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裁判員制度・評決公表のアイディア(4)

2009年06月11日 | 裁判員制度・評決公表
私の(腹案1)に対する前回の検討の最後で留保した、残る問題とは、裁判官の側では3人の意見が露見してしまうケースが出現することである。

具体的には、
●○●23
○●○60・50・40
の場合である。
つまり、「主文の有罪は、裁判員の少数意見、裁判官の多数意見であった」と示すと、裁判官は3人とも有罪意見であったことが自動的に判明し、取りも直さず個々の裁判官の有罪意見が判明してしまうという事態が生じてしまう。
同様に、「主文の無罪は、裁判員の少数意見、裁判官の多数意見であった」と示すと、裁判官は3人とも無罪意見であったことが自動的に判明し、取りも直さず個々の裁判官の無罪意見が判明してしまう。

ただし、これは、裁判官の側だけに生じる現象だから、職業裁判官としては受忍すべきであるというふうに、消極的に割り切ることも可能であろう。
さらに進んで、裁判員の多数意見が裁判官の全員一致の意見に阻止されて採用されなかったとの情報は、公開すべき価値が特に高いという理由で、評決の秘密が一部破られるという例外的な現象を、むしろ積極的に正当化する考え方もあり得よう。

けれども、やはり裁判官の個々の意見も絶対に特定されないようにしたいというのであれば、裁判員の意見が3対3に割れた場合(△印)を「同数であった」と表示するのをやめて、主文を基準にして「多数意見ではなかった」という方に分類して表示すればよい。
そうすると、
●△●33・32は●○●と
○△○31・30は○●○と
表示したのと同じことになるので、
●○●23・33・32
○●○60・50・40・31・30
と、場合分けが修正される。
こうすると、裁判官の意見が3対0の全員一致であったと特定される事態も完全に回避できる。

つまり、「主文の有罪は、裁判員の多数意見ではなかったが、裁判官の多数意見であった」と表示すれば、裁判官の有罪意見が3人全員ではなく2人であった可能性も残るから、個々の裁判官の意見は特定されない。
また、「主文の無罪は、裁判員の多数意見ではなかったが、裁判官の多数意見であった」と表示すれば、裁判官の無罪意見が3人全員ではなく2人であった可能性も残るから、個々の裁判官の意見は特定されない。
以上により、私の(腹案1)を採用すれば、「総体としての裁判員の意見がどうであったのかは正確かつ客観的に明示されていること」という点はもとより、裁判員だけでなく、裁判官についても個々の意見が特定されずに済むということが証明された。QED
(チェックメイト)