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伝統工芸品「二風谷アットゥシ」 唯一の男性職人が誕生 平取

2021-07-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/23 22:16
 【平取】アイヌ民族の衣装などに使われる優れた伝統工芸品アットゥシ(樹皮の布)。中でも日高管内平取町の「二風谷アットゥシ」は評価が高いが、技術を受け継ぐ職人は年々減って今は5、6人となり、高齢化も進む。そんな中、本州で調理師をしていた柴田幸宏さん(32)が修業を積み、今月、新米職人としての一歩を踏み出した。「道は険しいが技術を伝えてほしい」。先輩職人たちに期待の声が広がっている。
 6月、上川管内南富良野町の国有林。広葉樹オヒョウの皮を剥ぐ二風谷民芸組合員ら約30人の中に柴田さんの姿があった。木を切り倒し、ナタで皮を剥ぐ。オヒョウ30本からアットゥシの原料を採る年に1度の作業は4時間続いた。
 皮の質で糸の出来が決まり、柴田さんは「今年のは、しっかりしていて良い」と話す。樹皮は煮て洗って薄く剥がし、2ミリほどに細かく割くなど、多数の工程を経て糸を作り始めるまでに約2週間。糸の量が着物1着を織れる約1キロに達するには2~3カ月必要だ。
 二風谷アットゥシは、アイヌ文様の木彫りを施した盆「二風谷イタ」とともに2013年に道内で初めて経済産業省の伝統的工芸品に指定され、今も道内の同工芸品はこの二つだけだ。
 樹皮の色や煮る方法で生まれる色の違う糸を組み合わせてきめ細かく織り、しま模様などを浮き上がらせる。さらに、布に刺しゅうするアイヌ文様がアクセントとなり魅力が引き立つ。
 「柔らかく、木から作られているとは思えない」。初めて触れた時の感動をそう語る柴田さんは十勝管内音更町出身。調理師学校を出て横浜などの中華店で10年間働いたが「決まった調理をこなす毎日だった」。
 子供の頃から作務衣(さむえ)や工芸品など手作りのものを「かっこいい」と感じ、中学の時に授業で知ったアットゥシにも興味があった。16年夏に2カ月休暇を取って二風谷を訪れ「作ってみたい」と決意。18年2月に町が募集した地域おこし協力隊員に応募し、その5カ月後に修行を始めた。二風谷の町民芸品共同作業場「ウレシパ」で週5日、民芸組合講師から糸作りや機織りの指導を受けた。講師の一人、貝沢雪子さん(80)は「何にでも関心があり、学ぶ姿勢が意欲的」と話す。
 一人で反物を織れるまでになり、今年4月には初の作品のスーツが完成。「現代的で普段使える物を作ってみたかった」と言う柴田さんが2月から1カ月かけて布を織り、3月に帯広の仕立屋に頼んで仕上げてもらった。「かっこよくできました」と笑顔を見せる。
 6月で協力隊員を卒業し、今後2年間は町の支援を受けながらウレシパで働き、職人として独り立ちを目指す。「他人とかぶらないようなものを作りたい」と話す柴田さんは、カメラやギターのストラップなどの製作も考えている。
 アットゥシ職人の先輩は全員女性で50~80代。二風谷民芸組合の貝沢守代表理事(56)は「若手が育ってくれるのはうれしい。職人として食べていくのは大変だが、いろいろ挑戦してほしい」と目を細めた。(静内支局 杉崎萌)
※「アットゥシ」と「ウレシパ」のシは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/570413

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コロナ下、東京五輪開幕 1年延期 夏季57年ぶり 大坂なおみ、聖火台点火

