経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

対策も虚しく消費増税で1.8%の減少

2020年03月08日 | 経済
 週末に1月のCTIマクロが公表され、実質で前月比+0.7であった。6~8月と11~1月の平均の差は-1.8であり、ちょうど、2%消費増税から食料品の軽減税率を抜いたくらいだ。あれこれ対策もしたけれど、国民は、増税されれば消費を減らすという、ある意味、常識的な行動を取ったことになる。問題は、どうして、消費を減らす政策をしているかだ。増税したら消費は減るという「峻厳なリアリズム」が欠けているのである。

………
 1月のCTIマクロの実質は、前期比も+0.7だった。この動きからすると、GDPに近い消費総合指数は、反動減が小さく出ているので、1月の前期比は、ほぼゼロくらいだろう。駆け込みの反動減で10-12月期が急減したにもかかわらず、1-3月期もゼロ成長というのは、非常に沈滞した状況だ。この1月の水準が増税後の消費のベースになり、これを更にコロナ・ショックが下押しすることになる。

 消費の減少ぶりは、家計調査では、もっと強く出ている。二人以上世帯の消費支出は、前年同月比の3か月後方移動平均が、 6~8月で+1.4だったのに、11~1月では-3.6にまで落ちている。また、消費を裏打ちする勤労者世帯の実質実収入を、同じ移動平均で見ると、6~8月で+1.3だったものが11~1月には-0.1になっており、単に、消費者心理が委縮しただけではないこともうかがわれる。

 他方、1月の景気動向指数は、悪化が6か月続き、リーマンショック以来の長さとなった。悪化は、これからコロナショックで長引いて、リーマンショックの11か月に近づいて行くことになる。先行、一致、遅行の3指数ともに、3か月移動平均が下がりっぱなしであり、未だ底が見えない。消費増税+コロナショック=リーマンシッョクになるという、何とも、やるかたない展開になっている。

(図)


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 財政赤字が不安だから、緊縮や増税に走ってしまう。しかし、それをやれば、成長と消費は打撃を受ける。その現実を直視し、不安を我慢しなければならない。これが峻厳なリアリズムである。その対極にあるのが「先手論」だ。近代政治史において、近衛文麿は、大衆に迎合する「先手」を打ち、戦争に至る道を抜き差しならないものにした。現実の困難さを認め、国民へ不安に耐えることを説くのも政治なのである。

 コロナシッョクでは、モノ不足が起こるなど国民の不安が高まっている。他方で、マスクにせよ、PCR検査にせよ、安心のための供給力には限界がある現実は認めなければならない。国民の要望に応える姿勢を示すだけでなく、この部分は耐えてほしい、控えてほしいと説かなければ、限られた保健や医療の資源を有効に使うことができなくなり、被害を大きくしてしまう。ここがリアリズムの本当に厳しいところである。

 先を読んで手を打つことに比べ、現実に即して手を打つリアリズムは、出来そうに見えて、難しい。認めたくない現実も受け入れなければならないし、それに耐えることも必要とされるからである。増税すれば消費が減るという現実を認められないから、行き先だけを示し、あらゆる対策を総動員して、とくかくやるという政治になってしまう。手持ちの戦力に応じて最善を考えるようにはならないのである。


(今日までの日経)
 都心の人出、大幅減。中国貿易、1~2月輸出17%減。景気指数「悪化」6カ月連続。中韓から入国、2週間待機 新型コロナ。公共事業、人材難で滞る 入札不成立、4年連続増加へ。


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