経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

サルから見た消費税(1)

2012年06月11日 | 経済
 今日は日経も休みだし、何か良いネタはないかと探したところ、熊谷亮丸さんの「消費税が日本を救う」という新書があった。タイトルからして、筆者の見解とは正反対で、内容は「日経見解」の集大成のようなものである。日経プレミアシリーズだし、日経論説のエース格である滝田洋一さんも御推薦らしいから、それもうなづける。

 普段、日経を読んでいる日本のエグゼクティブには、こうした見方を自らのものとしている人が多いと思われるので、それにどんな問題があるのか、指摘するのに良い材料かと思う。熊谷さんは、消費増税先送り論者に対しては、サル呼ばわりである。確かに、理屈に耳を貸そうとしない絶対反対の論者を相手にしていれば、そうなるのかもしれないが、そんな程度の論者を打ち負かして誇っても意味がなかろう。

 筆者の見解は、「消費増税は必要だが、需要安定の重要性から、1%くらいずつ緩やかに引き上げる」というものである。これは、何も筆者独自の見解というわけではなく、古株では鈴木淑夫先生もそうだし、現役の官庁エコノミストにも、今の財政当局の一気の増税路線を危惧する人がいる。こういう現実的な論と良否を比較せねばなるまい。それに果たして耐えられるのか。

 最近の欧州の様子を見ていると、「緊縮財政こそが善」という風潮が変化してきているように思う。財政赤字の削減は必要でも、マイナス成長に落ちるようでは、市場から成長力を不安視されて、かえってリスクプレミアムが高まるし、マイナス成長では、ただでさえ脆弱になっている金融システムが持たなくなる。日本は、このまま行くと、欧州での実験の失敗が明らかになったところで、同じ轍を踏むことになりかねない。

 おそらく、これからの議論は、成長を阻害しないほどの緊縮財政がどの程度のものかという平凡なものに向かうだろう。もしかすると、米国で「財政の崖」という壮大な実験の結果も参照できるかもしれない。その点で、日本の財政当局は、早急なプライマリーバランスへの回復を至上命題としているが、既に、成長率を落としたイタリアでは、PBが黒字でも危機になることが分かった。本質は、そこではないということだ。

 財政より経済が重要で、成長を阻害してしまえば、痛みの多くもムダになるというのは、当たり前のことではある。むしろ、それにもかかわらず、共和党的な「小さな政府」のイデオロギーが信奉される理由を考えた方が早いのかもしれない。まあ、そう言って切り捨てず、この興味深い新書の論点をさらっていってみることにしよう。
………
(づづく)

※「つづく」なんて書いてしまったが、最近、疲れ気味でね、やりおおせるかな。休みやすみとなっても、お許し願いたい。

(今日の日経)
 新聞休刊日

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