【大きな円錐状の花穂を青空に向けて】
家の近くに1本あるマロニエが開花を始めた。マロニエといえばパリ・シャンゼリゼのマロニエ並木が有名。原産地はギリシャからトルコにかけての地中海東部地域で、排ガスに強いこともあってヨーロッパでは代表的な街路樹の一つになっている。円錐状の花穂は高さが20~30センチにもなる。
マロニエの並木道――。なかなかロマンチックな響きだが、その花が欧州では花粉症の原因にもなっているという。花粉の後にはタンポポのような白い綿毛を大量に飛ばす。それがふわふわと街中を漂う光景も春の風物詩の一つだ。実は栗に似た光沢のある赤褐色で、昔はマロングラッセにもマロニエの実を使っていたという。マロニエは英語で「horse chestnut」(馬栗)。なぜ「馬」? それには①実が馬の病気に使われた②実が馬の餌になっていた③樹皮に残る葉痕が馬蹄形のため――など諸説あるらしい。
「西洋トチノキ」というだけあってマロニエとトチノキはそっくり。マロニエの葉っぱはトチノキより小ぶりで、実を覆う果皮の表面にトゲがあるのが特徴(トチノキにはトゲがない)。マロニエやトチノキの同じ仲間に、北米のアカバナトチノキや、マロニエとアカバナの交配種であるベニバナトチノキなど。国内では東京・銀座や福岡・天神、JR西千葉駅前などにマロニエ通り、静岡市・駿府城跡の駿府公園にマロニエ園がある。
マロニエといえば、年長の方なら懐かしの名曲、松島詩子の「マロニエの木蔭」を思い起こされるかもしれない。「空はくれて 丘の涯(はて)に 輝くは 星の瞳よ なつかしの マロニエの木蔭に……」。読者投稿の「ユーチューブ」でも流れているが、シャンソン風ではなくリズミカルなタンゴ調。昭和12年(1937年)というから、もう70年以上前のヒット曲だ。由紀さおりブームもあって昭和歌謡が見直されているが、戦前の歌謡曲もなかなかいいなぁ!