“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●JAEAなど、スピン流を介した流体発電現象の大幅な発電効率向上を実現し新たなナノ流体デバイスへ道

2020-06-25 10:09:15 |    電気・電子工学

 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業において、ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクトの髙橋 遼 研究協力員(研究開始時 日本原子力研究開発機構 博士研究員、現 お茶の水女子大学 助教)、中堂 博之 サブグループリーダー(日本原子力研究開発機構 副主任研究員)、松尾 衛 グループリーダー(研究開始時 日本原子力研究開発機構 副主任研究員、現 中国科学院大学 准教授)、前川 禎通 グループリーダー(理化学研究所 上級研究員)、齊藤 英治 研究総括(東京大学 教授)らは、電子の自転の流れであるスピン流を介した流体発電現象のマイクロメートルスケールの微細流路における特性を解明し、微細になるほど発電効率が飛躍的に向上することを発見した。

 微細流路で流れは層流と呼ばれる状態になり、微小な渦のような液体運動が流路全域に広くなだらかに分布する。このことが、より微細化に適した特性と発電効率の増大につながっている。

 スピン流を介した流体発電現象の基礎理論は松尾グループリーダーらが2017年に予言しており、同研究ではこの流体発電現象の実験的実証を層流領域において実現した。実験の結果、層流領域では発電効率がおよそ10万倍向上することが確認された。

 同研究成果により、スピン流を介した流体発電現象は微細化により特性が大きく向上することが示唆される。また、流路の内部および外部に付加装置を必要としない。このため、スピントロニクス技術を取り入れたナノ流体デバイスや微細な流れを用いた流速計などに応用できると期待される。(日本原子力研究開発機構<JAEA>)

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「AWS認定ソリューションアーキテクト」(平山 毅著・監修/リックテレコム)

2020-06-25 10:08:42 |    情報工学

 

<新刊情報>

 

書名:AWS認定ソリューションアーキテクト~プロフェッショナル~試験特性から導き出した演習問題と詳細解説~
 
著者・監修:平山 毅

監修:堀内康弘、福垣内孝造

著者:岡 智也、新村俊介、岡崎靖浩、池田 大、澤田拓也、津山晃一、鳥谷部昭寛、早川 愛

 同書書は、AWS(Amazon Web Services )認定ソリューションアーキテクト-プロフェッショナル試験対策の問題集。プロフェッショナル試験では、具体的な業務要件や課題をもとにしたケース問題が長文で出題される。試験時間も長く、知識だけではなく思考力や応用力が求められる。合格するためには、問題に示されたシナリオを熟読したうえで最適な答えを導き出す訓練が必要不可欠。同書は、このような試験の特徴を踏まえて演習問題とその解説に重点を置き、総仕上げとして模擬試験を掲載。さらに、AWSのサービス・機能を概説するとともに、出題されるシナリオの特性をしっかり解説。確かな実力が身に付く1冊。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「科学技術の失敗から学ぶということ」(寿楽浩太著/オーム社)

2020-06-24 09:35:24 |    科学技術全般

 

<新刊情報>

 

書名:科学技術の失敗から学ぶということ~リスクとレジリエンスの時代に向けて~ 
 
著者:寿楽浩太

発行:オーム社

 本当に科学技術の失敗から学べているのか。もしうまくいっていない部分があるとしたらそれはなぜなのか。そういう問題点を乗り越える方法はないのか。科学技術の社会学を専門とする筆者は、工学と社会科学の間を往来しながら、工科系の大学の授業で、そうした問いに取り組んできた。同書はその経験を踏まえて、現実に起きた事件を通して、これらの問いについてできるだけ平易に、しかし同時に深く考え、答えを試みようとするもの。 「覆水盆に返らず」起こってしまった結果から未来を考えよう。

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●科学技術ニュース●スーパーコンピュータ「富岳」、第58回「TOP500リスト」で第1位を獲得

2020-06-24 09:34:50 |    情報工学

 理化学研究所(理研)と富士通が共同で開発しているスーパーコンピュータ「富岳」は、世界のスーパーコンピュータの性能ランキングである第58回「TOP500リスト」で第1位を獲得した。

 また産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法 の処理速度の国際的なランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、さらに人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-AI」においても、それぞれ世界第1位を獲得した。

 これら3部門での第1位獲得は、「富岳」の総合的な性能の高さを示すものであり、新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety5.0において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発および情報の流通・処理に関する技術開発を加速するための情報基盤技術として、「富岳」が十分に対応可能であることを実証するもの。(富士通)

<「富岳」測定結果>

【TOP500】 

 今回、TOP500リストに登録した「富岳」のシステムは、396筐体(152,064ノード、全体の約95.6%)の構成で、ランキングの指標となるLINPACK性能は415.53PFLOPS、実行効率は80.87%。日本のスーパーコンピュータがTOP500で第1位を獲得するのは、「京」による2011年11月(第38回「TOP500リスト」)以来となる。

 2020年6月時点の「TOP500」のランキング第2位は、米国の「Summit」で、測定結果は148.6PFLOPS。すなわち、第2位とは約2.8倍の性能差となる。

