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【BOOKセレクト】佐山和夫著「1935年のサムライ野球団」

2015-11-14 | 先住民族関連
スポーツ報知 2015年11月13日15時0分
 米国野球に造詣の深いノンフィクション作家の佐山和夫さん(79)が「1935年のサムライ野球団」(KADOKAWA、1728円)を刊行した。今から80年も前に、米カンザス州で行われた“裏ワールド・シリーズ”に参加したカリフォルニア州の日系2世チーム。善意とフェアネスに基づく、その奮闘ぶりを描いている。佐山さんは、米国史上最高の投手といわれる伝説の黒人選手サチェル・ペイジも参加した大会の経緯や、日本野球は米国人にどう映ったのか、現地取材で解き明かした。(蛭間 豊章)
 通算2000勝以上したという“米球界最高の投手”サチェル・ペイジ研究の第一人者である佐山さん。今回取り上げた“裏ワールド・シリーズ”を知ったのもペイジが出場していたからだった。
 「米国だけでなくカリブ海沿岸諸国まで足を伸ばしていたペイジは、いろいろな試合に投げていました。この大会も多くの登板試合の一つかと思って最初は興味を持たなかったんです」
 しかし、その当初「ナショナル・ベースボール・コングレス・ワールド・シリーズ」と呼ばれたその大会が、当時、白人しかプレーできなかったメジャーリーグのワールド・シリーズに対抗して計画されたもので、元メジャーだけでなく排除されていた黒人、米先住民、海外から米国に定住した2世らによって編成された32チームが集結していたことを知って、作家意欲をかき立てられた。歴史を掘り起こそうと考えたという。
 「この大会はプロ、アマ関係なく、そして肌の色が違っていてもOKの、まったく差別のない野球大会だったのです。そして日系2世チームも出ていたんです。彼らはどこから来たのか、どんな選手で、どうして参加したか、次々と疑問が湧いてきたのです」
 佐山さんは、大会が行われた米国のど真ん中・カンザス州ウィチタに飛んだ。あのメジャーの通算本塁打記録保持者バリー・ボンズも大学生の時に2度出場した「ナショナル・ベースボール・コングレス」として続いている大会。その創設者の名前を冠したローレンス・デューモント・スタジアム外野後方のモニュメントには「ジャッキー・ロビンソンが大リーグにあった人種差別の壁を破った1947年よりはるか以前に(中略) すでに人種差別を撤廃していた」と大会の意義が記されていた。そして、参加チームのひとつとして、「全員が日本人から成るニッポニーズ(Nipponese)・スターズ」とも記されている。
 「調べてみると、カリフォルニアからはせ参じた日系チームは、ウィチタに行くまで各地で試合を重ねて移動費用を捻出しながらだったようです。大会には、彼らのほかに、アメリカ先住民族野球大会優勝チーム、兄弟だけのチーム、など、全米から集結したのです」
 太平洋戦争以前の米国では、野球が最も人気のあるスポーツだった。特にカリフォルニア州の日系人にとっても最大の娯楽でもあり、米マイナーのチームでプレーする選手もいたほどだった。そのカリフォルニア州の日系オールスターともいうべきニッポニーズ。メンバーの中には、後に日本プロ野球の阪急で“ヘソ伝”のニックネームで知られた(フランク)山田伝外野手、後にパ・リーグの審判にもなった(ジョージ)上田藤夫内野手も加わっていたことも突き止めた。
 「日本と違って米国は、戦災に遭っていないので各地の図書館には古い地元紙が大切に保管されています。ですから、彼らがどのようにウィチタまでの3000キロを超える道のりを向かったのかも分かったのです」
 80年前の“侍ジャパン”は、大会では2戦連敗し早々と姿を消した。だが、帰路でもさまざまな試合に出場した彼らは、大会を含めた遠征中、実に約40日で32試合(22勝)も戦った。すべての試合で、真摯(しんし)で全力プレーの“日本野球”を貫き、観客にはそれを印象づけた。
 「彼らは米国的なベースボールではなく、父世代の一世が日本で学んできた正々堂々とした野球を披露しました。そして日本人がどんなに真面目で善意に満ちていたかと示そうとしたのです」
 翌年、日本プロ野球がスタート。21世紀に入ってプロ参加の国際試合が格段に多くなり、現在プレミア12が開催中だ。
 佐山さんは「80年前の日系人が、米国で日本野球の神髄を披露してくれた。今の侍ジャパンにもそんな先達の真摯なプレーを忘れずに、優勝してほしい」と期待している。
 ◆佐山 和夫(さやま・かずお)1936年8月18日、和歌山県生まれ。79歳。慶大文学部英文学科卒業後、レコード会社勤務や高校教師などを経て文筆活動へ。「史上最高の投手はだれか」で84年度(第3回)潮ノンフィクション賞を受賞。その後も精力的に野球のルーツを探る書籍を多数出版。近著に「箱根駅伝に賭けた夢」(講談社)、「ペリーより62年も前に」(渓流社)がある。報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」では第1回から選考委員も務める。
 ◆プレゼント 佐山和夫さんの直筆サイン本「1935年のサムライ野球団」を5人に。希望者ははがきに〒住所、氏名、年齢、好きな作家、社会面の感想を書き、〒108―8485 報知新聞社文化社会部・ブック「佐山和夫」係まで。11月19日の消印まで有効。当選者発表は発送をもって代えます。
 【小田嶋さんが選ぶこの一冊】
 佐山さんは感銘を受けた本として、評論家の故・松本健一氏が03年に刊行した「砂の文明・石の文明・泥の文明」(PHP新書)を挙げた。
 「文明論として、こんなに具体的で分かりやすい本は他にありません。世界に広まってきたベースボールという球技が、それぞれの地でどうしてかくも違った様相を呈するのか。その理解のカギを、私はこの本から得た気がします」
 松本氏は民族と風土のあり様を3つのカテゴリーに分類。「砂の文明」のイスラム、「石の文明」の欧米、そして「泥の文明」のアジアの、それぞれの文明の発達のあり方を描いた独創的な文明論。
 「ボール状の物を、バット状の物で打つという遊びは、人類の最初からあったでしょう。それが各地において違った価値観を背負うものとなっていった根源を教えられます。ボールの発生からベースボールへの進化、あるいはベースボールになり得たゲームたちの消滅の背景までわかりました」
 野球のルーツを追って米国各地だけでなく、英国やフランスにまで足を運んだ佐山さんだけに、ボールゲームの歴史を語る上で格好の一冊になったという。
http://www.hochi.co.jp/topics/serial/CO019592/20151113-OHT1T50096.html
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