2021-07-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/24 02:20 更新
 新型コロナウイルスの感染拡大で史上初めて1年延期された東京五輪は23日夜、主会場の国立競技場(東京都新宿区)で無観客の開会式を行い、8月8日まで17日間の幕を開けた。東京での五輪開催は1964年大会以来、57年ぶり2度目。式典は、大会関係者がコロナ禍で亡くなった人々への黙とうを行い、鎮魂と克服への決意を印象づける内容となった。緊急事態宣言下の東京、北海道を含む6都道県で競技が無観客となる異例ずくめの大会が始まった。
 3月に福島県を出発した聖火は121日かけて競技場に到着し、ランナーが聖火をリレー。最終走者は、ハイチ出身の父と根室市出身の母を持つ女子テニスの大坂なおみ(23)=日清食品=が務めた。「多様性と共生」をうたう大会の象徴として、東日本大震災で被災した東北の子どもたちから聖火を引き継ぎ、球体の聖火台に点火した。
 式典は華美な演出を抑え、国際オリンピック委員会(IOC)の委員、各国委員ら出席した大会関係者900人がコロナ禍による犠牲者に黙とうをささげた。
 入場行進にはマスク姿の選手団6千人が参加。感染予防のため、2メートルほどの間隔を空けて行進した。開催国として最後に入場した日本はバスケットボール男子の八村塁(23)=ウィザーズ=、レスリング女子の須崎優衣(22)=早大=の旗手2人を先頭に登場した。
 コロナ禍での開催についてIOCのバッハ会長は「日本の皆さまのおかげです。心から感謝しています」と日本語で述べた。大会組織委員会の橋本聖子会長は「世界中が困難に直面する中、再びスポーツの力、オリンピックの持つ意義が問われている」と強調した。
 道内関係では、いずれもバスケットボール女子で札幌山の手高卒の長岡萌映子(27)=トヨタ自動車=、町田瑠唯(28)=富士通=、東藤なな子(20)=トヨタ紡織=、馬術の林伸伍(36)=アイリッシュアラン乗馬学校、東海大四高出=が行進で笑顔を見せた。
 入場行進に先立ち、日本国旗を運び入れる場面では、8月の札幌での五輪マラソン・競歩に合わせて、アイヌ舞踊を披露する予定の札幌市立真栄中3年、古川龍さん(14)、札幌市立真栄中1年、蓮希(はずき)さん(13)のきょうだいら少年少女8人が先導した。2020年冬季ユース五輪(スイス・ローザンヌ)のカーリング混合団体銀メダリストで、日本選手団主将を務めた田畑百葉(18)=北海道銀行=が、歴代の五輪メダリストや医療従事者とともに国旗を会場に運び入れた。
 史上最多の33競技、339種目を実施する大会には、205の国・地域と難民選手団を合わせて約1万1千人の選手が参加。道内関係22人を含む日本選手は583人と過去最多になる。(大矢太作)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/570390

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豪の旗手、先住民族にルーツ 米NBAスパーズのミルズ

2021-07-24 | 先住民族関連
共同通信 2021/7/23 21:44 (JST)
競泳女子のケイト・キャンベル(右)とともにオーストラリアの旗手を務めるパティ・ミルズ=23日、東京(AP=共同)
 オーストラリアの旗手はバスケットボール男子代表で、米NBAのスパーズでプレーするミルズが務めた。先住民族にルーツを持つ選手として初の大役に選ばれ、ともに旗手を担った競泳女子のC・キャンベルと並んで国旗を掲げ、堂々と選手団を先導した。
 オーストラリア大使館によると、今大会に参加する500人近い選手団のうち16人が先住民族の血を引くという。「多様性と調和」を理念に掲げる大会を象徴する一幕となった。
https://nordot.app/791284076804718592?c=39546741839462401

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インディアンスが名称変更

2021-07-24 | 先住民族関連
共同通信 2021年7月24日12:00 午前UPDATED
【ロサンゼルス共同】米大リーグ、インディアンスは23日、今季終了後にチーム名を守護者を意味する「ガーディアンズ」に変更すると発表した。
 球団は白人警官による黒人男性暴行死事件をきっかけに高まった人種差別撤廃の動きを受け、1915年から続く名称の代わりを検討してきた。先住民(インディアン)を差す従来の名前は以前からも問題視されており、「先住民族の長」をあしらったロゴの使用は既に取りやめている。
 プロフットボールNFLでも先住民を意味するチーム名は廃止された。
https://jp.reuters.com/article/idJP2021072301001436

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東京五輪会場でアイヌ舞踊披露 込められた思いとは

2021-07-24 | アイヌ民族関連
HBC 2021/07/23 19:21
東京五輪会場でアイヌ舞踊披露 込められた思いとは(HBC北海道放送ニュース)
 22日、釧路市阿寒町に道内各地のアイヌの人たちをはじめ、様々な地域や年代の50人ほどが集まりました。
 札幌で行われるマラソンと競歩の会場で、アイヌの伝統舞踊を披露します。
 大舞台での披露まで、ちょうど2週間。残り少ない練習に熱が入ります。本番で披露されるのは、道内各地のアイヌの伝統的な15の踊り。その踊りには「この世の中に意味のない存在なんてひとつもない」というメッセージが込められています。
 「虫もネズミだって昆布だって、川も山もすべてが存在しているから、お互い育て合っていて、この地上でみんなが生きていけるんだよっていうメッセージを締めくくりに持ってきた」(総監督・秋辺デボさん)
 当日は観戦の自粛が要請されているため、踊りはテレビやインターネットで披露されることになります。
 「アイヌの文化やみんなが1つになって日本のオリンピックを世界に発信したい」(出演者)
「集大成をようやく皆さんに披露できるとなるとワクワク感が強い。暗い歴史があるので私たちの踊りを見てアイヌって素晴らしいな、かっこいいなとか、そういう目線で見てもらえるような舞台にしたい」(出演者)
 オリンピックでのアイヌの伝統舞踊は、マラソンと競歩が実施される来月5日から8日までの4日間、競技の開始前に札幌の大通西1丁目で無観客で行われます。
https://news.goo.ne.jp/article/hbc/region/hbc-f33abea6feba56aa23ac71cc2d8f05ab.html

