通でがんす

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(旧ブログタイトル:通じゃのう)

映画『忍びの者』

2024年02月13日 | まんが・テレビ・映画
「YouTubeの「角川シネマコレクション」では、2月2日から16日までの2週間、映画『忍びの者』(1962年)を無料配信中じゃ」

「前回は、新東宝の映画『忍術児雷也(じらいや)』(1955年)で、どっちも忍者の話」

「児雷也は、口に巻物をくわえて手で印(いん)を結ぶことで、ドロンと蝦蟇(がま)に化けることができたんじゃの」

「荒唐無稽(こうとうむけい)な忍術使いの話じゃったね」

「それが1950年代の終わりから60年代の初めにかけて、忍者の描き方が変わってきた」

「たとえば?」

「たとえば、それまでの忍者は、主君のために尽くす(=命をかけて戦う)ことを良しとしてきた。それが、主君のために尽くすことが、実は空しいこととされたんじゃの」

「なんで?」

「やっぱり太平洋戦争の影響が大きかったんじゃろう。1945年8月15日の敗戦を機に、それまでの価値観が180度変わってしもうたけぇの。もうひとつは、1960年の安保闘争を境に、反体制的な機運が高まったこともあったんじゃろう」

「なるほど」

「あと、ビジュアル面でも変わってきた」

「見た目でなにが変わったん?」

「忍者=黒装束となったのが、この映画からといわれとるんじゃの」

「確かに。うちらが知っとる忍者といえば、黒い衣装を纏(まと)うとるよね」

「それまでの映画、たとえば『忍術児雷也』では忍者の黒装束が出てこないどころか、忍術使いは結構派手な格好をしとっちゃったけぇの」




蝦蟇の上に立つ児雷也(大谷友右衛門)
(映画『忍術児雷也』(1955年)より)




忍者の黒装束を纏う石川五右衛門(市川雷蔵)




↓映画『忍びの者』については、こちら↓

「【本編】『忍びの者』<2週間限定公開>」YouTube





「今日は、映画『忍びの者』についての話でがんす」





「この映画は、どんなストーリーじゃろ?」

「伊賀の国に、ふたつの忍者集団があった。ひとつは百地三太夫(ももち さんだゆう)率いる百地党と、藤林長門守(ふじばやし ながとのかみ)率いる藤林党で、対立関係にあった」





「うんうん、それで?」

「そのころ勢力を伸ばしていたのが織田信長で、百地党・藤林党とも、配下の忍者たちに信長暗殺を命じる」

「この映画は、その忍者たちが主人公の話?」

「この映画の主人公は、あの石川五右衛門」

「五右衛門は盗賊で、豊臣秀吉に捕えられて、釜ゆでにされたんじゃなかったっけ?」

「五右衛門は、百地党に属する伊賀の忍者という設定なんじゃの」

「へぇ」

「いきがかりとはいえ、五右衛門は、三太夫の妻・イノネとの密通してしまう。それがバレたとき、イノネは井戸に落ちて死んでしまい、五右衛門は逃亡を図る。しかし、三太夫は五右衛門の命を助けられるかわりに、盗みを働くことを命じる」

「忍者が盗みを働いちゃいけんじゃろ」

「それが成功すると、次に信長の暗殺を命じた。イノネと密通する状況を作り、五右衛門が断れないところで信長の暗殺を命じたのは、実は三太夫の策略だったのだ」

「うーん、お主も悪よのう」

「信長を追って堺にやって来た五右衛門は、マキという遊女と知り合う。マキに惹かれた五右衛門は、彼女を身請けしたうえで、山奥にある一軒家で平穏な日々を送ろうとする」

「そんなこと、もちろん見逃してもらえるわけもないよね」

「マキを人質にとった三太夫は、五右衛門に改めて信長暗殺を命じる。安土城の完成祝いに乗じて毒殺しようとするも、失敗。これを伊賀の手によるものと考えた信長は、伊賀攻めを行う」

「信長は伊賀を攻めたんじゃね」

「その戦いの中で五右衛門は、藤林長門守に変装した姿で死んでいる三太夫を見つける。ふたつの忍者集団の頭領(かしら)だった三太夫と長門守が、実は同一人物だったのだ!」





「以下、余談」




百地三太夫




藤林長門守



「三太夫と長門守の二役を演じたのが、怪異な人物を演じさせると右に出るものがないといわれた、伊藤雄之助(いとう ゆうのすけ)」

「いかにも悪そうな顔しとるね」

「三太夫(=長門守)は自分の権威を高めるために、それぞれの忍者集団に信長暗殺を命じて、互いを争わせていたんじゃの」





「以下、さらに余談」




「信長を演じたのが、城健三朗(じょう けんざぶろう)」

「城健三朗? この顔は若山富三郎(わかやま とみさぶろう)じゃないん?」

「若山富三郎は、経営不振の新東宝から東映へ、そして弟の勝新太郎(かつ しんたろう)のいる大映へ移籍した。大映時代は、若山富三郎ではなく城健三朗と名乗っていたんじゃの」





【参考文献】

春日太一「忍者の変遷」『時代劇入門』角川新書 2020年 260~271ページ






「今日は、映画『忍びの者』について話をさせてもろうたでがんす」

「ほいじゃあ、またの」



(文中、敬称略)

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