経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政の最新動向を把握する

2013年08月04日 | 経済(主なもの)
 上場企業の経常益は41.6%増か。ありがたいことだ。円安で潤う製造業だけでなく、非製造業も26.2%増益というのも、良い知らせである。正直、アベノミクスが始まり、補正予算を決定した頃は、ここまで来れるとは思わなかった。経済が上向けば、多くの問題の出口が見えてくる。その筆頭は財政だ。最新の動向を的確に把握し、道を誤らぬようにしたい。

………
 財政の基本は、「入るを計る」ことだが、日本の財政当局は税収の過少見積りが得意である。今年度予算の税収額は43.1兆円だが、順調に成長しているのに、昨年度決算額より8000億円も少ない。つまり、企業収益が増すだけ、これに上乗せして税収は増えることになる。筆者が推計では、税収は47.9兆円に達し、4.8兆円上ブレすると予想している。

 煩瑣だが、推計方法を記しておくと、法人税は25%増、所得税はその1/3の伸びの8.3%増、消費税は実質成長率2.8%の1.25倍の増と仮定した。数字の根拠は、「25%」は証券各社の収益予想を基にし、「1/3」と「1.25」は昨年度の実績を使っている。むろん、今日の日経が報じた経常益41.6%は、「25%」の仮定を上回るものだ。ちなみに、昨年度の法人税の増加率は、一部が復興税に分離されたために、見かけ上、小さくなっており、これを修正すると11.3%増であった。

 さて、そうすると、財政再建で目標とする税収まで、あといくら必要なのか。2015年度にプライマリー・バランスの赤字半減を達成するには、「経済財政の中長期試算」(24年8月)の成長シナリオにおいては、税収を53.7兆円にすれば良いから、あと5.8兆円あれば足りる。すなわち、2014年度、2015年度における自然増収がわずかであっても、消費税を2%上げれば、概ね足りる勘定だ。上げ方は、2014年度当初に1%、2015年度半ばに2%アップということになる。

 両年度の自然増収は、2014年度1.0%、2015年度1.7%成長とすると、少なくとも、その1.25倍の伸び率として、1.6兆円にはなるだろう。また、財源としては、2015年度になくす予定の復興法人特別税を、元の法人税に戻して、8100億円を確保する選択肢もある。これは、今後の設備投資の状況を見つつ、財政再建と企業減税のどちらを優先するか考えれば良い。

 結局、税収をまじめに把握すれば、景気腰折れのリスクを犯して、一気に3%の消費増税をしなければならないとは、とても思われない。むしろ、一気の増税で成長率を落としてしまえば、企業収益が大きく失われ、せっかくの自然増収は消えてなくなる可能性が高い。それでは、一体、何のための「苦い薬」なのか。「保守的に」などと、それらしく装い、税収を過少に見積もり、焦って一気の増税に走れば、国民を苦しませるだけに終わる。

………
(つづく)

(今日の日経)
 上場企業の経常益4割増・4-6月。トヨタ・日本でこそ強くなる。国債購入は月7兆円の当初ペースに。都内ホテル稼働率が02年以来の高水準。読書・20%ドクトリン。

※不況でコストを絞り切ったところで需要が増すと、収益は大きく伸びる。ここで需要を抜けば、収益にリンクする税収も大きく落ちる。※トヨタは愚直さは立派なもの。

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