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国債格下げの意味

2011-01-29 17:32:23 | 国際・政治

S

&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が27日日本国債の信用格付けをAAからAA-に引き下げたと報じられた。分かり易く言うと、もうワンランク引き下げられると国債を買うのはギャンブル(投機)と同じと見做されるところまで来た。その理由は、GDPの2倍という異常な財政赤字を現在の政治状況は対応できず、経済も低成長が続くからと説明されたという。

これを受けて発表直後に為替市場は円安が進んだが、今朝方は1ドル82円にまで一気に値を戻し、引き下げ前の水準に戻した。予想されたことではあるが、日本国債の9割以上はS&Pの格付けなど気にしない国内で消費されるので、「当座」の市場への影響は無かった。

市場の反響は極めて予想通りだったが、国債格付け引き下げが伝えようとしている重要なメッセージは政府や国民には到達しなかったように感じる。日本の財政赤字に対して欧米の見る目は我々が考えるより厳しく緊急度が高いことを、もっと真摯に受け取るべきだと私は思う。

界の反響は、しかし、残念ながら極めて近視眼的で短絡的なものだったと思う。折から通常国会が召集され施政方針演説と野党党首の代表質問が戦わされていた時だった。しかし、自公など野党の主張はマニフェストの訂正、首相退陣と解散総選挙を繰り返すだけだった。

S&Pの格付け引き下げ発表に関しては、首相コメントの揚げ足取りだけとは、まさに政治の貧困さを象徴するニュースだった。野党が野党なら、民主党も小沢派・反小沢派の抗争では声高に喚いた議員諸君の発言は全く報じられなかった。君らの仕事は一体何だという気分になった。

国債格付け引き下げのメッセージは、単に政府に対する警告ではないと私は考える。深刻な財政赤字という国難をどう解決して行くか、「日本の政治システム」のトータルな能力が問われていると。つまり、日本の議会制度の下で政府と与野党がどのように解決策を見つけ対応していくか、だ。

大方のメディアは菅内閣の力とか首相のリーダーシップに対する問いかけで終っているが、その中で日本の政治システムに対する疑問符(日本経済新聞1/28)と捉えているのは正しい。しかし、社会保障と税制の一体的見直しというと、増税路線と言い換えて報じるのも彼らであり国民は迷走する。私は「政治システム」の中にはメディアと国民を含み、我々の責任の重さも強調したい。

政赤字問題は国民が痛みを乗り越えていくしか解はない。年々増加する社会保障は誰もが認識する問題となったが、社会保障の充実を求める一方で負担は絶対反対する。企業の払う税金で補助を受けてきた農業は、世界と戦う企業の競争力を高めるのは反対する。

利害が相反しても国家の重要政策を最早先送りできない。唯一の解決策は超党派的な取り組みしかない(田原総一郎1/27日経BP)と私も思う。S&Pからのメッセージは、「超党派の財政赤字対策をさっさとやれ、そうするようにメディアと国民は強い圧力をかけよ」と私は解釈する。

格下げされたのは、「どうせ日本は出来ないだろう、そんな解決能力はないという疑い」を表現したものだ。昔から日本は黒船とか戦争に負けた時しか改革できなかった。国債が焦付き破綻すれば、論理的には年金など社会保障は大幅削減、議員や公務員も減らせる。急激な円安が進み輸出産業の競争力が高まり、アジア危機後の韓国の様に改革が進み急回復できるかも。悪くない。

だが、それはどうも安易な考え方のようだ。K. Benner(CNN 1/27)の記事によれば誰も日本を救済できないという。世界同時信用危機で米国の大銀行は「大きくて潰せない」かったが、日本も大きくて潰せないという。80年代末のバブル破裂と同じように、日本の財政問題も欧米先進国の他山の石になると注目されているという。というか反面教師になるのかも。■

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