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インテル排除勧告

2005-03-09 13:13:47 | 社会・経済
今朝の朝日新聞はインテル社の独禁法違反の排除勧告を大々的に報じた。どのテレビ放送も依然としてライブドアとフジテレビの買収合戦を扱っているのと好対照である。ニュースの咀嚼能力に欠けるのか視聴者を見くびっているのか、何をニュースにするのか誰を対象にするのかの基準の差だろうか。私は80年代の代表的CPUである80486以来仕事でインテル社の営業や開発技術者と直接関わるようになり、彼らが大変なプレッシャーの元で働いていることを肌で感じていたので、このニュースを聞いて驚かなかった。

私の知る限りインテルの社員は非常に優秀で猛烈に働く。それでも一定期間に成果を挙げないと生き残るチャンスはない。私が付き合ったのは上記エリートだけではない。ワシントン州の工場にいたとき同じ地区に進出し工場建設したインテルに生産管理・技術の実務スタッフを好条件で相当数引き抜かれた。1年後たまたまその技術者の一人にサンノゼの飛行場で会った時、まだ同じところで働いているのは彼一人だと聞いた。インテルには短期間に実績を上げそれが自分の成果であることを示さないと居づらくなる環境がある。アンディグローブ元会長が言ったようにパラノイアしか生き残れないのも大げさではない。しかし、成果を挙げれば得られるものも大きい。私の付き合った当時のマネージャで億万長者になったものも多い。

今回の排除勧告はインテルジャパンが対象である。日本企業が顧客なので本社とはやや異なる日本的な香りがある。しかし変わらないのは本社が支社に求める業績達成のプレッシャーである。90年代にも独禁法遵守のため透明で公平な価格、即ち取引数量に基づく価格の徹底の指示が本社から出ていた。一方で顧客は当然それ以上に安い価格を求めて強烈な圧力をかけ、本社からは欧米と同じかそれ以上のシェアが求められた。2000年頃日本市場では融通のきかないインテルの数量連動価格の弱みをついて低価格設定が功を奏しAMDのCPUは世界の他地区より高いシェアを獲得し、インテルは78%までシェアを落とし本社で大きな問題になっていた。当時でも、数量ベースの基準価格を変えないが、パソコンメーカのマーケティング費用を負担し、販売店に同社CPU使用製品の販促支援をしていた。しかし、顧客はそれ以上を求め、シェア奪還にはもっと効果のある施策が必要と判断したのだろう。

今回指摘されているパソコン5社への特別価格、先行値下げ、開発資金提供は従来から一歩踏み込んだ拡販施策だったようである。結果として2004年には90%までシェアを戻した。半数のシェアを失った競合会社のAMDはたまらず訴えたのであろう。インテル社は従来から独禁法対策には気を使っており多くの弁護士を抱え、当然事前に十分検討した結果実施したことであると思われ簡単に引き下がるとは思えない。インテル本社は最終顧客に何も不利益を与えていない、取引先の要請による値引きで押し付けではない公正な取引であるとコメントしたようである。Wintelビジネスモデルは90%以上の圧倒的なシェアが前提であり、そのシェア維持は利益確保するための生命線であり、インテル社にとっても後には引けない。欧州でも同様の調査が実施されていると報じられており注目していきたい。


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