【HPCG】 

 HPCGの測定には「富岳」の360筐体(138,240ノード、全体の約87%)を用い、13,400TFLOPSという高いベンチマークのスコアを達成した。これは「富岳」が、産業利用など実際のアプリケーションを非常に効率よく処理し、高い性能を発揮することを証明している。

 2020年6月時点の「HPCG」のランキング第2位は、米国の「Summit」で、測定結果は2,925.75TFLOPS。すなわち、第2位とは約4.6倍の性能差となる。

【HPL-AI】 

 HPL-AIは、これまで倍精度演算器の能力を測定してきたTOP500やHPCGなどと異なり、人工知能計算などで活用されている単精度や半精度演算器などの能力も加味した計算性能を評価する指標として、2019年11月に制定された新たなベンチマーク。この測定には、「富岳」が持つ330筐体(126,720ノード、全体の約79.7%)を用いて1.421EFLOPSという高いスコアを記録した。

 この記録は、世界で初めてHPL系ベンチマークで1エクサ(10の18乗)を達成した歴史的な快挙でもある。「富岳」の高い性能を証明するとともに、人工知能計算やビッグデータ解析の研究基盤として、Society5.0社会の推進に大いに貢献し得ることを示している。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「C言語ではじめる Raspberry Pi 徹底入門」(菊池達也著/技術評論社)

2020-06-24 09:34:12 |    情報工学

 

<新刊情報>

 

書名:C言語ではじめる Raspberry Pi 徹底入門

監修:実践教育訓練学会

著者:菊池達也

発行:技術評論社
 
 国内の理工系教育現場におけるプログラミング導入教育では、現在でもC言語が多く採用されている。また、組込み系の開発現場でもC言語は現役。同書は、そのような環境に身をおく人のための、Raspberry Piによる電子工作の解説書。OSやプログラム開発環境のセットアップからGPIO、カメラモジュールなど各種制御方法、さらに自走ロボットのアクチュエータ制御まで、電子工作に必要なポイントをやさしく説明している。必要なパーツの型番も記載しているので、自作しながら読み進められる。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「人類対新型ウイルス」(トム・クイン、塚崎 朝子著/朝日新聞出版)

2020-06-23 09:37:38 |    生物・医学

 

<新刊情報>

 

書名:人類対新型ウイルス~私たちはこうしてコロナに勝つ~

著者:トム・クイン、塚崎 朝子

訳者:山田 美明、荒川 邦子 

発行:朝日新聞出版(朝日新書)

 新型コロナウイルスによるパンデミックは一体どうなるのか。治療薬、ワクチン開発の見通しは?集団抗体は?人類は有史以来、未知のウイルスとの戦いを繰り返してきた。1世紀前のスペイン風邪では世界中で5000万人以上の死者を出したとも。英国人ジャーナリスト・社会史家の著者は近代以降のウイルスとの攻防をつぶさに検証し、今日のパンデミックを予想していた。本書は「予言の書」。

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◆科学技術<テレビ番組情報>◆NHK「サイエンスZERO」/BSフジ「ガリレオX」他

2020-06-23 09:37:07 |    ◆TV番組◆

 

<テレビ番組情報>
 
 

NHK-BSプレミアム  コズミックフロント☆NEXT  毎週木曜日 午後10時~11時00分

6月25日(木) 旅する宇宙 メキシコ

 歌手・荻野目洋子さんが宇宙の神秘を求めてメキシコの旅へ。国立人類学博物館では、正確な太陽観測を行い独自の暦を生み出したマヤ文明、太陽神を崇拝し心臓をささげていたアステカ文明に触れる。テオティワカン遺跡や近代天文学発祥の地・チャプルテペック城などの名所を巡りながら、目指すは標高4600mの高地にある最先端の電波望遠鏡だ。陽気なメキシコ人と交流しつつ素敵な歌も披露。特別な旅を通じて天文学の原点に迫る。 
 
NHK‐Eテレ 地球ドラマチック   毎週土曜日 午後7時~7時44分

6月27日(土) 大人になったらやりたいこと~チョコレート店でお仕事体験~
 
 子どもたちがプロの仕事に挑戦する、イギリス発の社会実験番組。集められた子どもたちは、性格も、育った環境も異なる、個性的な6人。彼らに与えられたミッションは、チョコレート店でのお仕事。父の日用のギフトの商品化に向けて、チョコレートの製造から、パッケージのデザインまで手がけるのだ。反発しあいながらも、お互いの違いを乗り越えて協力し、無事商品を店頭に届けられるか!?(イギリス2018年)

BSフジ ガリレオX 毎週日曜日 午前11:30~12:00分(隔週新作) 

