「今世紀最大の危機、肥満」と題して世界的な肥満の問題を報告したのは一昨年だった。文部科学省の学校保健統計調査によると過去20年に子供の肥満が約1割に増え、厚生労働省は将来の生活習慣病予備軍(肥満児童)を減らすため、2006年度から子どもの肥満防止対策に乗り出すと報じ(朝日新聞06/01/05)、肥満が更に進んでいることがわかった。
子供の肥満は大人になってもそのまま肥満になる確率が高く、来るべき老齢化社会に予想される医療費高騰を抑制するため子供からの肥満対策が必須である。現在でも30-40代の日本人男性の3割が上半身肥満(2003年厚労省調査)というから放っておけない。
「肥満先進国」の米国の状況をみると、子供の肥満は日本より深刻だ。6-19歳の子供の31%が過体重(overweight: BMI25-30を子供の成長に換算)もしくは過体重候補で、70年代から2-3倍に増えたと報告している(公衆衛生局05/03)。
最近ノースウエスタン大学から興味ある調査結果が報告された(AP06/01/11)。それによると20年にわたって追跡調査した結果、血圧やコレステロールは正常だが肥満の人は心臓病で死ぬ確率は、同じ条件の通常体重の人より43%高い。記事は肥満であるだけでも病気だと思えと結んでいる。
90年代米国は少なくともビジネスの世界では肥満に対して余り寛容ではなかった。食欲をコントロールできない弱い人と見做され、私が会ったマネージャー・クラスで太っている人は記憶がない。一方、教育レベルや人種(ヒスパニック・黒人女性)により肥満の割合が4割を超え非常に高い傾向は依然続いている。
しかし、最近の米国社会の肥満を見る目は寛容になったらしい(AP06/01/13)。NPDの調査によると、自らの健康志向が強迫観念のレベルにまで達する一方で、他人の肥満に対してはこの20年間でマイナス・イメージが55%から24%に半減したらしい。
80年代流行したサラダバーも人気が無くなり、いまやメインコースにサラダを含む比率はたったの5%程度らしい。大人の肥満が過半数になり見慣れたのと、痩せた男性が肥満の女性と並ぶと貧相に見えるというのも理由らしい。肥満が進むと日本も何時かこうなるのだろうか。■