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親権をめぐる紛争について

2008年03月04日 | 
家事調停を担当していますが,最近は調停のみならず家事審判事件・離婚訴訟でも,子供の親権をめぐる紛争が特に深刻化しているようにみえます。子の監護をめぐる処分事件(乙類審判)が,全国統計で平成9年と比較して平成18年は約3・1倍になった(家裁月報60巻1号8頁)という数字もその実感を裏付けています。

原因の一つは,父親が親権の獲得に真剣な熱意を持つようになり,実際に父親に養育能力がかなり備わってきたことにあると思われます。もう一つは,親権の争いという外観はとっているものの,実は,相手方への未練や不信,憎しみが背景となって絶対に親権を渡さないと主張していることも考えられます。

原因がいずれであっても,互いに一歩も譲らないという点ではさほど変わりはなく,極端な場合,いずれかの親が下校途中の子供を相手に無断で自宅に連れ帰り,未成年者略取罪で告訴されるという事件も発生しており,ますます話し合いでの解決が困難となることも少なくありません。 しかし,このような深刻な事態が未成年の子に重い精神的負担となることも明らかです。

最近の家庭裁判所調査官は,子の親権を巡る紛争を子供本位に考えましょう,という呼びかけをいろいろなツールを使って努力しているようです。最高裁作成の離婚と親権についてのDVD(子役が非常に名演技で良くできている。)や調査官が翻訳した外国の絵本,調査官が創作した絵本などを使って親や子向けに単なる説得ではなく,自発的に考えてもらおうと懸命の努力をしています。

最近,親権という言葉は適切ではなく,養育義務というような内容に即した言葉に変えるのはどうか,とか外国に例がある共同親権などという考え方を取り入れるべきではないかという議論が学会でなされているようです。確かに親権を相手方がとることは他方の負けというような硬直した感じ方も紛争激化に拍車をかけているかましれません。そうすると,もう少し柔軟な対応ができる仕組みを考えるのも法律家の役割かもしれない,と思います。「花」