6月28日(日) 磁力が拓く世界

 人類が鉄を引き付ける不思議な石「磁石」と出合ったのは、一説では紀元前の古代ギリシアと言われている。ただの不思議な石でしかなかった磁石は、その後羅針盤として利用されたことで大航海時代をもたらした。そして磁石の持つ力「磁力」と電気との関係が解明されたことで電磁石が発明され、今日に至る電子機器やコンピュータの技術進歩に大きな影響を与えた。そして今、磁力活用の研究開発が更に進み、超精密な制御が可能な画期的な技術が生み出されているという。磁石に始まる人類の磁力の利用の歴史を振り返りながら、今まさに進む磁力の最新研究を探る。

主な取材先:帆船日本丸     
      ミネベアミツミ

NHK‐Eテレ  サイエンスZERO    毎週日曜日 午後11時30分~0時00分

6月28日(日)  日本の“お家芸”サンプルリターン 世界初!火星の月探査へ(アンコール放送)

 世界の宇宙探査をリードする日本の“お家芸”「サンプルリターン」。はやぶさ2の成果に続き、新たな研究開発が進む。それが「MMX(Martian Moons eXploration)」。目指すは「火星の月」だ。2020年代半ばに探査機打ち上げを目指し検討が進む。戻ってくるサンプルからは、太陽系の成り立ちや、生命の起源に迫る情報がもたらされるかもしれない。次世代宇宙探査の詳細に迫る。

ゲスト:北海道大学教授…倉本圭,
    JAXA 宇宙航空研究開発機構 教授…川勝康弘

司会:小島瑠璃子、森田洋平

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「相対論と宇宙の事典 」(安東正樹、白水徹也編集幹事/朝倉書店)

2020-06-23 09:36:39 |    宇宙・地球

 

<新刊情報>

 

書名:相対論と宇宙の事典 

編集幹事:安東正樹、白水徹也

編者:浅田秀樹、石橋明浩、小林努、真貝寿明、早田次郎、谷口敬介

発行:朝倉書店

 誕生から100年あまりをすぎ、重力波の観測を受け、さらなる発展と応用の期待される相対論。その理論と実験・観測の両面から重要項目約100を取り上げた事典。各項目2~4頁の読み切り形式で、専門外でもわかりやすく紹介。相対論に関心のあるすべての人へ。歴史的なトピックなどを扱ったコラムも充実。〔内容〕特殊相対性理論/一般相対性理論/ブラックホール/天体物理学/相対論的効果の観測・検証/重力波の観測/宇宙論・宇宙の大規模構造/アインシュタインを超えて

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「あなたの会社もブロックチェーンを始めませんか?」(日本アイ・ビー・エム株式会社ブロックチェーンチーム編/中央経済社)

2020-06-22 09:38:32 |    情報工学

 

<新刊情報>

 

書名:あなたの会社もブロックチェーンを始めませんか?

編者:日本アイ・ビー・エム株式会社ブロックチェーンチーム

発行:中央経済社
 
 ブロックチェーン・ビジネスの最前線に立つコンサルタント等が、自らが推進する国内外のプロジェクトの詳細や知見を盛り込んだ決定版。実際に活用される17の事例を紹介。

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●科学技術ニュース●岐阜大学、ソフトバンクとNICT、Beyond 5G/6Gに向けたテラヘルツ無線通信用のアンテナの開発に成功

2020-06-22 09:37:48 |    通信工学

 岐阜大学、ソフトバンク、情報通信研究機構(NICT)、National Research Tomsk State UniversityおよびTomsk Polytechnic Universityの研究グループは、Beyond 5G/6G時代を見据え、300GHz帯テラヘルツ無線(テラヘルツ無線)で動作する超小型アンテナの開発に成功した。

 近年、無線通信の高速化・大容量化の要求によって、100Gbps以上の伝送速度を実現するBeyond 5G/6G技術に関する研究開発が世界的に開始されつつある。

 テラヘルツ無線は、5Gで利用されるミリ波帯と比べて、より広い周波数帯域が利用可能なため、超高速無線システムの候補として期待されている。

 一方で、テラヘルツ無線の周波数は伝搬損失が大きく、実用化するには利得の高いアンテナの開発が必須となる。アンテナの寸法を大きくすることで利得は向上するが、スマートフォンなどへの実装を考えると、小型で利得の高いアンテナの開発が必要不可欠であり、サイズと利得の両立が課題とされていた。

 今回、同研究グループは、無線信号波長(約1mm)と同程度の大きさの直方体型誘電材料を使用することで発生するフォトニックジェット効果に着目して、小型アンテナの開発に応用した。

 開発したアンテナは、利得を約15dBi(シミュレーション値)と大きく保ったまま、無線信号波長と同程度の1.36 mm×1.36 mm×1.72 mmというサイズ(開口面積:1.8 mm2)を実現した。

 アンテナの開発に加えて、現在開発が進められているテラヘルツ無線に対応するトランシーバーの出力パワーと受信感度の性能が向上することで、テラヘルツ無線通信技術の実用可能性が広がる。

 今後は、テラヘルツ無線伝送システムに超小型アンテナを適用して、無線送受信機の実現可能性を調査する。無線信号波長と同サイズの小型化アンテナの実現によって、テラヘルツ無線で動作する集積回路への実装を可能にし、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に貢献することが期待される。(情報通信研究機構<NICT>)

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