2010.8.6(金)快晴
難解地名”ユリ”について最も一般的に語られているのは、柳田国男氏の説である。著書「地名の研究」の冒頭部分、地名の話の中に次のように書かれている。
水の動揺によって平らげられた岸の平地を由良とか由利とかいっている。すなわちユラグ・ユルなどという言葉が転じたのである。
”ユリ”の地名については、アイヌ地名説を除いてこの説がすべてで、他の説を見たことはない。私の”ユリ”=”揺り、淘り、汰り”説(2010.4.27)も淘汰のもとはユラグ、ユルという言葉だろうから、実は同じことをいっているのだろう。ただ、”ユリ”地名を調べていて、疑問に感じるところがいくつか出てきた。
海岸に見られる由良は別として、”ゆり”といえどもいくつかの形態の地勢があり、同一でないことだ。綾部周辺の”ユリ”で見る限り3っつぐらいに分かれると思う。
(1)山間の谷沿いに開けた地形(於与岐町ユリ、七百石町由里など)
(2)大きな川の片岸に開けた地形(里町岼、小貝町岼など)
(3)山間の狭道(老富町遊里の上、遊里ノ下など)
これらが別々のものか、ひょっとしたら根は一緒のものかもしれない。
七百石町由里、ユリらしい地形だ。
以上の他、遊里のこと(3)(2010.4.17)で述べたように、尾根上のへつり道のように上り下りを無くした緩やかな道をユリ道という。これは綾部の地名に例を見つけていないのだが、子供の時から普通名詞として使われていたのを憶えている。北山の二ノ瀬ユリはMTBで下ったことがあるが、将にそのような道であった。
今ひとつの疑問は、”ユリ”地名が全国版でないこと。もう少し調べてみないと解らないことだが、どうも丹波地方に偏っているようだ。もし、柳田氏の説であるならば全国的に拡がっていても良いのではないか。なお全国方言辞典(東條操編)では、ゆり、山の狭道 丹波(丹波通辞)とある。山の狭道なら水の動揺によって平らげられた云々というのは該当しないし、ユリが山の狭道だけを意味していないのも疑問が拡がる原因である。
簡単に結論が出るだろうと高を括っていた”ユリ”地名がここまで混沌とするとは思わなかった。引地同様相当な調査と考察が要求されそうだ。当面近隣の”ユリ”を見て歩くこと、京都府における”ユリ”地名をリストアップすること、全国の”ユリ”地名を探すことをやってみたい。つづく(遊里のこと(11)は2010.8.4)
今日のじょん:じょんはアレルギー体質なのか、神経質なのか、とにかくカイカイばかりしている。毎日2回ブラッシングし、毛抜けのシーズンにはファーミネーターしているのだが、やっぱり痒いみたい。蚊やブヨが多いのも影響しそうだと、薫製になるほど蚊取り線香を焚いている。ぽんぽこぽんの最中でもカイカイが最優先。