ドイツW杯で日本代表の早い敗退でテレビや録画機の売り上げが鈍化し、4月のW杯商戦開始以来不調だったパソコン需要が戻ると期待されたが、Gfkによれば電気量販店の6月パソコン販売台数は対前月比9.3%減,販売金額は同11.0%減(前年同月比では,台数ベースで16.5%減,金額ベースでは19.6%減)であった。
総務省からのデータは6月の速報値はまだ公表されてない。5月家計消費は前同比実質1.8%減だが、そのうち教養娯楽消費は同実質3.8%増であり、決して環境は悪くない。パソコンから他の商品に消費が向かっているということだ。
通年で見ると好調に滑り出した第1四半期の売り上げ増を食いつぶし終にマイナス成長になった。3ヶ月連続で前年割れが続いた結果、2006年1月からの累計販売金額は対前年同期比10.4%減と二桁のマイナス成長だ。
経営の視点から言うと前年同期比売り上げ二桁減というのは非常事態である。特にパソコンのビジネスモデルは1-2%の薄いマージンをベースにしているので、殆どのパソコン・メーカーにとって販売減は即赤字転落の危機に陥るはずだが、表向き緊急事態の警報が聞こえてこない。
その理由を理解するヒントは価格にあるかもしれない。今回の販売不振では従来と異なりパソコンの値崩れが起こっていない。6月の平均販売価格は,デスクトップ型が前月より1931円下落して12万9006円,ノート型は前月から2873円下落して13万4470円だった。
通常はサプライ・チェーンのどこかに、特に下流に余剰在庫があると値崩れの恐れがある。近年の販売店及びメーカーの在庫管理技術が進歩し、需要予測精度の向上と調達のリードタイム短縮により在庫水準が低下した。今回の急激な需要減に対応できたとしたらたいしたものだ。しかしそれだけではまだ説明が十分ではない。
部品レベルでは主要部品の液晶ディスプレイはテレビ及びパソコンの需要減の影響を受け値下げが続いていると聞いている。製品価格へ波及する可能性は高い。いずれにしろメーカーは製品棚卸水準を適正に保てても、売り上げが二桁も減るとそのままではビジネスは維持できない。
メーカーは現状の販売減の原因分析と今後の販売予測を見直し、ビジネスのあり方を見直しているはずだ。その結果として、今年後半もしくは来年春までにパソコン業界でシェークアウトが起こる可能性は極めて高い。(私の予測では確度0.7)■