「QE3?エーッ、本当にやったの?」
米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)を発表したニュースが流れた時私は思わず呟いた。年をとるとやたらと独り言が増える。バーナンキ連銀議長は市場向けに「やるぞ、やるぞ」という言外のメッセージを投げながら、ギリギリまでじっと様子を見ると私は思っていた。QE3は抜いてはいけない伝家の宝刀だと。
そこまでやるか
確かに米国の景気回復の停滞、特に直近の調査で雇用の改善が進んでないので、QE3の可能性が5割から6割に高まったとの専門家の見方が伝わっていた。だが、12月の大統領選を控え現政権の支援に見えるような金融政策は直ちには打ち辛いとの観測のほうに私は共感していた。
しかも、総枠も期限も設けない踏み込んだ内容だった。FRBは「打ち出の小槌」と宣言したようなもので、さすがに市場にとってもそこまでやるかという驚きを与えたと報じられた。裏返せば、バーナンキは先月職探しを諦めて失業率が低下したのを深刻に捉え、ここらでドーンとやらないと折角の景気回復が腰折れになるという危機感で決断したとの推測が当っている気がする。
背景は政治の選択肢がないことか
雇用問題は米国大統領選の最大の争点だ。オバマ・ロムニー両候補が真っ向から対立して論争するテーマに、FRBが分けて入ってど真ん中にでっかい石碑を置いたようなものだ。選挙に有利な政治判断と非難されるのを嫌い12月まで政治が動かない、それまで待てないとの背景がここまで踏み込んだ金融政策を採った理由だと私も思う。
一方、欧州中央銀行(ECB)の南欧国債買支え表明も、欧州の政治が機能せず政策が遅れ気味になる中で、政治に代わって踏み込んだ結果であった。期せずして欧米の中央銀行が政治に踏み込む結果になった。原因は異なるが政治が適切な対応が出来ない為の行動だった。
効果は期待できるのか
話を経済に戻す。欧米の緩和策は実際に世界経済を改善できるだろうか。リーマン・ショック後QE1は絶大な効果を発揮し、世界恐慌の淵から抜け出す大きな貢献をした。だが、QE2では最早それほどの効果は得られず、市場にお金をジャブジャブとばら撒く副作用も見られた。
お金の行き先がどこか、どうも心配だ。バーナンキは住宅需要と株価上昇が消費を刺激すると期待している。だが、財政規律の乱れの批判は根強い。QE3はよほど注意しなければ、副作用で世界経済は悪い方向に向かう恐れすらある。その前から米国の自動車市場はサブプライムまがいのローンで販売好調だと報じられた。少なくともここではお金が澱んでいた。
世界経済と個人資産のネジレ?
とは言うものの、二つの中央銀行の緩和策発表以来、私の退職金を元手にした老後の蓄えは、昨年来欧州危機でへこんだ損を取り戻した。何時まで続くか分からないが、個人資産のボトムラインはとりあえず吉と出ている。世界経済の先行き懸念と自己資産の現時点での改善に直面して私は若干複雑だ。
世界に出回る巨額のお金は必要とする所に供給されるのは一部、その多くが投機的な領域に向かい実体経済を捻じ曲げ再びバブルを惹き起こす恐れが強い。既に世界の株価や商品価格は大幅に上昇した。市場は完全にリスクオンのモードに入った、私の改善もそれを反映したものだ。
政治が機能せず中央銀行が金融政策を乱発する姿は、条件は異なるのだが春先に読んだ本の題名「危機は循環する」(白川浩道)が頭の片隅にちらついて何だか不吉な予感がする。中央銀行は追い詰められて不本意な金融緩和に踏み切ったのかもしれないと。■
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