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「五輪、考える機会になれば」 北海道民、五輪開催に賛否の声

2021-07-24 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2021/07/23 19:40
 新型コロナウイルスの感染拡大下で、1年延期、ほぼ無観客という異例づくしの東京オリンピックが、23日開幕した。札幌がサッカーとマラソン、競歩の会場になっている北海道内でも、これまでの「平和の祭典」とは異なる、さまざまな受け止めの声が聞かれた。【貝塚太一、本多竹志、真貝恒平】
 ◇街の風景「五輪モード」も静かな札幌
 札幌の中心部では、札幌駅前通にフラッグが飾られ、地下歩行空間の壁や柱も五輪の装飾が施されるなど、街の風景も「五輪モード」に。大通公園のマラソンの折り返し地点に設置されたシンボルマークのモニュメント前では、記念撮影する人たちの姿があった。友人3人と訪れた恵庭市の大学生、大友優実さん(20)は「コロナで昨秋から札幌には来ていませんでしたが、大通公園も変わっていて盛り上がりを感じました」と笑顔を見せた。
 とはいえ、札幌の競技は全て無観客となったため観光客も例年よりずっと少なく、お祭りの雰囲気からはほど遠い。東京から観光で来た手塚健一さん(57)は、妻の智美さん(53)とマラソンのフィニッシュ地点を示す銘板を写真に収めていた。「自国開催はまたとない機会。喜べる雰囲気じゃないのは残念だけれど、五輪は楽しみです」
 「これほど歓迎されない五輪は今までなかったのではないか」と冷めた見方をしたのは、大通公園の日陰のベンチで読書していた男性(38)。関心は薄いといい「五輪とは何なのか、改めて考える機会になればいい」と話した。
 ◇事前合宿、直前にトラブル
 エクアドルのマラソン・競歩の選手団が23日夜に事前合宿で現地入りするはずだった北見市では、直前のトラブルに見舞われた。来日時の検査でコロナ陽性者が確認され、選手団が成田空港で足止めを食ったのだ。
 歓迎セレモニーは中止されたものの、井上篤・市スポーツ課長(46)は「引き続き、選手を万全の体調で送り出すサポートをしたい」。市民の寄せ書きなどを届けてエールを送る準備をしているという。
 選手団の練習は非公開で、市立高栄中の陸上部員、中崎楽久(がく)さん(13)は「見られると思って楽しみにしていたのに……」と残念がる。ホストタウンに決まってから、ネットで調べてエクアドルへの興味を広げてきたという。それでも「競技をテレビ観戦する」と切り替え「日本選手と同じくらい、エクアドルにも活躍してほしい」と語った。
 ◇相次ぐ関係者の辞任、否定的な意見も
 五輪・パラリンピックの理念の一つは「多様性と調和」だが、これに反するような言動による関係者の辞任が今回相次いだ。「平取アイヌ遺骨を考える会」共同代表の木村二三夫さん(72)は「こんな発言をする人が大事な場面に関わるとは……」とあきれた様子。「日本社会が世の流れに逆らい、多様性や人権尊重の面で遅れていることが示され、恥ずかしい」と批判する。
 マラソンと競歩の競技開始前に、大通公園でアイヌ舞踊が披露されることが決まった。「アイヌモシリ(アイヌの大地)で開くのだから、単なるパフォーマンスや建前ではなく、アイヌ民族への敬意や本質的な理解を伴う大会であってほしい」と木村さんは訴える。
 路上生活者支援のボランティア団体「北海道の労働と福祉を考える会」の小川遼副代表(29)は、ホームレス排除につながるからと、もともと五輪には否定的。コロナ禍での開催を「『五輪をやったらうれしいでしょ?』という国の姿勢に憤りを感じる。札幌でのマラソンも地域住民の合意形成の醸成がなかった」と指摘する。
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210723k0000m040231000c.html

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白人の逆襲:俺たちは人種差別主義者ではなかった!

2021-07-24 | 先住民族関連
JBpress 2021/07/23 07:00
民主対共和で米国二分の間違い
 今の米国は分裂、分断しているという。
 保守対リベラル。共和党対民主党。バイデン支持者対トランプ支持者。東・西部対南・中西部。都市居住者対ルーアル(地方非都市)居住者。富裕層対貧困層。高学歴者対低学歴層。白人対非白人(黒人、ラティーノ、アジア系)。
 こうした2つの勢力が組んずほぐれつの争いを続けて、米国は真二つに分断されている――。こう「解説」する米国通ジャーナリストや学者がいる。
 だが米国に長年住み、米国を肌身に感じて生き、内部から「定点観測」している筆者にとっては、こうした見方はどうも実態を反映したものだとは言いにくい。
 正確に言えば、「2つの勢力」が拮抗しているわけではないのだ。「3つの勢力」が拮抗して3分断されていると言った方がいい。
 保守、リベラル、そしてその両者でもない「中間無党派」が睨み合って3分断されているのだ。
 先の大統領選でジョー・バイデン氏を大統領に選んだ決め手となったのは、この「中間無党派の良識」が民主党に加担したことだった。
 おそらく2022年の中間選挙を決めるのもこの中間無党派が民主党、共和党のどちらを選ぶかで決まりそうだ。
 カリフォルニア大学バークレイ校の政治学者の一人は、こう指摘する。
「中間無党派層が今の米国のバランスを保っているコモンセンス(良識)になっている。2020年の大統領選、上下両院選で民主党を勝たせたのは、この層が民主党に票を入れたからだ」
1990年代に確立した社会・歴史認識
 対立軸は新型コロナウイルスのワクチン接種問題からインフラ投資法案など、米国市民の健康から経済・雇用に至る必須のアジェンダにまで及んでいる。
 しかし、これは共和党対民主党の「政争」の道具にされており、一般大衆にはそのアジェンダの中身が分かるわけでもない。
 そうした中で保守派が見つけたのが歴史認識問題だ。
 これは白人保守強硬派対黒人+白人リベラル派の激突と言っていい。
 その渦中に飲み込まれているのが、今回ご紹介する一冊の本だ。小学生向けのイラスト本だ。
 著者は、アナスタシア・ヒギンボッサム氏。メリーランド大学在学中からイラスト本を著し、卒業後は数々の問題作を世に出してきた。
 今、米国で最も論争の的になっているのが同氏が2018年に著した「Not My Idea」(「それは私の考えじゃない」)。
(https://www.amazon.com/dp/1948340003)
 一人の白人の女の子の日常生活を描きながら、生まれてから今までなぜ、自分が黒人やラティーノに比べると、恵まれた特権を有しているのか、白人であることが米社会では有利なのはなぜかをイラストと文章でつづっている。
 しかもその白人の特権が先住民族であるアメリカインディアンを彼らの土地から追い出し、アフリカから連れてきた黒人を奴隷労働でこき使ってきたことで確立した社会構造にあることを指摘している。
 この考え方は学界では「批判的人種理論」(Critical Race Theory)と呼ばれており、1995年にウィスコンシン大学のグロリア・ラドソン・ビリングズ、ウイリアム・テイト両教授が確立した社会歴史観だ。それ自体何ら新しいものではない。
(https://www.unco.edu/education-behavioral-sciences/pdf/TowardaCRTEduca.pdf)
 日本人を含め世界中の歴史学者が共鳴する米国建国史観だ。
 ところが今年に入って南部、中西部州の知事や州議会が相次いでこの本を「公立小学校で副本として使ってはならぬ」と言い出したのだ。
 その理由はこうだ。
「『批判的人種理論』はあたかも、白人は人種差別主義者(レイシスト)であると断定しており、その白人が建国したアメリカ合衆国は人種差別国家だと子供たちに教えている」
「国家に対する誇りや愛国心を薄れさせる以外の何物でもない」
 なぜ、今になってこうした議論が白人保守派から出てきたのか。その意図をたどっていくと、2020年9月9日のドナルド・トランプ大統領(当時)に突き当たる。
 この日、トランプ氏はこうツイートした。
「私は、米連邦政府から『批判的人種理論』を直ちに追放する。この理論を聞くにつけ、反吐が出る。現状を報告せよ。直ちに消滅させる」
 この大統領令は、2011年にバラク・オバマ大統領(当時)が連邦政府職員に命じた「多様化促進指導」(Diversity Training)*1を盛り込んだ大統領令を消し去り、米国の制度、歴史に誇りを持たせるのが狙いだった。
*1=オバマ大統領令の狙いは、米国内のすべての職場における人種的偏見を排除し、公平性に対処するため連邦政府職員が率先してこれを実施する目的で下された。
(https://time.com/5891138/critical-race-theory-explained/)
 このトランプ氏のツイートを受けて、保守派が動き出した。
 トランプ支持派の億万長者、チャールズ・コーク兄弟*2が陰で蠢いた。
 傘下のシンクタンクや保守派学者やメディアを動かして「批判的人種理論」粉砕のキャンペーンにカネをばらまいたとされている。
*2=石油、天然ガスなどのエネルギー産業を牛耳る「コーク・インダストリーズ」のチャールズ・コークCEO(経営最高責任者)とデイビッド副社長。2人の資産総額はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツとほぼ同じ800億ドル。
 トリニティ大学のアイザック・カモラ教授はその理由についてこう指摘する。
「コーク兄弟の政治哲学は、個人が金持ちになるのも貧乏人になるのもその人の素質と努力次第というもの」
「白人が特権を持っているのはそのためであり、アメリカインディアンを虐待したり、黒人奴隷にしたことで白人が豊かだという考えには真っ向から反発しているからだ」
「『批判的人種理論』は白人キャピタリズムの敵と考えている」
(https://dakotafreepress.com/2021/06/10/koch-money-protecting-capitalist-myths-by-fighting-anti-racist-education/)
反「批判的人種理論」報道1701回
 保守系のフォックス・ニューズはコメンテイターやキャスターを総動員して「批判的人種理論」が「白人を見たらレイシストだと主張する考え方だ」と吹聴した。
 2020年1年間で132回、2021年に入ると、6月の第3週までに1701回も取り上げられた。
(https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/07/opponents-critical-race-theory-are-arguing-themselves/619391/)
 SNSでは保守派活動家のクリストファー・ルフォ氏が前述のヒギンボッサム氏のイラスト本を取り上げ、12州25校(その後15州30校に増える)がこの本を使うことを禁じたと“特報”した。
(https://www.washingtonexaminer.com/opinion/yes-critical-race-theory-is-being-taught-in-public-schools)
 反対運動は相乗効果を生み、テキサス州のクレグ・アボット知事は本の禁止だけでなく、「人種主義に関する歴史」を公立学校で教えることまで禁じる法案に署名した。
 こうなると、「米国の歴史教育は中国や北朝鮮と同じで、一方的かつドグマテッィクなものになり、国際的スタンダードからは大きく外れてしまう」(主要シンクタンク研究員)。
 2024年の共和党大統領候補の座を虎視眈々と狙っているテッド・クルーズ上院議員(フロリダ州選出)は、「批判的人種理論」論争を政争の具に使っている一人。
「この理論でいけば、白人は一人残らずレイシストということになる。要するに白人の子供たちはみな悪人だということになる。そんな馬鹿な話があるものか」
 だが、冷静に考えれば、「批判的人種理論」はそんなことを言っているわけではない。冒頭で触れた中間無党派層はどう見ているのか。
 筆者は2人の中間無党派の人に聞いてみた。
 一人は、ノースカロライナ州に住む大卒の作業療法士の女性(45)だ。
「Whiteness (白人だからと言って優越性を誇示すること)が悪い行為だということでしょ。だとすれば、そういう特権意識のない白人になればいいだけのこと」
「ヒギンボッサム氏はその難しいテーマをうまくまとめている。子供たちに読んで聞かせる教師や両親がどう解釈するかの方が大事です」
 もう一人はワシントン州に住む白人のカトリック系中学校の女性教師(35)。
「この本は子供とその両親、そして我々教師に質問をぶつけてきているのです」
「『人種差別は私の考えではないわ。私は、それを弁護なんかしないわ。あなたはどうですか』と問いかけている」
(アイヌの人や在日朝鮮・韓国人や華僑の人たちを除けば)単一民族の日本人にはなかなか分かりづらい米国の人種問題。
 日本人にとっては当たり前のようなこの「歴史認識」をめぐって対立する白人保守派と黒人+白人リベラル。常識的には後者の肩を持つ中間無党派層。
 保守派3分の1、レベラル派3分の1の対立ばかりマスコミ報道で目立つが、「サイレントな3分の1」が大統領選挙を左右していることを忘れてはいけない。
 歴史認識の論争も「時の氏神」は中間無党派。彼らの良識が解決してくれるかもしれない。
(高濱 賛)
https://news.goo.ne.jp/article/jbpress/world/jbpress-66175.html?page=1

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