【12~13日福岡国際センターで開催、大会後に五輪代表が決定】
ロンドン五輪代表選考会を兼ねる全日本選抜柔道体重別選手権が12日、福岡市の福岡国際センターで開幕する。五輪に出場できるのは男女とも7階級でいずれも1人だけ。13日の大会終了後に代表選手が発表される。国際大会での実績や力量の差からすでに代表候補がほぼ内定している階級もあれば、まだ僅差で今大会の結果が大きく左右しそうな階級もある。とりわけ女子48kg級では浅見八瑠奈(24)と福見友子(26)、52kg級では中村美里(23)と西田優香(26)がここまで激しい選考争いを演じてきた。宿敵同士の戦いはどんな形で決着がつくのか。この女子2階級は最終日の13日に行われる。
【48kg級】浅見―けがは回復?実戦4カ月ぶり、福見―欲しい一本勝ち
田村亮子が長く世界の女王として君臨、五輪では2000年シドニーと04年アテネで「金」、08年北京で「銀」を獲得した。それだけにロンドンでも「金」への期待が大きい。この階級は国際大会で優勝するより、国内大会を制するほうが難しいとさえいわれてきた。浅見八瑠奈と福見友子の両選手はその頂点を激しく競い合ってきた。だが五輪の代表枠はわずか1人。全日本柔道連盟にとっても、いよいよ苦渋の選択の時を迎える。
2人の中では浅見が一歩先行してきた。山梨学院大学3年だった10年1月、世界ランキングの上位選手が集まるワールドマスターズ準決勝で初めて福見に一本勝ちすると、同年夏の世界選手権決勝でも福見を破る。さらに翌11年の世界選手権でも再度決勝で顔を合わせて優勢勝ち、2連覇を果たした。浅見は11年のワールドマスターズも連覇しており「外国選手に強い」という定評もある。
ただ今年1月のマスターズは直前に左膝靱帯を痛めたことの影響もあったのか、決勝でライバルの福見に敗れている。そのけがのため2月の欧州遠征も取りやめており、今大会はほぼ4カ月ぶりの実戦となる。それだけに、けがからの復調具合と実戦感覚が気になるところ。国際試合では多くのタイトルを取ってきた浅見だが、この体重別選手権では2010年は決勝で福見に敗れ、昨年は福見を破って勝ち上がってきた山岸絵美(25)に決勝で負けている。それだけに今大会を優勝で飾って五輪代表を決定づけたいところだろう。
福見は世界選手権決勝で2年連続、浅見に敗れたうえ、昨年12月のグランドスラム・東京でも決勝で浅見に小外刈りで一本負けした。この段階で五輪代表選考レースで浅見にかなり水をあけられていた。だが今年1月のマスターズ決勝で浅見に優勢勝ちして雪辱、さらに2月のグランドスラム・パリでも優勝して息を吹き返した。福見・浅見の対戦成績は4勝4敗と五分。今大会の組み合わせでは両者が別ブロックのため、順当に勝ち上がると決勝で顔を合わせる。福見としては決勝で何としても浅見から一本を取って代表入りをアピールしたいところだ。
【52kg級】中村―国際実績で先行? 西田―直前のアジア選手権制し勢い
2人ともロンドン五輪への思い入れは極めて強い。中村美里は4年前、北京五輪に出場したものの、準決勝で北朝鮮の安琴愛(アン・グムエ)に敗れ銅メダルに終わった。その時の「金メダル以外はみんな同じ」という言葉に悔しさがにじむ。ロンドンでその雪辱を果たしたい。一方、西田優香は北京五輪前年の2007年世界選手権で銅メダルを獲得、五輪代表候補の最右翼といわれながら、代表選考最終試合の08年体重別選手権で1回戦敗退、五輪出場の夢はかなわなかった。ロンドン出場はそれ以来の悲願だ。
国際試合での実績では中村が先行している。北京五輪「銅」のほか、世界選手権は2009年「金」、10年「銀」、11年「金」、ワールドマスターズも10年、11年と連覇した。10年のアジア大会、11年の世界選手権では北京で破れた安琴愛も撃破している。ライバルの西田には10年世界選手権決勝で旗判定の末敗れたが、11年世界選手権決勝では優勢勝ち。ただ今年1月のワールドマスターズ決勝では延長の末、西田に一本負けを喫した。この体重別選手権は過去2年連続優勝している。
一方の西田は切れ味鋭い背負い投げを武器とし、11年世界選手権では決勝で中村に優勢負けしたものの、準決勝までの5試合は全て背負い投げで一本勝ちした。今年1月のマスターズで中村に勝ったのも背負い投げだ。2月のグランドスラム・パリで優勝すると、4月下旬にウズベキスタンで開かれたアジア選手権にも出場した。体重別選手権を控え、有力選手が回避する中であえてアジア選手権に出たのは、ロンドンでも日本人選手の有力ライバルと目される北朝鮮・安琴愛を倒して代表入りへポイントを稼ぐ狙いがあった。
同大会に残念ながら安琴愛は出場しなかったが、西田はオール一本勝ちで優勝した。しかも燕返し、小内刈り、大外刈りと多彩な技を繰り出し、いずれも1分以内という圧勝だった。西田は今年に入ってまだ負けなし。関係者の間では中村と西田は「これで五分五分になった」との見方も浮上してきた。2人にとって今大会はまさにロンドンに直結する大一番になりそうだ。