く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「清盛・義経 ゆかりの人と伝承地」

2012年05月04日 | BOOK

【山嵜泰正著、ふたば書房】

 著者は1936年京都市生まれ。京都教育大付属高校・同大非常勤講師を兼務し、定年後、京都文教大非常勤講師も務めた。「京・嵯峨嵐山の伝承を歩く」「おもしろ鬼学」や「京都府の不思議事典」「京都の地名」シリーズ(共著)など著書も多い。初版発行は昨年11月。今年1月からのNHK大河ドラマ「平清盛」の全国放送開始にタイミングを合わせたものだろう。

   

 第1部「平清盛ゆかりの人々と伝承地」は11章から成り、まず落胤説など清盛出生の秘密に触れた後、異常な出世の裏側を紹介する。宋との貿易、大輪田泊の改修、三十三間堂造営、福原での千僧供養などを通じ着々と政治力・経済力を築いていった清盛。高倉天皇の中宮、娘徳子が懐妊したときには社寺に安産・皇子誕生の祈祷を命じたという。安徳天皇誕生に、清盛をはじめ平家一門の喜びはいかばかりだったか。だが、わずか3年後清盛は没し、さらにその3年後には壇の浦で平家は滅ぶ。

 第2部「牛若・義経の伝承」は5章構成で、弁慶伝説や源義経の愛人静御前のほか、あまり知られていない正妻などにも触れている。1部では平家一門、2部でも源氏の系譜を一人ひとり紹介しているが、平家では改めて享年の若さ(維盛27歳、資盛24歳など)が印象に残る。京都を中心に今も残るゆかりの名所や地名のいわれなども詳しく紹介しており、源平名所案内のガイド本としても重宝。

 最後に平安末期の歌人、西行の言葉を紹介している。「世の中に武者おこりて西東きたみなみ いくさならぬところなし。うちつづき人の死ぬる数きく おびただし。まこととも覚えぬ程なり。こは何事のあらそひぞや。あはれなることのさまかなと覚えて 死出(しで)の山 越ゆるたえまは あらじかし なくなる人の 数つづきつつ」。西行は平家滅亡後、平重衡の焼き打ちに遭った東大寺再興へ寄進勧進のため奥州平泉に赴いた。亡くなる4年前、69歳の時。西行は吉野の山桜の「第一の恩人」だったが、東大寺の恩人でもあった。

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