日本裁判官ネットワークブログ
日本裁判官ネットワークのブログです。
ホームページhttp://www.j-j-n.com/も御覧下さい。
 



 先週われわれの例会にご出席いただいたばかりの韓国警察大学校李教授が兵庫県弁護士会の招きで6月13日再度来日され,2時間の講演とその後弁護士からの質問攻めという,一週間前と同じハードな日程をこなされました。終始いやな顔一つせず誠実に対応されていた姿勢に本当に頭が下がりました。

 弁護士の関心を反映して韓国の取調可視化についてのお話しが半分くらいを占めていました。

 韓国では警察官調書は,不同意の場合には証拠能力がないとされているため,あまり無理な取調をする意味が無く,普通の取調は大部屋に仕切りをしただけのところで一斉に複数の取調をするため,大声や暴行はそもそもできない環境でおこなわれているそうです。

 ところが検察官調書は,不同意でも証拠能力が認められているため,これまで密室の無理な取調がなされていたこともあったようです。
 いつも検察官の指揮下でしか捜査できない不満のある警察では,対抗策として警察の取調の透明性を世論にアピールするため,最近の司法改革のかなり前から取調の録画を実施していたようです。そのためその法制化には抵抗はなかったようです。

 これに対して,検察庁は可視化に猛反対したようですが,有識者を中心とする司法改革委員会は,それなら検察官調書の証拠能力を警察と同じにすると対抗したため,可視化が法制化されたようですが,妥協の末,取調全体の可視化ではなく,裁量でしかも各取調の最初から最後までの録画,つまり取調全部の最初から最後までではない一部録画が実現したという実情だそうです。

それなら日本の一部録画(取調の一部のしかも特定の場面のみ)とあまり変わらないのか,というと大違いのようです。
 韓国の取調は,日本のように生まれ育ちから始まり事件外のすべてを語らせるような取調はせず,ほとんどが1回で終わるというもののようです。2回目があっても聞き漏らしたことの確認程度だそうです。
 そうすると,1回分の取調の最初から最後までという法制度は実質的には,全部録画に近いといえるのかもしれません。

 いろいろ外国の実情は聞いてみないとわからないものだと感じた次第です。

                       可視化ついて勉強中の「花」

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )