど仲がいいことで有名。田中さんは半年前の昨年11月、和歌山で開かれた「近畿地区体育施設研究協議大会」で子育てをテーマに講演している。「何事も基本が大切。体操の技だけでなく日常生活やものの考え方についても、すぐに教えることと、自分で考えさせることを分けて育ててきた」。3人がそろって五輪に出場する可能性については「夢みたいなことが起こりうると信じたい」。そう話していたそうだ。

 5日の五輪代表最終選考会を兼ねたNHK杯最終日。末の息子・佑典の代表入りが発表された瞬間、田中さんは立ち上がって万歳、目から涙があふれた。長男・和仁と長女・理恵はいずれも1位で代表入りが確実だったが、佑典は微妙な立場だっただけに田中さんも感極まったのだろう。3人の母、誠子さん(51)もかつて体操の選手だったが、大会の時はいつも願掛けで会場に行かずテレビ観戦するという。田中さんが3人そろっての五輪出場を報告すると、誠子さんも電話口で泣いていたそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする