【ギリシャの国花、巨大な葉は円柱装飾のモチーフに】
大阪・天王寺公園内にある庭園「慶沢園」を29日久しぶりに訪ねたら、入ってすぐ右手にアカンサスが今が盛りと咲き誇っていた。直立した花穂は高さが2m前後もあり、薄紫色のガクの下に白い花を垂らす。根際から四方に伸びる葉も幅が50~60cmと巨大。圧倒的な存在感だ。
原産地は地中海沿岸の南欧で、日本には明治末期から大正にかけて渡来した。野山に多く自生するギリシャでは国花になっている。和名は「葉薊(ハアザミ)」。葉に大きな切れ込みがありギザギザなところがアザミに似ていることから、その名が付いた。ただアザミがキク科なのに対し、アカンサスはキツネノマゴ科と全く種が異なる。
花の基部にある苞葉に鋭いトゲがある。アカンサスの名前もギリシャ語の「トゲ」に由来し、ギリシャ神話にも登場する。太陽の神アポロンが美しい娘アカンサスに一目惚れし求婚する。だが娘に拒否されたうえ爪で引っかかれる。怒ったアポロンは娘を爪のようなトゲがあるアカンサスに変えてしまった――。
アカンサスの葉はギリシャ建築のコリント式円柱の彫刻のモチーフとして有名。紀元前5世紀、アテネの彫刻家が柱頭彫刻に採用したのが始まりで〝アカンサス文様〟として長く建築や工芸品、絨緞(じゅうたん)などに使われてきた。日本の1万円札の唐草文様もアカンサスでは、との指摘が一部であるが、これは吉祥を表す「宝相華(ほうそうげ)」という想像上の植物らしい。宝相華は正倉院の御物の図柄としても採用されている。