経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

コレジャナイを極める「年収の壁」の政策論議

2024年11月24日 | 経済
 国民党の手取増・壁除去を巡る政策論議は、ますますコレジャナイものになってきた。地方税収が心配だと言って、単一税率の住民税を分離したら、ますます低所得への分配が不利になってしまう。そもそも、所得控除の引き上げでは、手取増は偏るし、壁除去には無意味だ。明確な代案が描けないから、間抜けな政策と批判することさえできていない。国民がかわいそうになってくるよ。

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 壁除去は、11/15に書いたように、1万円から負担を課すか、100万円を超えた1万円から課すかしかない。最低限の生計費を奪うわけにいかないから、道は後者だけだ。つまり、社会保険料に所得控除を創設するか、その代わりに給付をして相殺するかになる。こうしたやり方なら、低所得者の手取りを厚くできるし、財源も1.1兆円程で済むから、地方財政を損なって、給食無償化などの分配ができなくなるなんて話にはならない。

 専業主婦攻撃もひどい。保険料免除の3号被保険者を廃止したら、個人所得がゼロで国年を払えない人は、基礎年金は半額だ。低所得の国年免除者は、将来の貧困が問題視されており、生活保護で救わざるを得ないだろう。公平を期するとして、こういう底辺への競争をしてどうする。壁除去で低所得でも本人負担なしで厚年に加入できるようにし、できるだけ国年から救い出すというのがあるべき政策だろう。

 むろん、税財源による給付だけでなく、保険財源で低所得者の負担軽減をする道もある。国保では軽減しているから、社会保険だからできないというわけでもないし、壁除去で適用が拡大すると、厚生年金にとっては人口増加と同じだから、年金財政は楽になる。ある意味、財源なしに負担軽減もできるわけである。ゆえに、税財源で軽減しておいて、給付面で税財源を回収する方法もある。

 来年の年金改正では、想定より少子化が激化する中で、給付水準の代替率50%割れを防ぐために、どうするかが焦点になる。さっさと適用拡大をすれば良いのだが、その際、ネックになるのは、零細での低所得者の負担が重いという問題だ。前述の軽減策を取っていれば、あっさりかわせるが、そこまで誰も考えていない。コレジャナイをやった後、またぞろ議論を繰り返すのかね。

 ちゃんと制度設計をすれば、極めて経済合理的な政策が作れる。だけど、合理性の理解が難しいんだよ。だから、あーでもない、こーでもないと迷走する。プレゼン能力があるのは、財務省と厚労省だけだが、彼らのインセンティブはマイナスだ。政策提言は、OBや本コラムでもできるけれど、内容を詰めて各所に説明にあたるのは無理だ。言論だけだと、何が必要かもなかなか理解してもらえない。デマは膾炙する世の中なのにね。

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(図)


 10月の消費者物価は、前月比+0.5と相変わらず高い。それでも、名目では消費が増えているのは、再分配があってこそ。日経は経済対策を批判するが、昨年やったから、今年があるのであり、前年並みを維持しないと、来年の消費が萎えてしまう。他方、インフレで税収は伸びていて、その分、財政再建が進む。大変とされる地方財政も、税収が伸び、資金過不足では「黒字」の状況だ。財政は、「赤字は悪」の信仰からでなく、現状を把握して批評しようよ。それだから、反動で財務省攻撃みたいな言説もはやるのである。


(今日までの日経)
 上場企業が一転最高益 25年3月期、金利上昇で金融好調。経済対策、補正13.9兆円。ラピダスに税優遇 出資に伴う負担軽減。過半数の市区で税収最高 23年度、賃上げ・地価上昇映す。米中経済戦争が激化 日本への「漁夫の利」が発生。


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