経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・不況なのに物価高

2024年06月02日 | 経済(主なもの)
 1997年にデフレになる以前は、不況のときだって、物価も賃金も上がっていた。景気が良いはずなのに、実質マイナス成長なのは変だなどと思うのは、デフレに慣れ過ぎて、本来の不況の姿を忘れてしまっているからかもしれない。機械的に景況を表す景気動向指数は、「下方への局面変化」になっていて、5月に「下げ止まり」になるかというところだから、今は不況なのだと言っても、あながち、おかしくはない。

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 4月の商業動態・小売業は、前月比+1.3だったものの、前月の-1.4を取り戻せず、この1年、停滞が続いている。実質では、CPIの財が前月比+0.6と高かったこともあって、半分も戻せておらず、この1年は低下傾向にある。消費が名実ともに停滞しているのであれば、自動車の生産制約があるために、売るに売れないという特殊事情があるにせよ、百貨店以外は名目でも停滞しているのだから、それは不況ということになる。

 4月の鉱工業生産は、自動車が復帰しているはずなのに、前月比-0.1と予想外の低下となった。ボーイングの生産停止の影響らしいが、生産は、半導体の制約に始まって、特殊要因続きであり、特殊が常態化している。要因はともかく、じり貧だったものが、昨年秋から一段と減少傾向が強まっていて、これって不況じゃないの?ということになる。建設財に至っては、2年渡って、ひどい下がり方である。

 4月の労働力調査は、失業率は2.6%と横ばいではあったが、雇用者が前月比-4万人と2か月連続の減で、男性の停滞傾向は相変わらずながら、女性が-11万人と大きく下がった。新規求人倍率も2.17に落ち、前月の反動もあるにせよ、2022年1月以来のレベルである。業種別では、製造業と建設業では、生産が振るわないことで想像がつくように、求人数が昨年を下回り続けている。

 4月の住宅着工は、7.3万戸と4か月ぶりの上昇だった。住宅着工も、物価高が始まった2022年以来、低下傾向になっていたが、これで底入れしてくれればと思う。同様に鉱工業の建設財にも兆しは見える。こうした低下傾向からの底入れは、設備投資に結びつく資本財(除く輸送機械)にも見られ、実質輸出にもうかがわれるところだ。まさに、不況にあるがゆえに「下げ止まり」といった風情なのである。

(図) 


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 人手不足で就職には困らないし、特に若手は賃金も上がっている。それでも、出生が崩壊しているというのは、要するに不況で生活が苦しいからである。今月から物価高対応として定額減税が始まるが、本当に必要なのは、低所得者の社会保険の適用拡大と軽減だ。不況なのに物価高と思ったり、大して取ってない所得税を軽くしようとしたり、問題の本質が分かってないというのが辛いよね。


(今日までの日経)
 年金はもらえるのか「100年安心」は改革次第。老いる日本経済、今は昔の貿易大国 円の警告。社説・定額減税の押しつけで消費は目覚めるか。定額減税、実感乏しく 物価高・エネ補助終了、負担増 年収800万円超で相殺も。米消費株、インフレで低調。


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