かぶれの世界(新)

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産経の野心的な試み

2006-07-07 21:35:53 | ニュース

ライブドアの日本放送買収を巡るフジテレビとの戦いは腰砕けに終り、楽天とTBSの関係も中途半端な状態が続き、大変革が予想されたテレビ業界は一息ついた。しかし、世界を眺めると新聞・テレビなど既存メディアはインターネットに変容を迫られ危機に立たされている。

日本のメディアは口ではインターネット事業に取り組んでいるというものの、そのウェブサイトを見れば明らかなようにお粗末である。比較的ましな新聞系ウェブサイトでも、そのウェブ設計は英米のニュースサイトと比べると酷く見劣りがする。NYタイムスやBBCと比較してニュースソースとしての価値に格段の差があり、情報収集として利用するには物足りない。

米国では状況は遥かに進み既存の報道ビジネスは危機に立たされている。米国新聞協会(NAA)の調査によると平日版新聞の平均発行部数はこの半年間(昨年9月時点)で2.6%減少し、インターネットによる発行部数減がいまだに続いていると報じた。この減少率は1991年以来過去14年間で最悪の数字だそうだ。

一方新聞社のウェブサイトの利用者は引き続き記録的に数字を伸ばしている。NAAによれば、同じ2005年9月に、インターネットユーザー全体のほぼ3分の1に当たる4700万人以上が新聞社のウェブサイトにアクセス、オンライン利用者の追跡を開始して以来の最高記録だった。先の大統領選ではインターネットを見て投票を決めた比率が新聞を上回った。

今のところウェブサイトはお金を生まず、結果として発行部数減が総売り上げ減を招いている。NAAによると,米国の新聞のピークは1984年で,2003年の日刊紙の発行部数はピーク時に比べ13%も減った。最近はインターネットの台頭により部数下落に加速がつき、経営悪化が表面化した。売上高の7割強を占める広告売上は,1985年の430億ドルから2003年の449億ドルと18年間でわずか4.4%の伸びに留まっている。

ワシントンポストやNYタイムスなど大手から地方新聞まで、記者や後方スタッフを削減し、日曜版・ローカル版の縮小、ページ数の削減、サイズの縮小など必死のコストダウンが続けられている。例えば数ページを費やす株式市場の記事が一般紙からなくなる日は近い。

手元にデータがないが日本の新聞業界も発行部数が減少傾向にある。米国と異なるのはウェブサイトのアクセス数も伸び悩んでいるといわれている。政治や経営は透明性とかいっても日本の新聞は発行部数すら隠蔽されている。しかし全国紙といわれている上位3社の発行部数は数百万から1千万部を超え、多くても百万程度の米国とは事情は異なる。

日本で発行部数減がニュースになっていないのは、経営にインパクトが出るほど深刻な状態になっていないからだろうか。日本の大新聞は部数の多い全国紙と部数が限られる高級紙の両方の性格を持つといわれ、発行部数が一桁多い上位グループは経営が安定しているのかもしれないが、私は時間の問題だと思う。

実際、危機感を持っている新聞社があるようだ。最近RSSから手繰って行き調べたニュースによると産経新聞が興味ある試みをしている。産経グループの記者60人余がブログに書き込み、読者も登録して参加できるブログの要素を取り入れた双方向メディアの場を作った。

BBCなどに比べるとまだまだだが、日本の新聞系ウェブサイトとしては斬新な仕組みになっている。他社の類似サイトが及び腰でアマチアに毛の生えた程度なのに比べ、取り扱うテーマといい投入されるリソースといい本気度が伺われる。

サイト名はiza(いざ!)β版(下記URL参照)、先月から試行版として開設、8月に正式サービスをカットインする予定だそうだ。読者の記事の真贋性や著作権など未解決の問題を残したまま走るという、日本のメディアとしては前のめりで野心的な取り組みで一石を投じたと私は評価する。

http://www.iza.ne.jp/

しかしビジネスモデルとして成功するかどうかは又別の問題だ。どうやって広告を取れるかが鍵になるだろう。新聞が長い間かかつて築き上げてきたジャーナリズム規律を保つと同時に、ビジネスとしては報道の枠を越えた発想がないと折角のトライが無駄になる恐れもある。もちろん参加する読者の成熟度も決定的なKSF(成功要因)の一つである。■

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