JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

EHアンテナ試行錯誤

2008年10月25日 | EHアンテナ
 当局は、仙台で開局しているアパマンハムです。2008年9月初旬に、エフアールラジオラボより7MHz用耐入力200WタイプのEHアンテナ(以下EHと略)を購入。購入動機は、小さく目立たないこととアースが不要の2点です。アパマンハムにとって重要な要素を兼ね備えているのがこのアンテナと考えました。現在も試行錯誤の最中ですが、これまでの経験をまとめてみました。

設営環境は、マンション4階で、南向きベランダからの運用です。地上高は約11メートルとなります。リグは、ヤエススタンダードFT450、50W送信。人工アースとしてクラニシのVC519をリグに接続しています。



 さっそくEHを試してみようと思い、ベランダに設置してあったモービルホイップ(コメットのブロードバンドアンテナHA750BL)を取り外し、MP-MPコネクタにてモービル基台に垂直設置してみました。ケーブルは8DーFB5メートルで、シャックに引き込んでいます。この状態で、SWRは4.0前後を示して、使用不可でした。受信の方もブロードバンドアンテナ同等かそれ以下でよろしくありません。かなり暗い気持ちになりました。
 エフアールラジオラボにメールを送ったところ、同軸ケーブル5メートルではマッチングが難しい、最低でも10メートルあった方がよいとの回答をいただきました。また、あまりにも安易な取付け方を反省し、1メートルのアルミポールに附属の取り付け金具と樹脂バンドで固定し、今度は、ベランダから突き出すように水平に設置してみました。同軸ケーブルも新たに購入し、5Dー2V10メートルとしました。同軸ケーブルをベランダ内でゆったり引き回し、掃出し窓から室内に引き込んで、とりあえず、リグに接続してみました。SWRは2.0前後まで下がりました。しかし、相変わらず受信がよろしくありません。弱々しい蚊の鳴くような変調しか聞こえてこないのです。またまた暗い気持ちになりましたが、SWRが下がってきましたので、一縷の望みもでてきました。 
 当面、この状態から試験的に使ってみようと思い、いったんケーブルを外し、今度は、窓からではなく、他のケーブル同様にエアコン用の穴から引き込み、本格的に設置することにしました。その際、10メートのケーブルをベランダにはわせておくわけにもいかないので(当局の環境では、ケーブルは4メートルあれば充分なのです)、約半分の5メートル程度を直径40センチの「とぐろ巻き」にしてベランダに置き、邪魔にならないようにして、シャックに引き込みました。したがって、アンテナ給電部から3メートル程度が直線のケーブル→5メートルをとぐろ巻き→2メートルで室内に引き込みトランシーバーに接続、こんな感じで設置してみました。この状態にしたところ、驚いたことに、受信レベルが劇的に改善しました。同じアンテナとは思えない豹変ぶりに本当に驚きました。41くらいだった信号が57まで上がりました。同時にノイズレベルも上がりましたが、了解度は、先ほどの状態とは雲泥の差で改善しました。
 SWRも2弱まで下がり、なんとか送信もできそうなレベルになったので、CQを出している4エリア局にさっそく応答してみたところ、お互い59で初交信に成功しました。

 ここまでが第一段階です。この時点で考えたことは、
 1)ベランダ手すりからアンテナ先端まで約1メートル程「水平」に突き出したことが良い結果につながったと思われること
 2)同軸ケーブルの長さは最低10メートル(1/4波長)必要なこと
 3)ケーブルの引き回し方が送信(SWR)にも受信にも大きく影響するアンテナであること、 
 4)エフアールラジオラボの説明では、同軸ケーブルをベランダでとぐろ巻きなどにせず、ゆったりと這わすようにとのことであったが、どくろ巻きにして地面(コンクリート)に置いた方が良い結果になることもあること、などです。

