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白人の逆襲:俺たちは人種差別主義者ではなかった!

2021-07-24 | 先住民族関連
JBpress 2021/07/23 07:00
民主対共和で米国二分の間違い
 今の米国は分裂、分断しているという。
 保守対リベラル。共和党対民主党。バイデン支持者対トランプ支持者。東・西部対南・中西部。都市居住者対ルーアル(地方非都市)居住者。富裕層対貧困層。高学歴者対低学歴層。白人対非白人(黒人、ラティーノ、アジア系)。
 こうした2つの勢力が組んずほぐれつの争いを続けて、米国は真二つに分断されている――。こう「解説」する米国通ジャーナリストや学者がいる。
 だが米国に長年住み、米国を肌身に感じて生き、内部から「定点観測」している筆者にとっては、こうした見方はどうも実態を反映したものだとは言いにくい。
 正確に言えば、「2つの勢力」が拮抗しているわけではないのだ。「3つの勢力」が拮抗して3分断されていると言った方がいい。
 保守、リベラル、そしてその両者でもない「中間無党派」が睨み合って3分断されているのだ。
 先の大統領選でジョー・バイデン氏を大統領に選んだ決め手となったのは、この「中間無党派の良識」が民主党に加担したことだった。
 おそらく2022年の中間選挙を決めるのもこの中間無党派が民主党、共和党のどちらを選ぶかで決まりそうだ。
 カリフォルニア大学バークレイ校の政治学者の一人は、こう指摘する。
「中間無党派層が今の米国のバランスを保っているコモンセンス(良識)になっている。2020年の大統領選、上下両院選で民主党を勝たせたのは、この層が民主党に票を入れたからだ」
1990年代に確立した社会・歴史認識
 対立軸は新型コロナウイルスのワクチン接種問題からインフラ投資法案など、米国市民の健康から経済・雇用に至る必須のアジェンダにまで及んでいる。
 しかし、これは共和党対民主党の「政争」の道具にされており、一般大衆にはそのアジェンダの中身が分かるわけでもない。
 そうした中で保守派が見つけたのが歴史認識問題だ。
 これは白人保守強硬派対黒人+白人リベラル派の激突と言っていい。
 その渦中に飲み込まれているのが、今回ご紹介する一冊の本だ。小学生向けのイラスト本だ。
 著者は、アナスタシア・ヒギンボッサム氏。メリーランド大学在学中からイラスト本を著し、卒業後は数々の問題作を世に出してきた。
 今、米国で最も論争の的になっているのが同氏が2018年に著した「Not My Idea」(「それは私の考えじゃない」)。
(https://www.amazon.com/dp/1948340003)
 一人の白人の女の子の日常生活を描きながら、生まれてから今までなぜ、自分が黒人やラティーノに比べると、恵まれた特権を有しているのか、白人であることが米社会では有利なのはなぜかをイラストと文章でつづっている。
 しかもその白人の特権が先住民族であるアメリカインディアンを彼らの土地から追い出し、アフリカから連れてきた黒人を奴隷労働でこき使ってきたことで確立した社会構造にあることを指摘している。
 この考え方は学界では「批判的人種理論」(Critical Race Theory)と呼ばれており、1995年にウィスコンシン大学のグロリア・ラドソン・ビリングズ、ウイリアム・テイト両教授が確立した社会歴史観だ。それ自体何ら新しいものではない。
(https://www.unco.edu/education-behavioral-sciences/pdf/TowardaCRTEduca.pdf)
 日本人を含め世界中の歴史学者が共鳴する米国建国史観だ。
 ところが今年に入って南部、中西部州の知事や州議会が相次いでこの本を「公立小学校で副本として使ってはならぬ」と言い出したのだ。
 その理由はこうだ。
「『批判的人種理論』はあたかも、白人は人種差別主義者(レイシスト)であると断定しており、その白人が建国したアメリカ合衆国は人種差別国家だと子供たちに教えている」
「国家に対する誇りや愛国心を薄れさせる以外の何物でもない」
 なぜ、今になってこうした議論が白人保守派から出てきたのか。その意図をたどっていくと、2020年9月9日のドナルド・トランプ大統領(当時)に突き当たる。
 この日、トランプ氏はこうツイートした。
「私は、米連邦政府から『批判的人種理論』を直ちに追放する。この理論を聞くにつけ、反吐が出る。現状を報告せよ。直ちに消滅させる」
 この大統領令は、2011年にバラク・オバマ大統領(当時)が連邦政府職員に命じた「多様化促進指導」(Diversity Training)*1を盛り込んだ大統領令を消し去り、米国の制度、歴史に誇りを持たせるのが狙いだった。
*1=オバマ大統領令の狙いは、米国内のすべての職場における人種的偏見を排除し、公平性に対処するため連邦政府職員が率先してこれを実施する目的で下された。
