ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

みんなで劔岳:核心部その3「平蔵のコル」

2017年10月07日 00時06分39秒 | Weblog
距離は短いが、70°~80°程の急な岩場(クサリ場)を登ることになる。
このクサリ場を越えれば一息つくことができるのだが、その先にはタテバイが・・・。

雨は降っても本降りではなく、また長く降り続くこともなかった。
それが幸いし、岩肌やクサリが濡れてしまうこともなかった。
「スリップが怖い」
スタート時からずっと抱き続けてきた不安材料だったが、今のところそれは大丈夫のようだ。
このクサリ場だって距離は短いとはいえ、落ちれば怪我では済まされないポイントであり、一挙手一投足に集中して登攀することが重要だ。
自分が先に登り、スタンスポイントやホールドポイントを「ここね。このポイントを有効に使って登ってね。」と、下にいる二人に伝えた。

KMさんが続く。

体力や技術よりも、彼女のメンタルが心配だった。
手足の動きとは別に彼女の表情を確認しながらアドバイスを送った。


三点支持OK。
クサリの併用OK。
各ポイントの使い方OK。
笑顔・・・。
さすがにこの場では笑顔とはいかないようだったが、登り終えてニコッと笑ってくれ内心ホッとした。


AMくん、問題なし。
いまさらこの程度のクサリ場で自分が「あーだこーだ」と言うまでもないだろう。

クサリ場を登り終え、すぐ目の前には「平蔵谷」の雪渓が直下へとズズーンと落ちているのが見えた。
「○○さん、以前はここを登ってきたんですか?」
「まぁそこそこ天候も良かったし、怪我はあったけどね(笑)」

ちょうど2年前の7月にチャレンジしたバリエーションルートだ。
何本かのシュルンドの雪壁に阻まれ、最後の雪壁を越える時にアイゼンの前爪で怪我を負ってしまったコースだ。
あの時はかなり痛みはあったが、今となってはそれも懐かしい。


平蔵谷雪渓の最上部から雪渓を見下ろしてみた。
(「げっ! こんな急斜度だったっけ? もう一回チャレンジしろと言われてもちょっと悩むかも・・・」)

と言いつつも・・・。
実を言えば、来年の夏の劔岳登攀においては既に予定が立ててある。
時期は7月後半で、劔沢雪渓を下り長治郎谷からチャレンジする。
下山は、ヨコバイを通りこの平蔵谷雪渓を下る。
つまり、全コースの2/3以上が雪渓でありバリエーションルートとなる。
ワクワクするではないか!(笑)

ガスの中とはいえ、ここからでもタテバイがよく見える。
休憩を取りながらコース取りの確認をした。
そして事前に決めていたことがあった。
トップをAM君に任せると言うこと。
初めは不安そうだったが、タテバイのコース状況を詳細に説明したところ「やってみます」という返事をもらった。
無論自分とて闇雲に彼にトップを任せようとは考えてはいなかった。
普通に考えれば自分が先陣を切り、二番手にKMさん、殿(しんがり)にAM君というのが当然だろう。
しかし、今まで何度か彼と一緒に岩稜地帯を縦走したり登攀したりした結果「任せられる」と判断したのだ。
「どう、緊張してる?」
「はい、ちょっとだけ・・・」
はにかみながらの返事だったが、緊張の中にもやる気は十分の様子だ。

KMさんにも確認をした。
「(頂上は)もうすぐですよね。登ります。」
力強い返答だった。


何度もこの場に立ち、見上げてきたカニのタテバイ。
何度も登ってきたこのタテバイだが、ガスの中から見上げるタテバイはやはり不気味だ。
「今日は俺独りじゃないんだ。今までとは違うんだ。」

「責任」を重圧と感じた瞬間だった。

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