 しばらく、この状態でブロードバンドアンテナと比較しながら使いましたが、全エリアと交信できました。ブロードバンドアンテナとの比較でしかありませんが、受信はすばらしいです。ブロードバンドアンテナで信号強度2程度のものが9まで上がります。送信は、ある局にお願いして、ブロードバンドアンテナで交信してからEHに切り替えてレポートをいただきましたが、はるかにEHの方が強く入感しているとのことでした。これまでブロードバンドアンテナですと、41とか47などのレポートを多くいただくのですが、EHでは59のレポートが断然多くなりました。一方、かなり強く入感している局を呼んでもとっていただけないことが度々あるのも事実です。また、信号が「弱いです」と言われることもあります。50W出力の限界なのかもしれません。

 ここからが第二段階ですが、なんとか、もう少しSWRを下げて、効率をよくできないかと試行錯誤が始まりました。いろいろなことを試した結果、現在は、バンド内はすべてSWR2.0以内、7.0300MHz~7.0700 MHzが1.5以内、共振点においては1.1と良好な状態に調整することができました。以下、試行錯誤の経過です。
 1)とぐろ巻きしたケーブルの下に50センチ四方のアルミ板を敷いてみました。アルミ板の敷き方、つまりとぐろ巻きの全面に敷くのか、一部に敷くのかによって、SWRが大きく変わることがわかりました。そしてついに、7.0800MHzあたりでSWRが1.1に落ちるところを見つけました。後は、EHの方の周波数調整棒を廻して、7.0500に共振点を下げ、ベタ落ちにすることができました。これで解決と大喜びしたのですが、ノイズがすごいのです。信号は強力に入感しますが、ザーというノイズが大きく、了解できないという状態になってしまいました。これでは意味がないと思い、アルミ板は取り外しました。この経験で、?このアンテナのSWRは工夫すれば1.1まで下がるのだということ、?そのポイントはケーブルにあるということ、?ケーブルに金属を触れさせると極端にノイズを拾うということ、がわかりました。ラボの説明では、ケーブルをベランダ手すりや金属マストに密着させることが推奨されていますが、結果は逆でした。ノイズを拾うので、このアンテナのケーブルには金属接触は御法度です。なるべく接触しないように設置した方がよい結果が得られました。
 2)エフアールラジオラボでは、ケーブルを地中に埋めることで改善すると説明されていることから、ベランダ内でこれに似た環境を作れないかと模索しました。ケーブルをコンクリートに密着させればよいと考え、とぐろ巻き部分の上に、重しとして、本(CQ誌5冊を箱に詰め込んだもの)を乗せてみました。その結果、SWRは0.2程度下がりました。これは成功でした。味をしめてベランダ内の直線部分のケーブルにも同様に本を置いてみましたが、かえってSWRが上がってしまいました。微妙です。現在は、とぐろ巻き部分にのみ、上記の本をそのまま置いています。試してはいませんが、レンガやコンクリートブロック、水の入ったペットボトルを置いてみるのも効果があるかもしれません。ただし、1)に記したとおり、鉄板など金属製のものは御法度です。

 3)アンテナ給電部から50センチくらいのところで、ケーブルを直径15センチで1ループさせてみました。これもループの直径をいろいろと試したところ、SWRが変化することがわかりました。当局の環境では、15センチ程度がもっとも低くなりました。

 4)エフアールラジオラボで推奨しているとおり、ACラインフィルタを取付けました(コトヴェール コモンモードフィルターSFU-005-3P)。パッチンコアも多数取付けてみました。この結果、SWRがやっと1.5以下に下がりました。ノイズも低くなり、ブロードバンドアンテナと比べて、ノイズが同等、信号強度は格段に強くなりましたので、了解度も上がりました。

