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自然との共生 神秘的に

2021-07-05 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/05 16:00
阿寒湖温泉で「カムイルミナ」
 【阿寒湖温泉】光や映像で演出された夜の阿寒湖畔を散策する「阿寒湖の森ナイトウォーク『カムイルミナ』」が釧路市阿寒町阿寒湖温泉のボッケ遊歩道で11月14日まで開かれている。阿寒湖の自然とアイヌ文化を融合させたデジタルアートが幻想的な空間を演出。阿寒のアイヌ民族に伝わるアイヌ神謡が題材の「カムイルミナ」を写真とともに紹介する(文・伊藤美穂、写真・小松巧)
遊歩道1.2キロ アイヌ文化体感
 舞台は火山と森と湖が織りなす雄大な景観が広がる阿寒摩周国立公園内の「ボッケの森」。アイヌ文化が伝承されながらまちづくりが進んできた土地で、原始の森の息吹と大地のエネルギーを感じられる場所だ。森の香りやボッケ(泥火山)の硫黄のにおい、湖の波の音などを楽しむことができる。
 参加者は物語の案内役となる映像のフクロウに従い、音声が流れる特製のつえでリズムを刻みながらボッケ遊歩道(1.2キロ)を進む。道中、プロジェクションマッピングなどで動物や植物が映し出され、自然を大切にするアイヌ文化を体感できる。
 物語は、白糠町出身で阿寒湖畔に住んでいたアイヌ文化伝承者、故四宅(したく)ヤエさん(1904~80年)が伝えてきたアイヌ神謡「大飢饉(ききん)から人々を救ったカケスの神の物語」を題材にした。各国で体験型デジタルアートを展開するカナダのモーメントファクトリー社と阿寒湖在住のアイヌ民族が共同制作し、地元の阿寒アドベンチャーツーリズムが運営する。
 「フーンコ、フンコ、フーンコ」。最初に遊歩道にこだまするのは四宅さんがシマフクロウの鳴き声をまねた過去に録音した神謡の音声で、物語の途中から四宅さんの孫の平良智子さんの声を重ねた。アイヌ民族の視点から演出を助言した阿寒アイヌ工芸協同組合の床州生(とこしゅうせい)理事(55)は「ユーカラ(叙事詩)を伝承していくことの象徴として表現を考えた」と説明する。阿寒湖のアイヌ民族が演奏する伝統楽器ムックリ(口琴)やトンコリ(五弦琴)の演奏も神秘的な空間をつくり上げる。
 カムイルミナは2019年7月にスタート。初年度は11月までの約4カ月間で約3万4千人が来場した。昨年度は新型コロナウイルス感染拡大で中止された。本年度は6月22日に始まり、多言語字幕ガイドアプリを新たに導入し、日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語に対応。スマートフォンでQRコードを読み取ると、セリフやナレーションの字幕が画面に自動表示される。
 カムイルミナの受け付けは日没30分後から午後9時半まで。所要時間は約50分。チケットは前売り中学生以上2800円(当日3千円)、小学生1400円(同1500円)、未就学児無料。問い合わせは阿寒AT(電)0154・65・7121へ。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/563558

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襟裳岬の緑化、映画に 半世紀かけ「砂漠」から再生 23年度公開へ官民協力

2021-07-05 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/04 12:00
 【えりも】1950年代、森林伐採で「襟裳砂漠」と呼ばれた襟裳岬(日高管内えりも町)の緑化事業をテーマにした映画「北の流氷」(仮題)の製作準備が、2023年度の公開を目指して進んでいる。緑化で豊かな漁場を復活させた実話を基に、日高管内のえりも、浦河、様似と十勝管内広尾の4町が中心になって準備し、浦河出身の田中光敏監督(62)が撮影を手掛ける。えりもでは製作を応援する住民組織が立ち上がり、官民挙げた協力体制も整いつつある。
緑がよみがえった襟裳岬近くの百人浜を眺めながら映画への思いを語る「応援する会」の木下代表
緑がよみがえった襟裳岬近くの百人浜を眺めながら映画への思いを語る「応援する会」の木下代表
 「一度は北海道で映画を撮りたいと思っていた。皆さんと映画作りができれば」。田中監督は4月、自身の作品で故・三浦春馬さんが主演した映画「天外者(てんがらもん)」をテーマに浦河で開かれたトークショーでこう呼びかけた。
 「北の流氷」の構想は、田中監督が4町に呼びかけ、16年に動き始めた。18年10月に準備委員会を設立し、3億5千万円を目標に資金集めを開始。「小さな町が四つ集まり、映画作りがどういうものかも分からない中でのスタートだった」。えりも町の大西正紀町長はそう振り返る。
■漁場も復活
 漁業資源に恵まれたえりも岬地区は明治時代以降に入植が急増、燃料用などで樹木が伐採され、山肌がむき出しの「砂漠」と化した。赤土が海にも流れ込み漁業は困難に。地元の漁師らが立ち上がり、飯田常雄さん(故人)を中心に、1953年から半世紀以上をかけて国と共同で緑化と漁業の再生を成し遂げた。
 映画はこの実話がベースで「人と自然の共生」が大きなテーマ。田中監督は「自分たちの町を守るという偉業。エネルギーを感じる。映画で全国、世界に伝えたい」と語る。大西町長も「温暖化問題や持続可能な開発目標(SDGs)の推進で今後の指針になるような映画に」と期待する。
 脚本はNHK大河ドラマ「天地人」(2009年)などで知られる小松江里子さん。まれにしか見られず、海底の砂を洗い流す「奇跡の流氷」や、その存在を主人公に話すアイヌ民族などが重要な役割で登場する。小松さんによると、ファンタジー的な要素も織り交ぜた脚本で、キャスト決定前段階では既に完成。「壮大なテーマですが、描きたいのはえりもで暮らす人たちの生きざま」という。
 当初は今秋にもロケの想定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金集めが進まず、現状では22年秋ごろになる見通し。田中監督は6月下旬、札幌を舞台あいさつで訪れたのに合わせ、市内の企業に支援を呼びかけた。
■四季を撮影
 各町は所有するドローンを使い、襟裳岬、アポイ岳(810メートル)から望む日高山脈、エゾシカの群れなど四季折々の各町の情景の撮影も進めている。田中監督の要請で、映画で利用することも想定している。
 監督と4町の主導で準備が進む一方、民間を含め地域で製作を支える機運も醸成されてきた。
 今年3月には、えりも町民有志23人が「北の流氷を応援する会」を発足。会員は30人に増え、ロケに備え、エキストラの手配や炊き出しなど協力の検討を進めている。食品会社を経営する会員は、売り上げの一部を製作費に充てる企画も発案。代表の木下泉さん(67)は「えりも、日高を全世界に発信するチャンス。できる限りのサポートをしたい」と意気込む。
 4町は共同で3千万円を出資、年度内の設立を予定する製作委員会に加わる。公開を目指す23年度は緑化事業開始70年の節目だ。「その時には、気兼ねなく映画館で映画を楽しめるようになっていてほしい」。関係者はそう願っている。(河村元暉、松井伊勢生)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/563061

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