いまや一番重要な指標になってしまった商業動態・小売業の1月は、前月比+0.6、前期とは+0.7で順調だった。もっとも、実質では、CPI・財の前月比が12月+1.3、1月+1.2と物価高が凄まじかったために、大きく低下している。ようやく、利上げで円安が是正に向かっているものの、物価に表れるのは、もう少し先だ。それでも名目が伸びているのは、物価高に耐える力をまだ持っているということでもある。
鉱工業生産の1月は前月比-1.1だった。2,3月の予測で伸ばすと、1-3月期は前期比+0.7となり、久方ぶりの2期連続増となる。一進一退の状況に変わりがないが、ベースが少しでも上向いてくれれば十分だ。財別では、資本財(除く輸送機械)は1-3月期が前期比-4.8とマイナスで、完全に一進一退で、建設財も-1.1と同様である。他方、消費財は+3.2となっていて、連続でのプラスが望めそうになっている。
(図)
………
12月の人口動態速報で、2024年の出生は前年比-5.0%の72.1万人と判明した。-5%が3年連続という少子化にも程がある物凄い低下で、同じ少子化でも厳しさの面構えが違う。合計特殊出生率は、おそらく1.15人で、また-0.05も下がる。2024年の婚姻はようやく底入れしたものの、出生の底入れには1年位はタイムラグがあるので、2025年は1.1人までいくだろう。子世代が親世代の半分になるわけで、支える負担は倍増だから、今30歳前後の人の老後は相当に厳しくなる。そもそも、この激しさでは、国の存続が危い。
日経は、少子化の背景の婚姻の少なさは価値観の変化としているけど、2022年にちょっと増加して、2023年に大きく下がり、2024年に戻したという経過からすると、物価高の生活の苦しさが大きいと思う。結婚は一定の所得があればできるので、ボーダーにいる人が脱落することで減ってしまう。少子化対策は、ボーダーの人をターゲットにしないと意味がない。結婚できている人に児童手当を増やしても効果が薄いのは当然だ。
「年収の壁」対応の所得控除拡大で1.2兆円の減税をするらしいが、これだけあれば、低所得者の社会保険料を半減でき、手取を増やして、壁を除去した上、一気に適用拡大ができ、年金の給付水準も向上させられる。そもそも、所得税に本物の壁はないのだから、お笑い種でしかない。また、厚労省は壁対応で補助金を入れるらしいが、そんな余裕があるなら、非正規への育児休業給付の差別撤廃が先だろう。
どうして、こうも的外れな方に思い切りが良いのかね。生活の苦しさ、結婚の難しさから、国民が手取増を願うのは正しい。しかし、その本質がどこにあり、何が解決につながるかを考究するのは政治の役割だ。受け狙いの思いつきに対する場当たりの調整では、とても正解にたどり着けない。与党は、目先の乗り切りに気を取られ、給付つき税額控除のような正しい政策を次の参院選で掲げられなければ、とにかく負担減の野党にまたやられるだろう。役所の枠を超える戦略を選べず彷徨うのは、この国の宿痾であるにせよ。
(今日までの日経)
昨年の出生数最少72万人 社会保障、現役世代に負担 少子化、政府想定超す。「異次元の少子化対策」初年度は不発。昨年の婚姻数、戦後2番目の少なさ コロナ禍減少分が戻らず 単身定着、価値観変化か。社会保険料の肩代わり、企業に8割→全額還付。政府・与党、高額療養費上げ延期を検討。年収の壁160万円になると…納税者の多くは2万円減税。与党「年収の壁」160万円に 国民民主、賛成せず 所得税1兆2000億円減。強い米景気に陰り、円高圧力に 148円台。れいわ、本社世論調査で維新に並び6%。