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正論がぶつかる矛盾

2022-12-16 20:59:56 | 国際・政治
今に始まった訳じゃないが正論がぶつかる矛盾を何度も見て来た。その点、新聞は都合よく出来ている。1面にでかでかと正論をぶち、3面にその反論を言い訳のように載せる。大抵の場合それは異なる視点から見た正論A と正論Bの場合が多い。だが、時に視点は揺れ動く動点になり、判断基準にならないことがある。

また、新聞自体の視点が偏っている場合もある。そんな時は購読者が異なった視点で記事を見て評価することが求められる。一昨日の日本経済新聞朝刊のFTの転載記事「W杯の国家主義、すでに過去」(S・クーパー)は、著者が異なる視点からW杯を見て評価する興味ある内容だった。以下に私なりの視点で評価する。

1)W杯 階級社会
記事はカタールで実施されているW杯で、混乱すると予想された異なる文明同士が問題なく共存しており、ナショナリズムよりコスモポリタンの祭典になっていると評価する。地下鉄車内でサウジ男性一行がイランとメキシコ人グループの合唱に入り混じり、それを英サポーターがほほえましく見守ると描いている。褒めまくってる。

W杯はナショナリズムよりコスモポリタンの祭典だという。ヒジャブで覆った女性とショートパンツの女性が入り混じるといった宗教の違いを乗り越えた風景が見られた。だが、途上国からW杯のためにカタールに来たのはその国・地域のエリート層だけ、W杯を観戦しに来た人に共通する排他的要素は階級だ。

選手についても同じことが言えるという。現代のZ世代(1990年代後半~2010年代初め生まれ)は相手チームの選手を同僚として扱う。イランが米国に負け1次リーグでの敗退が決まった時、リベリア大統領の息子であるティモシー・ウェアを含む米国代表の選手は涙を流すイラン人選手たちを慰めた。W杯の56試合で出されたレッドカードはたった2枚だという。

FIFA(国際サッカー連盟)の視点はまさにここにある。その意味では今回のW杯は大成功だった。一方で、
カタールには移民労働者の大量死や女性差別等の人権問題が指摘され、大会前から西側からの非難の対象になっていた。又、カタール開催に絡み汚職疑惑でEU副議長が逮捕される事態になった。選手からも問題指摘する声が上がっていたのに、日本はダンマリで国際社会から取り残され離れた視点で見ていた。

2)日本の政治混乱 政争の具
同日の朝刊の中外時評「痛み止め依存の静かな危機」は最初に「東京で会う日本人は、なぜ悲観一色なのだろう」深刻な危機が襲うわけでもない。日本の政治も米欧の混迷ぶりに比べればずっと安定している。だが、人々の話題は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の関りや新型コロナウイルスへの心配に向かう。

なぜ日本人は前を向かないのだろうと、ある米国人の疑問の声を取り上げている。

外国人から見ると日本の雇用や生産活動はそれなりに堅調だ。なのに、この国の活力や競争力の衰えを見逃せない。スイスの経済大学院の教授は「世界デジタル競争力ランキング」で日本は63カ国・地域中29位と過去最低。危機感や挽回への気概が薄れ、当面の生活や目に見える利益にどうしても関心が集まる。

日本は厳然とした地位低下への危機感や挽回への気概が薄れ、当面の生活や目に見える利益にどうしても関心が集まる。先回りして巨額の財政支出をいとわない岸田文雄政権の「過剰な気配り」が、その傾向に拍車をかけていると記事は指摘している。だが、この論争の視点はずれまくっていると私は感じる。

先ずはあるべき防衛強化とその財源として増税の是非について議論すべきだが、いつ議論すべきかについて党内から異論が出たとマスコミは大騒ぎし、それを見て野党は首相を非難する。何が大事で何を議論すべきか全くわかっていないように感じる。東京に来た外国人が何故騒いでいるのか頭をかしげるのは当然だ。

3)ヨーロッパの混乱 フランスの視点
ロシアのウクライナ侵攻を巡り、欧州各国の足並みの乱れが目立ってきたと、14日の日本経済新聞は報じた。フランスはウクライナの越冬を支援する国際会議を開き、発電機の供給拡大など4億ユーロ(約580億円)を超える支援実施で合意した。だが、ドイツのショルツ首相など主要国首脳は参加を見送ったという。

ウクライナ支援の主役はこれまでのところ米国だ。ウクライナに兵器を大量に供給し、欧州における存在感を高めた。一方、ウクライナへの国別の援助総額(11月20日まで)で、フランスは6位の約14億ユーロにとどまる。米国の30分の1以下、ドイツの3分の1にも満たない。フランスの軍事支援は約4億7千万ユーロ、米国の48分の1、ドイツの5分の1にすぎない。欧州には「フランスは口だけで実行しない」との不満がくすぶる。

マクロン氏は威信をかけて支援会議の開催に力を入れてきた。背景にはフランスへの不信感がある。フランスが侵攻直前までロシアの意図を読み違え、外交面での指導力を発揮できなかったという指摘を意識した。マクロン氏が独自外交の一環としてロシアとの停戦を探る動きをみせている事実への反発も根強い。

同氏は3日、仏テレビのインタビューでロシアが戦争終結に向けた協議に合意すれば、西側諸国がロシアの安全保障の必要性を考慮すべきだと言明した。ロシアに融和的だともとられかねない発言(私もそう思う)で、東欧諸国やウクライナは反発した。

マクロン氏の主張は日本のニュース番組でも良く聞かれる。一部評論家は戦争は悪だ、出来るだけ早く停戦し犠牲者を無くすべきだと訴える。だが、最大の被害国であるウクライナに後に引く気配はない。米国始めNATOとくに東欧諸国も支持する。ロシアの「やったもん勝ち」は避けるべきだと私も思う。

この視点の違いはマクロン氏の主義主張というより威信を高めたいという、寧ろプーチンのロシアと同じ発想のようなものを私は感じる。主義主張に基づく視点の違いというより、もっとえげつないと思う。ショルツ独首相、メローニ伊首相、スナク英首相等の主要7カ国(G7)のほか欧州首脳は軒並み欠席、閣僚すら派遣しない国もあったという。記事は「対ウクライナ結束に陰り」と指摘したが、視点の違いは深刻であり私も不安だ。■

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