経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政の最新動向を把握する 2

2013年08月05日 | 経済(主なもの)
(前回からの続き) 
 今日の日経の滝田洋一さんの「核心」は好感が持てるね。安易に「消費税でも大丈夫」とせずに、きちんと計数を把握している。こうでないと議論にならない。ただし、計数の把握がまだ甘い。それでは、前回の続きとしよう。

………
 次は、「出るを計る」である。計数が複雑なので、結論を先に書くと、年度内に5兆円規模の補正予算を組んでも、歳出は前年度並みになるだけなので、消費増税のデフレ・インパクトを緩和しようと思えば、10兆円規模の補正予算が必要になる。大規模な経済対策と一気の消費増税を組み合わせるくらいなら、消費増税の上げ幅を圧縮すべきというのが、常識的な結論ではないか。

 まず、思い出してほしいのは、今年1月に、15か月予算ということで、国債を5兆円増発し、公共事業を中心に経済対策を打ったという事実だ。したがって、来年1月までに、同様に5兆円規模の補正予算を組んでも、昨年度より緊縮財政にならないだけである。おそらく、財政当局は、「補正予算で消費増税を緩和しますから心配ありません」と言ってくるだろうが、それにごまかされないことである。

 計数を確認しておくと、平成24年度の一般会計の支出済歳出額、すなわち、決算の数字は、97.1兆円である。これに対し、今年度の当初予算は92.6兆円であるから、4.5兆円足りないことになる。4.5兆円を追加した後でも、更に使われない予算が出ることは避けられないので、やはり、前年度補正予算の国債追加額である5.2兆円程度の規模は必要になる。これは、前年度補正予算10.2兆円のいわゆる「真水」=「実効ある歳出」にあたる。

 なお、念のために言っておくと、平成24年度と今年度の当初予算を比較すると、90.3兆円から92.6兆円へと増えているわけだが、これは前年度補正で措置された年金国庫負担分が当初予算に載せられただけであり、実質的に増えているわけではない。また、特会の復興費も当初予算比で0.6兆円増えているが、復興費は大量の未執行が出るため、安易にカウントしないほうが良い。

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 滝田さんは「核心」の中で、財政再建に成功した諸外国の収支の改善ペースは、年にGDP比で0.8%だったとしている。筆者も、財政再建のペースは、それ以下に抑えるべきと考える。そうすると、消費増税3%と年金カットのインパクトは、8.5兆円もあるので、先の補正予算に加え、5兆円規模の追加がほしいところだ。おそらく、滝田さんも、多くのエコノミストも、5兆円程度の補正予算で消費増税の衝撃を緩和できるとイメージしているだろうから、改めてもらわないといけない。

 そして、重要なのは、昨日、指摘したとおり、今年度の税の自然増収の見込みは4.8兆円と、世間で思われているよりも遥かに大きいことだ。これに前年度の剰余金などを足せば、7.5兆円規模の補正予算を国債の増発なしで組むことも可能だろう。問題は、消費税に自然増収を加えると、来年度の収支改善幅は、GDP比で2.5%近くにもなってしまうことにある。これでは、あまりにペースが速すぎる。 

 もっとも、こんなインパクトを経済に与えたら、企業収益が落ちて、自然増収は元の木阿弥となり、結果として、収支は改善されないことになろう。なんともバカらしい展開である。やはり、5兆円規模の今年度補正予算を組んだ上で、消費増税は1%にとどめ、自然増収を最大限に活かすべきなのだ。それでも、財政再建の目標には到達するし、むしろ、一気の増税は税収を減らし、二弾目のアップも不能にして、財政再建を遠ざけるだけである。

………
 (つづく) 
・歳出削減のポイント

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