経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

7-9月期GDP2次・無力な成長戦略の幻想から飛び立つ日

2022年12月11日 | 経済
 7-9月期GDPの2次速報は、1次から大きな動きはなく、消費が下方修正されて、前期比+0.1とほぼ横ばいになり、代わりに在庫の寄与度が+0.1となった。法人企業統計の結果から上方修正が期待されていた設備投資は変わらずであった。ただし、設備投資は、2021年度の年次推計値の改訂によって、水準が上昇している。これで、コロナ後のキャッチアップで見込める分が消えることとなった。

………
 かねて、本コラムでは、設備投資は需要を見てなされると指摘してきた。具体的には、輸出と住宅投資の動きで、説明ができてしまう。そうすると、今回の補正予算でも7.5兆円という多額が措置された成長戦略とは何なのかとなる。そのままGDPに計上されるだけでも、設備投資が飛び跳ねてしまいそうだが、動きは感じられない。すなわち、設備投資の促進で成長させようという戦略そのものが無力なのだ。これなら、低所得者に再分配して、消費を増やす方が効率が良い。

 下図で分かるように、輸出と住宅の重回帰の予測値は、設備投資とピッタリ重なっている。年次推計前まではギャップがあったが、今回の改訂で重なるようになった。後になって設備投資が予測値に重なって来ることは、実は、ままある。それほど、輸出と住宅、時には公共投資を加えての設備投資の予測は強力だ。成長を確保する能力増強の設備投資は、需要が見込めなければ成り立たないことを示しており、経営的には極めて常識的な出来事でしかない。むしろ、消費増税などで需要を抑制しておいて、成長戦略で設備投資だけを伸ばそうという戦略こそが幻想なのだ。

 こんな幻想の戦略の思想に、日本は、1997年の消費増税で消費を壊して以来、取り憑かれている。この時は、消費の水準を戻すのに3年かかり、2014年の8%増税では、5年かかっても戻らず、そのうちに2019年の10%増税となって、足下の7-9月期2次速報においても、8兆円もギャップがありながら、頭打ちになっている。低所得層に再分配をして消費を増やしつつ、設備投資も促進していくという、至って平凡な戦略こそが求められている。

 まして、再分配の乏しさで、低所得者の社会保険料が重く、国民年金と厚生年金で勤労者への適用が分断され、非正規に押し込めれており、人手不足でも労働力を増やせずにいるのだから、やるべき政策は、社会保険料に連動した再分配なのは明らかだろう。非正規で生活が苦しく、結婚もできず、少子化が激化して、年金の給付水準の低下は不可避の様相だが、勤労者皆保険となれば、浮上させられる。1.1兆円で難なく実現だ。

(図)


………
 でも、幻想からは覚めないだろうな。だって、25年も変えられなかったんだからね。もはや、成長戦略の下のデフレ経済は、「当たり前」になっている。負担の重さ、非正規への押し込め、若い人たちが閉塞感に苛まれ、結婚なんて贅沢品は、たぶん酸っぱいブドウだろうし、希望しないんだとなるのも無理はなく、人口崩壊は呪い呪われた未来と化してきた。YOASOBIのヒット曲『祝福』のフレーズのように、「もう呪縛は解いて、定められたフィクションから飛び出すんだ、飛び立つんだ、… この星に生まれたこと、この世界で生き続けること、その全てを愛せる様に」となる日は果たして来るのだろうか。


(今日までの日経)
 防衛財源、国債を否定。原油、需要不安で売り続く。中国、不動産支援に63兆円。防衛財源、増税で年1兆円強。GDPのコロナ前回復、従来推計より早く。11月の街角景気、4カ月ぶり悪化。米実質賃金上がらぬ理由。中国、経済減速に焦り。防衛財源を別枠管理 財務省方針。

※アベノミクスの2014年度に1兆円の法人減税をしたものを戻すわけか。それで設備投資が増えたとも言えないしね。


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1 コメント

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Unknown (チキン屋)
2022-12-16 23:04:05
橋本龍太郎の罪は重すぎると思う。近現代の日本史で最大の戦犯としか言いようが無い。
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