 5)電源関係のケーブル類にパッチンコアを取付けている時に、ふと、同軸ケーブルにこれを付けてみたらどうかという考えが浮かび、5D2Vにぴったり密着する太さのパッチンコアを10個程買い込んで、取付けてみました。その結果、同軸ケーブルのどの部分に取付けるかによって、SWRが大きく変わることを発見しました。上がるところもあれば、下がるところもあります。いろいろな場所に試してみた結果、アンテナ給電部から50センチ程度のところ(1ループさせたケーブル部分の手前)に1個のみコア取付けると最もSWRが下がることが確認できました。さらに、アンテナとトランシーバーの間にSWR計を入れていますが、その間の接続ケーブルにも、両端に3個づつ計6個のパッチンコアを入れるとさらにSWRが下がって、共振点では1.1となりました。この接続ケーブルの6個のコアの位置を動かしたり、コアの数を調整することで、SWR1.5以内の周波数範囲が微妙に変わるようです。  


 以上のような経過をたどり、現在は、冒頭に記したように良好に作動しています。このアンテナの設置で重要な点を私なりにまとめてみますと、以下のように考えます。
1)同軸ケーブルは5D2V最低10メートル(1/4波長以上)必要
2)このアンテナの同軸ケーブルはアンテナエレメントそのものであると考え、マスト、手すりなど金属に接触させるべきでない。特に給電部から2メートル程度はマストなどに接触させず、空中にあった方がよい。どうしても固定が必要なときは、プラスティックや木材で支える。
3)同軸ケーブルはベランダ床のコンクリートに密着させると安定する。一部とぐろ巻きでもよい。
4)ACラインフィルタを入れることでSWRとノイズレベルが下がる。
5)同軸ケーブルにパッチンコアをはさむことでSWRが下げられる。給電部から50センチ付近で試してみる価値はある。

 このような状態で、現在も試行錯誤を続けていますが、使用感としては、受信は優れている、送信は受信程ではない、聞こえていても応答いただけないケースはかなりある(50W)、しかし、ブロードバンドアンテナと比べると送受信とも格段に良い、というのが実感です。このアンテナは、広い敷地で開局されている場合は、導入する程の価値はないと思います。アパマンハムにとっては、小さくコンパクト、アース不要、送受信性能もまずまず、などから、たいへん有効なアンテナで、導入の価値があると思います。移動運用の場合は、設置環境や同軸ケーブルの引き回し方などで大きく性能が変わってしまう性格を持つアンテナであり、「不適」と思われます。モービルの場合は、アースが取れるので、あえてEHを使う程の価値はないと思います。

 現在の課題としては、このアンテナは、共振点の変動があり、7.02から7.06の間で上限まで上がると下がり出し、下限まで下がると上がり出すという現象があります。7.0500あたりで完璧にSWRを調整したはずなのに、翌日に計ると上がっていたりします。現象として現れるのはSWRの上下ですが、実際には共振周波数が変化しているのです。したがってバンド内のどこかでSWRが最低になるところが見つかります。天気や気温によって変動の幅や変動速度などに違いがあるようで、朝晩にどこに共振点があるか、計測を続けています。天気等との相関があるのかどうか(これまでのところでは、晴れると共振点が上がり、雨だと下がるようです)、変動を少なくする方法などを試行錯誤してみたいと考えております。また、垂直設置や斜め設置にした場合にどのような違いがあるのか、もっと手軽に再現性よく使う方法はないのか、他のバンドのEHはどうか、など、このアンテナへの興味は尽きません。
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
EHアンテナ試行錯誤 (JF2TGO)
2009-10-12 17:53:57
JO7TCXさま
始めまして、JARL会員・ハムログ会員のJF2TGOと申します。当ブログの写真・記事など拝見させて頂きました、当局も貴局と同様な問題で試行錯誤の連続でしたが、最近になってほぼ安定してきました。
今更ながら、もう少し早く貴局の当ブログにめぐり会っていたらと思いました、有り難う御座います。
尚、小生のEHアンテナ試行錯誤のURLご高覧頂ければ幸いです。
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JF2TGO様 (jo7tcx)
2009-10-13 12:58:19
はじめまして。コメントありがとうございます。
貴局のホームページ拝見いたしました。天気、湿度による変動がやはりあるようですね。たいへん参考になります。当局の場合は雨だと共振点が下がり、晴れると上がります。最近は拡張バンドで出ることが多いので、晴れてくれた方が助かります。EHアンテナ同士での交信はまだ1回のみです。貴局とQSOできることを楽しみにしております。

