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有罪か無罪かの意見分布については、私の(腹案1)のような限度において公表したとしても、個々の裁判員や裁判官の意見の秘密は守ることができると証明された。
これは、例えば、有罪を前提とした量刑の評議で、死刑と無期懲役との二者択一となるようなケースでも同様である。

死刑の話が出て来たので、本論からは脱線するが、「死刑に限っては全員一致」を要求すべきだという説が昔から有力に主張されている。
しかし、まず、これまで論じてきたように、そうすると「死刑」判決を言い渡した瞬間に全員の意見が「死刑」であったことが自動的に判明してしまうという問題がある。したがって、評決の秘密は空文化するという点は直視しておくべきだろう。具体的に言えば、死刑反対団体からは全員が激しい非難の的にされるかも知れない。
また、たった1人にしろ、たまたま死刑絶対反対という意見の持ち主が入っていたかどうかという偶然で、死刑の適用が左右されることも想定される。公平を極めて重視する日本国民に耐えられるのか、疑問を禁じ得ない。
「裁判員には死刑の判断は負担が重過ぎるから、対象事件から外してはどうか」という説も含めて、死刑を特別扱いしようとすればするほど、むしろその存廃自体を問題にせざるを得なくなってくるのではなかろうか。

閑話休題。

さて、次の検討課題に移ろう。
量刑で意見が3通り以上に分かれ得る場合には、どう内訳を表示すべきか。

個々人の意見が特定されないようにするという必要条件だけに限れば、実は、二者択一の場合よりも3通り以上に分かれる場合の方が、かえって守りやすいようである。
裁判員6人の意見と裁判官3人の意見がバラバラに分かれた場合は、それぞれ全員の意見を列記しても、どれが誰の意見かは特定されないだろう。

ただし、たまたま全員が同じ量刑意見だった場合は、記載することができなくなってしまう。
また、あまりにもバラバラの意見分布をそのまま羅列すれば、裁判の権威も失墜しかねない。

したがって、裁判員グループ、裁判官グループの、それぞれ中心的な量刑意見を表示するルールにした方が良さそうだ。裁判員の意見と裁判官の意見とを対比して検証するという目的は、それで十分に達するだろう。

では、具体的にはどのように表示すべきか。
思い付きだが、素案を次に示し、その是非の検証は次回に行うこととしたい。

(腹案2)
量刑については、裁判員6人のうち最も重い1人と最も軽い1人を除いた中間の重さの4人の意見と、裁判官3人のうち中間の重さの1人の意見とを、判決理由中に記載して明示することとする。

(チェックメイト)

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