北海道新聞 07/11 13:53 更新
【白老、平取】日高管内平取町が、アイヌ伝統工芸家が集まる町内の二風谷コタンと、12日に開業1年を迎える胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を結ぶ周遊バス「セタプクサ号」を運行している。JR札幌駅前から新千歳空港を経てウポポイ、二風谷を巡るバスで、集客力の高いウポポイから二風谷に観光客を引き込むのが狙いだ。新型コロナウイルス対策で制約もある中、3日に今季の運行を始めたバスに乗車し、乗客の反応や課題を探った。
「やっと二風谷に行けます」。始発の札幌からバスに乗った東京の門田ゆかりさん(58)は、アイヌ民族の少女が活躍する漫画「ゴールデンカムイ」に出合ったことなどをきっかけにアイヌ文化に興味を持ち、ウポポイには昨年7月の開業以来、3回訪問した。だが、二風谷は「車を運転できないので諦めた」という。
今回、二風谷への初訪問が実現し、「両方を回りたい人には周遊バスはすごく便利」と歓迎する。ウポポイを経て到着した二風谷アイヌ文化博物館では、柄にアイヌ文様が彫り込まれたマキリ(小刀)に顔を近づけ「展示用の美術品ではなく、日常道具として作られたんですね」と感心した。
「セタプクサ号」は平取町に一大群生地があるスズランを意味するアイヌ語を冠した。札幌発着の1日1往復で、ウポポイと二風谷コタンに各2時間滞在する。運賃は3千円で、少人数ならレンタカーより割安で、免許のない人には貴重な移動手段だ。新型コロナウイルス対策で定員は通常27人のところ15人に抑え、3日は12人が乗った。
町が2019年に施行されたアイヌ施策推進法に基づく交付金を活用し、札幌観光バス(札幌)に運行を委託した。昨年は10月1日から11月5日の月曜を除く計31日間走り、計291人が乗車した。今年は7~10月の土日祝日に運行する。
ウポポイの国立アイヌ民族博物館には多彩な民族衣装や工芸品が並び、歴史や文化、世界観などアイヌ民族の全体像を知ることができる。一方、二風谷は多数のアイヌの伝統工芸家が集まり、工芸品を見るだけでなく、製作現場を間近に見ながら工芸家と語らえるのも魅力だ。千葉県から来た女性は町アイヌ工芸伝承館ウレシパで刺しゅうを施す職人を見て「文様を縫う作業を間近で見られ、服の作り方を聞けた」と喜んだ。
ただ、女性は「機織りや刺しゅうを体験してみたかった」とも述べた。平取町の遠藤桂一町長は「二風谷は体験できる場があまりない。町を挙げて工芸技術を継承する人材育成に力を入れているので、そうした人材を活用して体験メニューを充実させたい」と語る。
一方、コロナ収束後を見据えた集客も課題だ。遠藤町長は「コロナ禍では大々的な宣伝は難しいが、収束後は広告やネットなどを通じて東京、札幌など大都市圏で周知し、乗客の定員も増やしたい」と述べ、客足次第では平日運行も検討できると期待している。セタプクサ号についての問い合わせは札幌観光バスツーリズム営業部(電)011・206・0225へ。(杉崎萌)
※「ウレシパ」の「シ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/565707
【白老、平取】日高管内平取町が、アイヌ伝統工芸家が集まる町内の二風谷コタンと、12日に開業1年を迎える胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を結ぶ周遊バス「セタプクサ号」を運行している。JR札幌駅前から新千歳空港を経てウポポイ、二風谷を巡るバスで、集客力の高いウポポイから二風谷に観光客を引き込むのが狙いだ。新型コロナウイルス対策で制約もある中、3日に今季の運行を始めたバスに乗車し、乗客の反応や課題を探った。
「やっと二風谷に行けます」。始発の札幌からバスに乗った東京の門田ゆかりさん(58)は、アイヌ民族の少女が活躍する漫画「ゴールデンカムイ」に出合ったことなどをきっかけにアイヌ文化に興味を持ち、ウポポイには昨年7月の開業以来、3回訪問した。だが、二風谷は「車を運転できないので諦めた」という。
今回、二風谷への初訪問が実現し、「両方を回りたい人には周遊バスはすごく便利」と歓迎する。ウポポイを経て到着した二風谷アイヌ文化博物館では、柄にアイヌ文様が彫り込まれたマキリ(小刀)に顔を近づけ「展示用の美術品ではなく、日常道具として作られたんですね」と感心した。
「セタプクサ号」は平取町に一大群生地があるスズランを意味するアイヌ語を冠した。札幌発着の1日1往復で、ウポポイと二風谷コタンに各2時間滞在する。運賃は3千円で、少人数ならレンタカーより割安で、免許のない人には貴重な移動手段だ。新型コロナウイルス対策で定員は通常27人のところ15人に抑え、3日は12人が乗った。
町が2019年に施行されたアイヌ施策推進法に基づく交付金を活用し、札幌観光バス(札幌)に運行を委託した。昨年は10月1日から11月5日の月曜を除く計31日間走り、計291人が乗車した。今年は7~10月の土日祝日に運行する。
ウポポイの国立アイヌ民族博物館には多彩な民族衣装や工芸品が並び、歴史や文化、世界観などアイヌ民族の全体像を知ることができる。一方、二風谷は多数のアイヌの伝統工芸家が集まり、工芸品を見るだけでなく、製作現場を間近に見ながら工芸家と語らえるのも魅力だ。千葉県から来た女性は町アイヌ工芸伝承館ウレシパで刺しゅうを施す職人を見て「文様を縫う作業を間近で見られ、服の作り方を聞けた」と喜んだ。
ただ、女性は「機織りや刺しゅうを体験してみたかった」とも述べた。平取町の遠藤桂一町長は「二風谷は体験できる場があまりない。町を挙げて工芸技術を継承する人材育成に力を入れているので、そうした人材を活用して体験メニューを充実させたい」と語る。
一方、コロナ収束後を見据えた集客も課題だ。遠藤町長は「コロナ禍では大々的な宣伝は難しいが、収束後は広告やネットなどを通じて東京、札幌など大都市圏で周知し、乗客の定員も増やしたい」と述べ、客足次第では平日運行も検討できると期待している。セタプクサ号についての問い合わせは札幌観光バスツーリズム営業部(電)011・206・0225へ。(杉崎萌)
※「ウレシパ」の「シ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/565707