【古名「えびすぐすり」(異国から来た薬草)】
中国北東部原産。漢名「芍薬」の音読みでシャクヤクとなった。以前はキンポウゲ科に分類されていたが、今ではボタン科に属す。美人の形容として「立てば芍薬、座れば牡丹」といわれるように、まっすぐ伸びた茎の先に気品のある大輪の花を付ける。夕方になって少し冷え込んでくると、花びらを少し閉じる。その姿からか、「恥じらい、はにかみ」といった花言葉が当てられている。
花も葉もボタンに似るが、ボタンが木なのに対しシャクヤクは多年生の草花。初春に顔を出す赤い新芽の力強さが印象的だ。根が太く、ボタンはシャクヤクの根に接いで増やす。その根は漢方の原料として古くから活用され、紀元前から栽培されていたという。乾燥した根そのものを元々芍薬と呼び、これを煎じて服用する。婦人病や腹痛、めまい、筋肉の痙攣などに効くという。日本に渡来したのは室町時代といわれるが、根はそれよりずっと早く5世紀ごろには薬用として渡ってきていたとの説もある。
原種の花の色は白と赤の2種だったが、改良によって多くの品種が生まれた。特に江戸時代後期には品種改良が盛んに行われ、武家庭園に愛用され茶花としても人気を集めた。一重や八重のほか花の色も多彩。花芯(雄しべ)の形や大きさによって金しべ咲き、冠咲き、翁咲き、手毬咲きなどがある。とりわけ栽培に熱心だったのが肥後熊本藩で、「肥後シャクヤク」と呼ばれる。黄金色の花芯の盛り上がりが特徴で、戦前には200種ほどあったが、戦争や水害で多くを失い今残っているのは50種前後という。
18世紀ごろには日本のシャクヤクが西洋に渡って、フランスを中心に品種改良され「西洋シャクヤク」が生まれた。日本には自生の山野草として「ヤマシャクヤク」がある。花は白い一重で、直径が4~5cmとシャクヤクに比べると小さく清楚な感じ。こちらは環境省のレッドリストの準絶滅危惧に指定されている。