科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業において、ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクトの髙橋 遼 研究協力員(研究開始時 日本原子力研究開発機構 博士研究員、現 お茶の水女子大学 助教)、中堂 博之 サブグループリーダー(日本原子力研究開発機構 副主任研究員)、松尾 衛 グループリーダー(研究開始時 日本原子力研究開発機構 副主任研究員、現 中国科学院大学 准教授)、前川 禎通 グループリーダー(理化学研究所 上級研究員)、齊藤 英治 研究総括(東京大学 教授)らは、電子の自転の流れであるスピン流を介した流体発電現象のマイクロメートルスケールの微細流路における特性を解明し、微細になるほど発電効率が飛躍的に向上することを発見した。
微細流路で流れは層流と呼ばれる状態になり、微小な渦のような液体運動が流路全域に広くなだらかに分布する。このことが、より微細化に適した特性と発電効率の増大につながっている。
スピン流を介した流体発電現象の基礎理論は松尾グループリーダーらが2017年に予言しており、同研究ではこの流体発電現象の実験的実証を層流領域において実現した。実験の結果、層流領域では発電効率がおよそ10万倍向上することが確認された。
同研究成果により、スピン流を介した流体発電現象は微細化により特性が大きく向上することが示唆される。また、流路の内部および外部に付加装置を必要としない。このため、スピントロニクス技術を取り入れたナノ流体デバイスや微細な流れを用いた流速計などに応用できると期待される。(日本原子力研究開発機構<JAEA>)