経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

7-9月期もゼロ成長の可能性

2015年08月23日 | 経済
 月曜に公表された4-6月期GDP速報は年率-1.6%、なかでも消費は「除く帰属家賃」が-3.9%と大幅に下げた。家計の所得は安定しているので、反動で7-9月期のGDPはプラスに戻るというのが、大方のエコノミストの見方である。ところが、昨日オープンになった消費総合指数の更新値を見ると、楽観できない状況に思える。まあ、今月末に出る7月の家計調査がグンと伸びてくれれば、そういう心配も消えるけれどね。

………
 消費総合指数は、更新によって平たくなった印象だ。すなわち、消費増税直後の時期が持ち上がり、反動減からの回復期が沈んだことによって、緩やかな回復と言うより、増税以来、低迷が長く続いている形になったのである。例えば、昨年6月は106.2、9月も106.2、12月は106.6、今年3月は飛び跳ねて1-3月期を高めたものの、4-6月期の最高値で、消費性向もまずまずだった5月でも106.4に過ぎない。1年も経って、わずかに+0.2だ。

 最新の6月が105.7と落ち込んだのは、たぶん「天気」のせいなのだろうが、7月以降、5月の106.4を取り戻しても、7-9月期は+0.5にとどまる。寄与度にすると+0.3だから、外需や在庫が足を引っ張れば、容易にゼロになる。7月の貿易統計は低調だったし、鉱工業の在庫水準は高く、そうなっても、まったく不思議でない。下手をすると、2期連続でマイナス成長になり、立派な景気後退となるかもしれない。

 GDPで消費の推移を見ると、2012年~2013年は毎期+0.5のトレンドで伸びていたが、消費増税後は、+0.3ペースに鈍り、この4-6月期に-0.8を記録して、ほとんどを吐き出すことになった。トレンドとの比較では、1-3月期に14兆円だったギャップが、4-6月期には、増税額の2倍を超える18兆円にも広がった。成長度合いを無視した一気増税の代償の損失は大きく、合理性に反する政策選択をしたことが分かる。

(図1) 



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 消費の低迷については、6月あるいは4-6月期は「天気」のせいかもしれないが、眺める期間を広げれば、収入の低迷であることが分かる。いつも見ている家計調査の勤労者世帯の実質実収入で既に明らかだが、金曜に毎月勤労統計の確報も出たことだし、今回は、これも見ておこう。もっとも、あえて言わずとも、お役所は、増税が原因のときは、「天気」を持ち出すのを通例としているようなのだが。

 あまり見慣れないかもしれないが、季節調整済指数で推移を示すと、下図になる。確かに、アベノミクスの「お陰」で、常用雇用は順調に伸びている。問題は、給与総額で、好調だった4,5月でも、増税直後の昨年7月すら超えていない。言うまでもないが、消費増税と円安によって押し下げられた実質賃金に至っては、増税前水準には遥かに遠く、3ポイント内外の開きがある。

 雇用増を加味した「常用雇用×実質賃金」で見ても、大きく伸びた4月に、やっと増税前の2013年平均に届いた程度で、5,6月は再び割り込んでいる。今後、常用雇用は堅調に推移すると思われるが、給与総額は4,5月が上ブレしているとも考えられる。したがって、ボーナス支給時期のズレというサンプリング問題で大きく落ちたとされる6月から、7月がどれだけ戻せるかで傾向が明らかになってこよう。

(図2) 



………
 野田民主党政権が決めたスケジュールどおりなら、中国経済が不穏な中、2期連続でマイナス成長になりかねない弱々しさで、10月からの消費税率10%に突撃するところであった。その意味で、アベノミクスは日本経済を救ったとも言えよう。しかし、再増税を先送りしただけでは、成長の推進力は足りないままだ。本田総理補佐官が言及するように、3兆円程度の補正予算は不可欠だろう。

 課題は、その使い方である。住宅着工件数は上向きなので、クラウディングアウトの心配のある公共事業の大幅な積み増しは適当とは言えまい。そうなれば、現金給付となるが、地域振興券のようなバラマキでは評判を下げるだけである。ここは、社会保険料還元型の給付つき税額控除を用いて130万円の壁を崩すといった、経済構造の不合理の解消や格差の是正と結びつけた政策がほしい。

 来夏にある参院選や衆参ダブル選の可能性を考えれば、「還付」は年度末で間に合うはずである。一過性のもので誤魔化そうとする財政当局の性癖を排し、真に骨太な方針を示す方が良い。大議論を呼び、当局などとのバトルもあり、どう決着するか分からないこと自体が政治的資源になろう。

※具体策は、今を見越して1年8か月前に記した『ニッポンの理想』を参照のこと。


(昨日の日経)
 マネー萎縮 株安連鎖、日経平均597円安、NY株一時300ドル下げ、世界景気変調を警戒。

(今日の日経)
 エコカー走行距離長く。日本の格差の実態と処方箋・貧困家庭に教育投資を、非正規の処遇の改善必要。谷も深い商品相場急落・志田富雄。「収入に満足」が2年ぶり改善。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-08-23 17:25:39
量的緩和政策が間違ってた。
日銀副総裁の岩田が2年でインフレ2パーセント達成しなければ責任とって辞めると断言したのに辞めず
小泉のいざなみ景気のように輸出数量が増えず、
国内の製造業には仕事が回らず、大手メーカーは円建て利益が増え広告を出しているマスコミに好景気と大本営発表させても現実は円安による物価高で内需
を殺し、家計から輸出大企業に所得を移転しただけでおわった

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Unknown (Unknown)
2015-08-24 05:55:38
内閣府の需給ギャップだとまだ10兆円くらいあるんじゃないでしょうか?3兆円を上回る景気対策をしてほしいです。
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Unknown (Unknown)
2015-08-24 23:06:04
アベノミクスで年金溶けちゃいましたw
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Unknown (基礎固め)
2015-08-24 23:12:53
き来ましたね、フォント本当の堀北ショック
写る移るんですよ夜夜…債権市場に
危機 か切れんか~そちもワルラスよ
時よ東京 市場 は明日も長瀬か…又又かわせ か~

、、本当に失礼しました。
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