AM君がトップを切ってタテバイを登る。
「ゆっくり。とにかくゆっくり自分のペースでいいから確実なポイントだけを狙って。」
彼を見上げながらそれだけを言った。
基本的なコース取りはクサリやボルトを目安にすればいいだけ。
あとは届く範囲を見極めながら確実なホールドポイントとスタンスポイントを探せばいい。
いい感じでスムーズな登攀だ。
これなら心配ない。
この先、彼の姿は真っ白なガスの中に消えていったが、すぐに声が聞こえた。
「オッケーでーす! 来てくださーい!」
いよいよKMさんが続く。
AM君のコース取りを見ていただけに、スタートは順調だ。
メンタルももう大丈夫だろう。
頂上へ登りたいという強い決意が直前の会話の中から伺えた。
一つだけ気がかりなことがあった。
自分とAM君にとって何でもない距離にあるホールドポイントやボルトが、彼女にとってはやや遠い部分にあるのではないかと言うことだ。
握りたくても届かない(届きにくい)距離にあれば、それだけで体力や筋力の消耗は激しくなる。
彼女がスタートしてすぐは下から写真を撮っていたが、そろそろ自分も後続した方が良いと思った。
すぐ後に続けば、ポイントへのアドバイスができるのだ。
KMさんに落ち着ける場所があるからそこで待機しているよう事前に言っておいた。
よし、自分も登ろう。
ストレートの直登ではなく、やや左右に移動しながらの岩壁登攀だが、今のところ大きな問題は無さそうだ。
しかし、内心彼女がどのように感じるのかは分からない。
ひょっとして自分が考えているより遙かに不安やプレッシャーを感じながら岩肌にしがみついているのかも知れないし・・・。
自分ができることはたかが知れている。
ホールド・スタンスポイントのアドバイス。
そして「全く焦る必要はないから・・・」といい、集中しながらもできるだけリラックスさせてあげることくらだいだろう。
あと数メートルでタテバイの難所区間が終わる。
「片手にくさり、もう片手にボルトでもOKだよ!」
そう、この区間で最も腕力を必要とするのが最後の数メートルだ。
「握力が厳しいと思ったら少し回復するまで動かないでもいいんだよ。」
「は・・・い」
たった一言の返事でさへとぎれがちだった。
(「辛いんだろうなぁ・・・」)
だが、遂に安心して立つことのできるポイントまで到達することができた。
正直言ってホッとした。
これで自分も気持ちが楽に登れる。
ここを登るのはもう何度目になるのだろうか・・・。
その「慣れ」だけは絶対に御法度だ。
分かっているからこそ慎重に登ろう。
KMさんが横にあるスペースから撮ってくれた画像。
AM君が真上から撮影してくれている。
「はい、お待たせ!」
最後にタテバイに立つAMくん。
トップ、そして撮影係お疲れ様でした。
三人がここを登り終えることができたとき、心底嬉しかったし安心することができた。
心の何処かで「何かあったらどうしようか・・・」と、ふと考えてしまっていたからだ。
考えるまい、ポジティブに行こうとはしても、何かのはずみで一瞬そのことが頭を掠めた。
もう少し落ち着けるポイントまで登った。
「やったねKMさん! 凄いよ! 本当に凄いよ! 頑張ったね!」
この言葉は本音だった。
さぁ、てっぺんまでもうほんのひと登りだ。
「ゆっくり。とにかくゆっくり自分のペースでいいから確実なポイントだけを狙って。」
彼を見上げながらそれだけを言った。
基本的なコース取りはクサリやボルトを目安にすればいいだけ。
あとは届く範囲を見極めながら確実なホールドポイントとスタンスポイントを探せばいい。
いい感じでスムーズな登攀だ。
これなら心配ない。
この先、彼の姿は真っ白なガスの中に消えていったが、すぐに声が聞こえた。
「オッケーでーす! 来てくださーい!」
いよいよKMさんが続く。
AM君のコース取りを見ていただけに、スタートは順調だ。
メンタルももう大丈夫だろう。
頂上へ登りたいという強い決意が直前の会話の中から伺えた。
一つだけ気がかりなことがあった。
自分とAM君にとって何でもない距離にあるホールドポイントやボルトが、彼女にとってはやや遠い部分にあるのではないかと言うことだ。
握りたくても届かない(届きにくい)距離にあれば、それだけで体力や筋力の消耗は激しくなる。
彼女がスタートしてすぐは下から写真を撮っていたが、そろそろ自分も後続した方が良いと思った。
すぐ後に続けば、ポイントへのアドバイスができるのだ。
KMさんに落ち着ける場所があるからそこで待機しているよう事前に言っておいた。
よし、自分も登ろう。
ストレートの直登ではなく、やや左右に移動しながらの岩壁登攀だが、今のところ大きな問題は無さそうだ。
しかし、内心彼女がどのように感じるのかは分からない。
ひょっとして自分が考えているより遙かに不安やプレッシャーを感じながら岩肌にしがみついているのかも知れないし・・・。
自分ができることはたかが知れている。
ホールド・スタンスポイントのアドバイス。
そして「全く焦る必要はないから・・・」といい、集中しながらもできるだけリラックスさせてあげることくらだいだろう。
あと数メートルでタテバイの難所区間が終わる。
「片手にくさり、もう片手にボルトでもOKだよ!」
そう、この区間で最も腕力を必要とするのが最後の数メートルだ。
「握力が厳しいと思ったら少し回復するまで動かないでもいいんだよ。」
「は・・・い」
たった一言の返事でさへとぎれがちだった。
(「辛いんだろうなぁ・・・」)
だが、遂に安心して立つことのできるポイントまで到達することができた。
正直言ってホッとした。
これで自分も気持ちが楽に登れる。
ここを登るのはもう何度目になるのだろうか・・・。
その「慣れ」だけは絶対に御法度だ。
分かっているからこそ慎重に登ろう。
KMさんが横にあるスペースから撮ってくれた画像。
AM君が真上から撮影してくれている。
「はい、お待たせ!」
最後にタテバイに立つAMくん。
トップ、そして撮影係お疲れ様でした。
三人がここを登り終えることができたとき、心底嬉しかったし安心することができた。
心の何処かで「何かあったらどうしようか・・・」と、ふと考えてしまっていたからだ。
考えるまい、ポジティブに行こうとはしても、何かのはずみで一瞬そのことが頭を掠めた。
もう少し落ち着けるポイントまで登った。
「やったねKMさん! 凄いよ! 本当に凄いよ! 頑張ったね!」
この言葉は本音だった。
さぁ、てっぺんまでもうほんのひと登りだ。