経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政の最新動向を把握する 3

2013年08月06日 | 経済(主なもの)
(前回からの続き)
 歳出の抑制と言うと、いつも、やり玉に挙げられるのは社会保障だが、これから最も重要になるのは、地方交付税交付金の削減である。交付税は2007年度から4年で2.2兆円も拡大した。これは、地方がムダ使いをしているわけではなくて、リーマン・ショック以降、地方税が大きく落ち込み、それを補填せざるを得なかったためだ。

 現在、アベノミクスによって、法人税を中心に国の税収が急増している。それは地方税にも言えることである。地方税が増えれば、交付税の補填を減らせるのだから、国の歳出を削ることができる。それは、痛みを伴う社会保障の抑制より、遥かに容易なことだ。もっとも、地方についても、高齢化に伴う歳出の自然増は認める必要はあるにしても。

 それでは、地方税はどのくらい増えるのか。大まかな計算だが、今年度は、当初の地方財政計画を7000億円ほど上回るのではないかと見ている。また、このまま好調に推移すれば、来年度は、更に2.5兆円は増収が見込める。財政当局は、社会保障の自然増が毎年1兆円あるとして危機感を煽るが、それを十分に吸収できるほど、交付税の削減余地は出てくるのである。

 改めて言うが、歳出の削減について、厳しく査定してムダを無くせばできると思うなら、それは幻想だ。成長を通じて、歳出の「必要性」を減らすことこそ重要である。交付税の補填だけではない。成長を果たせば、生活保護や雇用対策の経費は少なくて済み、企業活動が盛んになれば、産業政策の経費も省ける。

 一気の消費増税をして、成長をぶち壊してしまえば、消費税収だけは増えるように見えるが、実際は各種の経費を増やさざるを得なくなって、それさえも流出することになってしまう。小役人が企むような「増税と査定で財政再建を果たせる」といった了見の狭い考え方に決して陥ってはならない。

………
 3回に渡って書いてきたが、今ほど、最新の動向を把握し、大局的な判断する必要性に迫られている時はない。そのために必要な最低限の情報の提供を試みたつもりだ。本来であれば、こういうことは、経済財政諮問会議などが果たすべきものであって、筆者のような者が老眼を押して執筆するようなものではあるまい。

 現在の法人税の急増や、今後の地方事業税の急伸は、長い不況の中で、社員が身を削って固定費を下げて来たところに、需要が満ちだして、ようやく得られたものである。企業収益は株主のものとはしても、せめて、税収増を還元し、消費増税を緩やかすることで、これまでの国民の労苦に報いるべきではないか。それは政治が果たすべき役割である。

(今日の日経)
 東芝が半導体新工場、三重に4000億円。国内設備投資10.3%増、非製造業22年ぶり高水準。社会保障国民会議最終報告。政府税調が見直し論けん制。米原発に経済性の壁。太陽電池2015年以降に20円台前半。経済教室・原子炉減少・橘川武郎。

※kitaAlpsさん、コメントありがとう。今日の日経でも、1997年は金融破綻が理由とする吉川洋先生の弁が載っているが、経済指標を丁寧にさらえば、そうでないと分るのにね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 財政の最新動向を把握する 2 | トップ | 8/7の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済(主なもの)」カテゴリの最新記事