(https://time.com/5891138/critical-race-theory-explained/)
 このトランプ氏のツイートを受けて、保守派が動き出した。
 トランプ支持派の億万長者、チャールズ・コーク兄弟*2が陰で蠢いた。
 傘下のシンクタンクや保守派学者やメディアを動かして「批判的人種理論」粉砕のキャンペーンにカネをばらまいたとされている。
*2=石油、天然ガスなどのエネルギー産業を牛耳る「コーク・インダストリーズ」のチャールズ・コークCEO(経営最高責任者)とデイビッド副社長。2人の資産総額はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツとほぼ同じ800億ドル。
 トリニティ大学のアイザック・カモラ教授はその理由についてこう指摘する。
「コーク兄弟の政治哲学は、個人が金持ちになるのも貧乏人になるのもその人の素質と努力次第というもの」
「白人が特権を持っているのはそのためであり、アメリカインディアンを虐待したり、黒人奴隷にしたことで白人が豊かだという考えには真っ向から反発しているからだ」
「『批判的人種理論』は白人キャピタリズムの敵と考えている」
(https://dakotafreepress.com/2021/06/10/koch-money-protecting-capitalist-myths-by-fighting-anti-racist-education/)
反「批判的人種理論」報道1701回
 保守系のフォックス・ニューズはコメンテイターやキャスターを総動員して「批判的人種理論」が「白人を見たらレイシストだと主張する考え方だ」と吹聴した。
 2020年1年間で132回、2021年に入ると、6月の第3週までに1701回も取り上げられた。
(https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/07/opponents-critical-race-theory-are-arguing-themselves/619391/)
 SNSでは保守派活動家のクリストファー・ルフォ氏が前述のヒギンボッサム氏のイラスト本を取り上げ、12州25校(その後15州30校に増える)がこの本を使うことを禁じたと“特報”した。
(https://www.washingtonexaminer.com/opinion/yes-critical-race-theory-is-being-taught-in-public-schools)
 反対運動は相乗効果を生み、テキサス州のクレグ・アボット知事は本の禁止だけでなく、「人種主義に関する歴史」を公立学校で教えることまで禁じる法案に署名した。
 こうなると、「米国の歴史教育は中国や北朝鮮と同じで、一方的かつドグマテッィクなものになり、国際的スタンダードからは大きく外れてしまう」(主要シンクタンク研究員)。
 2024年の共和党大統領候補の座を虎視眈々と狙っているテッド・クルーズ上院議員(フロリダ州選出)は、「批判的人種理論」論争を政争の具に使っている一人。
「この理論でいけば、白人は一人残らずレイシストということになる。要するに白人の子供たちはみな悪人だということになる。そんな馬鹿な話があるものか」
 だが、冷静に考えれば、「批判的人種理論」はそんなことを言っているわけではない。冒頭で触れた中間無党派層はどう見ているのか。
 筆者は2人の中間無党派の人に聞いてみた。
 一人は、ノースカロライナ州に住む大卒の作業療法士の女性(45)だ。
「Whiteness (白人だからと言って優越性を誇示すること)が悪い行為だということでしょ。だとすれば、そういう特権意識のない白人になればいいだけのこと」
「ヒギンボッサム氏はその難しいテーマをうまくまとめている。子供たちに読んで聞かせる教師や両親がどう解釈するかの方が大事です」
 もう一人はワシントン州に住む白人のカトリック系中学校の女性教師(35)。
「この本は子供とその両親、そして我々教師に質問をぶつけてきているのです」
「『人種差別は私の考えではないわ。私は、それを弁護なんかしないわ。あなたはどうですか』と問いかけている」
(アイヌの人や在日朝鮮・韓国人や華僑の人たちを除けば)単一民族の日本人にはなかなか分かりづらい米国の人種問題。
 日本人にとっては当たり前のようなこの「歴史認識」をめぐって対立する白人保守派と黒人+白人リベラル。常識的には後者の肩を持つ中間無党派層。
 保守派3分の1、レベラル派3分の1の対立ばかりマスコミ報道で目立つが、「サイレントな3分の1」が大統領選挙を左右していることを忘れてはいけない。
 歴史認識の論争も「時の氏神」は中間無党派。彼らの良識が解決してくれるかもしれない。
(高濱 賛)
https://news.goo.ne.jp/article/jbpress/world/jbpress-66175.html?page=1
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