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経済政策と社会保障を考えるコラム


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4-6月期GDP2次・景況観を変える下方修正

2019年09月15日 | 経済
 アベノミクスは、最初の1年に財政出動と金融緩和で景気を好転させたものの、2014年の消費増税で成果を失い、異次元緩和第二弾は弊害を残した。その後、消費増税の先送りで小康を保つうち、2016年後半から輸出に恵まれ、景気は上昇に向かい、2018年になって一服、2019年になると減退が始まった。そこへ消費増税となる。今後、景気は一段と悪化し、外需が不調だと更に色濃いものになるだろう。

………
 GDP4-6月期2次速報の特徴は、景況観を変えざるを得ないような設備投資の下方修正である。1次では、内需は堅調という評価であり、消費は10連休効果による偶発に過ぎないとしても、設備投資は増勢を維持しているというものだった。ところが、2次において、設備投資は、1-3月期で微減、4-6月期で微増の横バイという形に変わった。すなわち、日本経済の成長は、既に止まっているということなのである。

 生産力を増強する設備投資は、経済成長の源泉である。その設備投資は、金融政策でなく、需要を見てなされる。図で分かるように、設備投資と輸出はパラレルであり、輸出に住宅と公共の建設需要を加味したものとも、よく似ている。輸出は、早くも2018年4-6月期にピークを過ぎていたが、設備投資の増勢も10-12月期までということになり、2019年からは伸びていないことが確認された。

 今後、どうなるかと言えば、輸出は、底入れを言うには、まだ早い状況で、貿易統計の8月中下旬の前年同月比は2桁マイナスだ。消費増税後に住宅はまったく期待できず、公共は「躊躇なく」追加されるかもしれないが、それが設備投資を引き出すかは疑問だろう。そして、緩慢ながらも増加してきた消費は、増税で圧殺される予定だ。これでは、設備投資が崩れずに済めば、御の字ではないだろうか。

 現実には、足下の非製造業の設備投資には、消費増税前の駆け込みや、軽減税率とポイント還元に対応するためのシステム投資も含まれると考えられ、増税後に失速する可能性が高い。増税によって、一気に消費が1%程度も減り、民主党政権下並みのレベルまで落ちぶれるだけでなく、製造業に続いて非製造業の設備投資も崩れ、外需が停滞する中で、全面的な景気後退に見舞われる恐れがある。

(図) 


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 消費は、一進一退の状況にあり、4-6月期では「一進」が強く出た。それでも、アベノミクス開始時の2013年1-3月期を、ようやく上回る程度に過ぎない。この6年間で、輸出と設備投資を伸ばし、財政を大きく改善させたものの、国民生活を豊かにすることには、完全に失敗した。しかも、消費増税という消費を伸び難くする「構造改革」をしたために、明らかにトレンドが低下しており、10%増税となれば、更に半分になるかもしれない。

 そろそろ、どんなに金融緩和をしても、緊縮財政と組み合わせていたら、豊かになれない現実を分かってもらいたい。金融緩和は、自国通貨安で輸出を増やし、金利低下が建設投資を下支えする。しかし、輸出相手国も不況だったり、建設の先食いが過ぎたりして、これらの経路が塞がっていると、直接には設備投資を引き出せないために、何かを「躊躇なく」やったところで、まったく効果が出ない。むしろ、輸入物価高で消費を抑制し、成長の足を引っ張ることになる。

 成長回復のために、難しいことが必要なわけではない。歳出の拡大枠を、高齢化の自然増分の5000億円に限定せず、7000億円程度の新規枠を設け、少子化や非正規の対策を打てば良い。それでも、緩やかに財政再建は進む。日本は緊縮のやり過ぎで、家計への圧迫がえげつなく、成長を阻害し、人口減や貧困化で社会を蝕んでいる。その閉塞感がリフレだの、MMTだのの一点突破型の極論を生む。購買力が不足して、消費と物価と賃金が上向かないのなら、頑なな財政方針の緊縮を緩め、現実に合わすべく柔軟に調整すれば済む話である。


(今日までの日経)
 イエメン武装組織、サウジ石油施設を攻撃 無人機で。欧州中銀、量的緩和を再開 マイナス金利も深掘り。


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1 コメント

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Unknown (ちかみち)
2019-09-16 21:14:37
>国民生活を豊かにすることには、完全に失敗した。
重い言葉です。
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