返信する
EHアンテナ試行錯誤 (JF2TGO)
2009-10-14 19:09:17
JO7TCXさま

試行錯誤も当局だけかと思っていましたが、強い味方を得た思いです。小生、毎日が日曜日なので5月から随時SWRのグラフをUPするのを日課にしていましたが、最近安定してきましたので週一ぐらいにしようと思っています。

当初、中心周波数の初期値は7.100Mhz付近に設定したもののその後、同軸敷設ルートを試行錯誤で幾度も変更・微調整の結果自然環境に適合した中心周波数が7メガ拡張バンド内をアンテナ自身が自動調整移動しています。

尚、現時点±約30Khzの SWR 1.0 の値 が 7.000Mhz~7.200Mhzの間へ収まってはいますがANTシリンダー内の湿度・温度・給電点からリグまでの同軸敷設ルート・同軸外皮の湿度・周囲の環境等複雑に影響しているものと思われ、5月から10月まで6ヶ月を要しての想定と毎日が日曜日の暇爺の根気で得られた現時点での成果と思っています。

上記の理由により未確認要素は今後の課題とし・・・
『中心周波数を7メガバンド内の一定の周波数へ固定させる事は不可能であると考えられますが、バンド内各周波数のSWRは充分運用可能なレベルを確保しており優秀な小型アンテナと確信致しました』

貴殿の当ブログは大変参考にさせて頂く記事が満載で小生の教科書に致したいと思っています。
ありがとう御座いました。
EHアンテナ同士での交信 楽しみにしています。73

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JF2TGO様 (jo7tcx)
2009-10-15 17:09:19
 このアンテナへの評価にはまったく同感です。当局のEHもまるで生き物のように中心周波数が変動します。と言いましても、バンド外にはみ出すことはありません。ベランダ設置なので、付属のプラスティック棒で簡単に調整はできるのですが、むしろ、その日のEHの状態に合わせて、中心点付近で運用することが多いです。そういうことはありますが、アパマンハムにはとてもありがたい優れた小型アンテナと考えております。

 おわかりのとおり、当局は、無線に関してまったくの初心者です。ゆえに、次々興味が湧いてくるのですが、たぶんトンチンカンなことをしているのだと思います。ブログにでもすれば、少しは整理がつくのではということで続けています。たまにしか更新できませんが、気の向いた時にでもご笑覧いただければ幸いです。EHでの交信も楽しみにしております。73

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EHアンテナ試行錯誤 (JF2TGO)
2013-09-23 19:44:21
2009年10月頃に投稿させて頂きましたJF2TGOです
御無沙汰しています。以前のEHアンテナのURLを
他のアンテナ類と、まとめて総合的なホームページに
アマ無線のボタンを設置しましたので、お暇な時にでも
見てやって下さい。
貴殿のアンテナを参考にさせて頂いています。
2013年9月23日満77歳になりましたボケ爺です。
では、また

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JF2TGO様 (jo7tcx)
2013-09-23 21:39:32
コメントありがとうございます。

詳細なデータ、頭が下がります。あとでゆっくり拝見させていただきます。自分のような若輩が何も言うのもなんですが、アンテナ本体+同軸ケーブル=アンテナなんだと思っています。移動の時も同じですね。ケーブルの引き回しはおろそかにできないです。お元気でご活躍ください。EHアンテナ同士でのQSOを楽しみにしております。
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EHアンテナ試行錯誤の友 (JF2TGO)
2013-10-14 20:45:30
オアシスハムクラブ(ホームページのリンク集へ)
EHアンテナ試行錯誤の友
リンク完了しました。今後とも宜しく
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JF2TGO様 (jo7tcx)
2013-10-14 21:17:14
ハムクラブおよびホームページ開設おめでとうございます。拝見しました。FBですね。今後とも情報交換などよろしくお願います。
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