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鉱物の部屋へのいざない

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石が描く

2012-01-04 11:30:01 | 日記・エッセイ・コラム

昨日はシブサワ・コレクションであるトスカナ石の事にふれましたが、その石についてもう少し書き足します。

私は10数年前に澁澤龍彦展の展示物の中で、その楕円形の小さな石を見ました。昨日の写真の石はちょうどそれと同じ頃の新宿ショーでイタリア人のディーラーから購入したものです。シブサワ・コレクションのトスカナ石は「澁澤龍彦事典」(コロナブックス)という本に拡大写真が載っています。実物は昨日の写真の石と同じサイズの小さな石です。

澁澤龍彦さんの「イタリアの夢魔」という本の中の「パドヴァの石屋」というエッセイに、その石を買った時の事が克明に書いてあります。パドヴァの街を歩いていて石の店を見つけて「石といっても宝石細工なんかではなく、むしろ鉱物といったほうがよいような、いろんな種類の原石や結晶体である。化石もある。科学博物館の陳列室みたいで、私はこういう雰囲気が大好きだから、眺めているだけでも楽しいのである。」と書いてあります。そして最後の方で「それにしても日本に、パドヴァの石屋のような雰囲気の店がまったくないのは、どういうわけだろうかと私は考えざるをえない。」とも書いてあります。

私は長年の夢であった鉱物標本店を開いたのですが、昨日「パドヴァの石屋」を読み直して、澁澤龍彦さんのようなお客さんのニーズに答えられるような石屋を目指していたことを再認識しました。

今日の話題は「石が描く」です。

Dscn3619

?ドイツ ゾルンホーヘン産 デンドライト(シノブ石)

この写真はデンドライトです。模様に見える黒い部分はマンガンの成分が水溶液の形で浸透し、その後、再結晶して樹枝状のインクルージョンを生成したものです。この標本は中国人の芸術家 蔡國強氏の作品を彷彿します。まるで火薬の爆発による絵画のようにも見えます。

このデンドライトの入った水晶は人気がある石で、デンドリチック・クォーツといい、ものによってはかなり高価なものもあります。水晶の他にはアゲートやジャスパーのものもあり、欧米ではコレクターも多いと聞きます。

そういえば、もう間もなく「不思議で美しい石の図鑑」(山田英春著)が発売されます。2月9日発行予定なので待ち遠しいです。

コメント (2)
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